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懇願
翌朝、シルヴィアは宰相を呼んだ。
「私を、離宮へ下げてくださいませ」
突然の申し出に宰相は目を見開いた。
「王妃陛下、それは……」
「病気療養という形で構いません。公務は私も離宮で手伝います。数ヶ月もすれば側妃様のご出産を迎えられ、王宮の関心はそちらへ向くはずですから、今なら混乱は最小限で済むかと」
「しかし、陛下がお許しになりません」
「陛下には、私から申し上げます」
宰相はしばらく沈黙した。
長年政治を牛耳ってきた年寄りの目に、わずかな哀れみが浮かんだ。
「王妃陛下は、それでよろしいのですか」
また、その問い。
よいはずがない。
けれどシルヴィアは、静かに微笑んだ。
「よいかどうかではありません。いま、この城に私は必要ないかと」
また、“必要”
結局、自分は最後までそれしか言えないのかもしれない。
けれど今度だけは、少し違った。
これは国のためだけではない。
自分の心を、これ以上壊さないためでもあった。
レオンハルトに告げたのは、その日の夕刻だった。
彼は執務室で報告書を読んでいた。
シルヴィアが入ると、すぐに顔を上げ、立ち上がった。
「体はもういいのか」
「はい。ご心配をおかけしました」
「心配などという言葉で済むと思っているのか」
彼は、怒っているようで、傷ついているようでもあり、複雑な顔をしていた。
「君は倒れるまで働いて、それでも平気な顔をする。私はいつも、君の一番近くにいるはずなのに、君がどれほど苦しんでいるかも知らなかった」
「陛下はお忙しい身です」
「また“陛下”か」
レオンハルトの声が低くなる。
「なぜ私をそのように遠ざける」
ーー言わなければ。
彼を傷つけることになっても。
シルヴィアは深く息を吸った。
「離宮へ下がりたいと思っております」
時が止まったようだった。
レオンハルトは、しばらく意味を理解できないという顔をした。
「……何を言っている」
「療養の名目で構いません。王宮に私がいることで、かえって皆が気を遣います。側妃様も、陛下も」
「私も?」
「はい」
「君は、私が君を邪魔に思っていると?」
「そうではありません」
「では、なぜ」
なぜ。
あまりにも簡単なのに、今まで絶対に言えなかった答え。
シルヴィアは窓の外を見た。
雪が積もっている。
白い。
白薔薇のように。
あの日の私は、確かに幸せだった。
「…私は、陛下が側妃様に笑いかけるところを見るのが……つらいのです」
レオンハルトの息が止まった。
シルヴィアは続けた。
「側妃様が悪いのではありません。陛下が悪いのでもありません。ただ、私が弱いだけです」
「シルヴィア、なにを」
シルヴィアは笑おうとして、うまくいかなかった。
「私はずっと、自分は王妃だから大丈夫だと思っていました。王妃だから耐えられる。王妃だから受け入れられる。王妃だから、陛下のお心が少しずつ別の方へ向かっても、祝福できるのだと」
声が震えた。あと、少し。
「でも、できませんでした」
レオンハルトが一歩近づく。
「シルヴィア」
「私は、あなたが好きです」
ようやく、言った。
七年間、胸の奥で形を変え続けていた言葉。
「王太子だったあなたも、王になったあなたも、側妃様に惹かれているあなたも、それでも好きなのです。だから、近くで見ているのが苦しい」
涙がこぼれた。
王妃として、人前で泣いたことなど一度もなかった。けれど、一度涙がこぼれてしまえば、もう止められなかった。
「私は醜くなりたくありません。王妃として毅然としていたい。あなたを恨みたくない。側妃様を憎みたくない。生まれてくる子を呪いたくない」
「それで、私の前から消えるというのか」
レオンハルトの声も震えていた。
「私を残して?」
「陛下には、側妃様がいます」
「違う!」
彼が叫んだ。
「ミリアは大切だ。あの明るさに救われたこともある。それは認める。だが、私が生涯を共にすると誓ったのは君だ」
「でも、あなたはあの人に惹かれていた!」
シルヴィアの声が悲鳴に違い。
ここまで声を荒げる姿を、初めてみた。
レオンハルトは苦しげに目を閉じた。
そして…
「……ああ」
その一言で、シルヴィアの胸は砕けた。
分かっていた。
ずっとあなたを見ていたのだもの。
分かっていたけれど、本人の口から聞くと、こんなにも辛い。
「だが、それは君を愛していないという意味ではない」
「私には、違いが分かりません」
「シルヴィア」
「私は、あなたの一番でいたかった」
溢れるように吐き出した言葉は、子どものような言葉だった。
王妃にあるまじき、狭量で、幼い願い。
けれどそれが本心だった。
「国のために側妃を迎えるよう言ったのは私です。あなたが拒むのを押し切ったのも私です。だから、こんなことを言う資格がないことくらいわかっています。それでも、私は、あなたに見つめられる女性が私だけであってほしかった。私は最低な女です」
レオンハルトは顔を歪めた。
「資格など要らない。それならなぜ最初からそう言ってくれなかった」
「言えば、あなたを困らせるから」
「困らせてくれればよかった!」
彼はシルヴィアの手を掴んだ。
熱い手だった。昔から変わらない。
「君が泣くなら、私は迷えた。君が怒るなら、私は止まれた。君が嫌だと言うなら、私は国と戦えた」
「王が国と戦ってはいけません」
「妻一人守れずに、何が王だ」
レオンハルトのその言葉に、シルヴィアは泣きそうに笑った。
「あなたは、昔からそういう方でしたね」
「君は、昔から私を正しい場所に戻す人だった」
レオンハルトは彼女の手を額に当てた。
「だが、正しさのために君が壊れるくらいなら、正しさなんてなくてもいい」
シルヴィアは首を振った。
