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【第1章:起動(ブートアップ)】
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『次、教室移動ー』という声が教室では飛び交う。
1限ほど遅刻をして教室にたどり着いた加那は、窓際の最後尾で校庭を見ていた。
新学期からまだ数日だ。
校庭の端々に植えてある桜は散り、葉がキレイな緑色をしている。風も穏やかだ。
休み時間だった。
「おっはよー、加那!」
背後から飛びついてきた澤井梨里という名の「陽キャ・プラグイン」に、加那は完璧な偽装笑顔を返す。
彼女たち女子高生が可愛いのは本当だ。憂いがなく、元気で、弾けている。
一人ひとりを見ていけば自分のように、嫌々笑顔を作っている者もいるのかもしれない。
けれど、集団でいれば女子高生は可愛い。
そして自分もその中の一人なのだ。
「はよー。てかうっざ、そのテンションうっざー」
加那は笑いながら、クラスで一番仲の良い澤井梨里へ振り返る。
酷い、と笑って梨里は前に回ってくる。長いストレートの茶髪がサラリと梨里の肩から落ちた。
「朝からなんか、大変だったんだって? せっかくのハピバなのに」
誕生日おめでとー、と小さな包みを渡される。
「皆からね、お揃いのヘアピン」
皆? とクラスを振り返ると教室移動の準備をしていた数人の女子が、ピースサインを送ってくる。口々におめでとー、と叫んでくる。
「ありがとー」
そちらへピースを返して、梨里にも殊勝にペコリと頭を下げる演技をする。
「梨里も、ありがとー」
「いいってー」
へへっと梨里は照れた表情をする。梨里は素直で本当に可愛かった。
だからこうして、少し皆と距離を保つ加那とも仲良くできる。
「移動教室、行こ! 次化学だって」
腕を引かれて立ち上がる。
学校はつまらない。つまらないが、時間は潰せる。時間つぶしの相手も授業もある。
あの家に比べたら、十分ありがたかった。
「分かったって」
教室移動の最中、加那のポケットでスマホが不自然な熱を帯びた。
(何だろ……?)
ディスプレイを開くと、身に覚えのない漆黒のアイコンが増えていた。
【 居衣 -Ie- 】
漢字で構成されたそのアプリは、起動しても真っ白なローディング画面のままで、カーソルが点滅しているだけだった。
「変なマルウェア……」
加那はそれを無視し、移動先の教室へと向かった。
1限ほど遅刻をして教室にたどり着いた加那は、窓際の最後尾で校庭を見ていた。
新学期からまだ数日だ。
校庭の端々に植えてある桜は散り、葉がキレイな緑色をしている。風も穏やかだ。
休み時間だった。
「おっはよー、加那!」
背後から飛びついてきた澤井梨里という名の「陽キャ・プラグイン」に、加那は完璧な偽装笑顔を返す。
彼女たち女子高生が可愛いのは本当だ。憂いがなく、元気で、弾けている。
一人ひとりを見ていけば自分のように、嫌々笑顔を作っている者もいるのかもしれない。
けれど、集団でいれば女子高生は可愛い。
そして自分もその中の一人なのだ。
「はよー。てかうっざ、そのテンションうっざー」
加那は笑いながら、クラスで一番仲の良い澤井梨里へ振り返る。
酷い、と笑って梨里は前に回ってくる。長いストレートの茶髪がサラリと梨里の肩から落ちた。
「朝からなんか、大変だったんだって? せっかくのハピバなのに」
誕生日おめでとー、と小さな包みを渡される。
「皆からね、お揃いのヘアピン」
皆? とクラスを振り返ると教室移動の準備をしていた数人の女子が、ピースサインを送ってくる。口々におめでとー、と叫んでくる。
「ありがとー」
そちらへピースを返して、梨里にも殊勝にペコリと頭を下げる演技をする。
「梨里も、ありがとー」
「いいってー」
へへっと梨里は照れた表情をする。梨里は素直で本当に可愛かった。
だからこうして、少し皆と距離を保つ加那とも仲良くできる。
「移動教室、行こ! 次化学だって」
腕を引かれて立ち上がる。
学校はつまらない。つまらないが、時間は潰せる。時間つぶしの相手も授業もある。
あの家に比べたら、十分ありがたかった。
「分かったって」
教室移動の最中、加那のポケットでスマホが不自然な熱を帯びた。
(何だろ……?)
ディスプレイを開くと、身に覚えのない漆黒のアイコンが増えていた。
【 居衣 -Ie- 】
漢字で構成されたそのアプリは、起動しても真っ白なローディング画面のままで、カーソルが点滅しているだけだった。
「変なマルウェア……」
加那はそれを無視し、移動先の教室へと向かった。
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