「もう遅いのです」
「遅くない」
「側妃様のお腹には、あなたの子がいます」
その瞬間、レオンハルトの手が止まった。
そう、もう、二人だけの問題ではなかった。
ミリアがいる。生まれてくる子がいる。国がある。
愛だけでは、ほどけない結び目ができてしまった。
だから、シルヴィアはそっと手を引いた。
「だから私は、離宮へ参ります」
「許さない」
「陛下」
「王としても、夫としても、許さない」
「ならば、王妃として願います」
シルヴィアは膝を折った。
その姿を見て、レオンハルトが息を呑む。
「やめてくれ」
「どうか、私に少しだけ時間をください」
「シルヴィア、どうか」
「このままここにいれば、私はきっと、あなたを恨みます」
レオンハルトの表情が凍りつく。
「ミリア様を憎みます。生まれてくるお子さえも」
シルヴィアの声はかすかに震えていた。
「そんな自分を、私は許せません」
一歩、彼から距離を取る。
「あなたを愛しているからこそ、そうなりたくないのです」
レオンハルトは何も言えなかった。
シルヴィアは続けた。
「私だって、あなたの隣で笑っていたい」
「ならば、ここにいればいい」
「できません」
きっぱりと、言った。
「今の私は、笑えません」
沈黙が落ちた。
暖炉の火が、静かに揺れている。
しばらくして、
「……戻ってきてくれるのか」
レオンハルトの声は、先ほどまでの強さを失っていた。
シルヴィアは少しだけ考えた。
そして、正直に言った。
「分かりません」
その答えに、彼は目を閉じた。
「ですが、願っています。あなたを、もう一度、心から愛せる自分で戻りたいと」
レオンハルトはゆっくりと目を開いた。
その瞳には、初めて諦め以外の色が灯った。
「……ならば」
彼は深く息を吐いた。
「期限を決めてくれ」
「期限、ですか」
「ああ」
レオンハルトは彼女をまっすぐ見た。
「君が戻ると決めるまで、私は待つ」
「陛下……」
「だが、いつまでもとは言えない。王として、決断を迫られる時が必ず来る」
それが現実だった。王妃の不在が長引けば、政務にも影響が出る。
当然、周囲も動く。
「一年だ」
レオンハルトが言った。
「一年は待てる。その間に答えを出してくれ」
シルヴィアはその言葉を静かに受け止めた。
「……分かりました」
彼女は頷いた。
「一年後、必ずお答えします」
レオンハルトは一歩近づいた。
手を伸ばしかけて、止めた。
その仕草が、かえって痛々しかった。
「シルヴィア」
「はい」
「私は、君を愛している」
シルヴィアはゆっくりと目を閉じた。
「……ありがとうございます」
それがシルヴィアの精一杯だった。
それ以上受け取れば、きっと動けなくなる。
「どうか、今は側妃のおそばに」
最後にそう言って、彼女は一礼した。
レオンハルトは引き止めなかった。
ただ、立ち尽くしていた。
その姿を見ないようにして、シルヴィアは部屋を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
コメントについて
初めまして、作者の羽生と申します。
初めての投稿にもかかわらず、本作を読んでくださり、本当にありがとうございます。
温かい感想やコメントをひとつひとつ大切に拝読しております。「つらい……!」というお声まで含め、とても励みになっています。
つい嬉しくて、お一人ずつお返事をさせていただいていたのですが、想像以上にたくさんの反応をいただき、現在はコメント返信が追いつかない状況になってしまいました。
そのため、しばらくは個別返信を控え、承認のみとさせていただければ幸いです。申し訳ありません。
ですが、いただいたコメントはすべてありがたく読ませていただいております。
この物語の結末が、皆様にとって満足いただけるものになるか分かりませんが、自分なりに最後まで三人と向き合っていきたいと思います。
引き続き、見守っていただけましたら嬉しいです。
「私を、離宮へ下げてくださいませ」
突然の申し出に宰相は目を見開いた。
「王妃陛下、それは……」
「病気療養という形で構いません。公務は私も離宮で手伝います。数ヶ月もすれば側妃様のご出産を迎えられ、王宮の関心はそちらへ向くはずですから、今なら混乱は最小限で済むかと」
「しかし、陛下がお許しになりません」
「陛下には、私から申し上げます」
宰相はしばらく沈黙した。
長年政治を牛耳ってきた年寄りの目に、わずかな哀れみが浮かんだ。
「王妃陛下は、それでよろしいのですか」
また、その問い。
よいはずがない。
けれどシルヴィアは、静かに微笑んだ。
「よいかどうかではありません。いま、この城に私は必要ないかと」
また、“必要”
結局、自分は最後までそれしか言えないのかもしれない。
けれど今度だけは、少し違った。
これは国のためだけではない。
自分の心を、これ以上壊さないためでもあった。
レオンハルトに告げたのは、その日の夕刻だった。
彼は執務室で報告書を読んでいた。
シルヴィアが入ると、すぐに顔を上げ、立ち上がった。
「体はもういいのか」
「はい。ご心配をおかけしました」
「心配などという言葉で済むと思っているのか」
彼は、怒っているようで、傷ついているようでもあり、複雑な顔をしていた。
「君は倒れるまで働いて、それでも平気な顔をする。私はいつも、君の一番近くにいるはずなのに、君がどれほど苦しんでいるかも知らなかった」
「陛下はお忙しい身です」
「また“陛下”か」
レオンハルトの声が低くなる。
「なぜ私をそのように遠ざける」
ーー言わなければ。
彼を傷つけることになっても。
シルヴィアは深く息を吸った。
「離宮へ下がりたいと思っております」
時が止まったようだった。
レオンハルトは、しばらく意味を理解できないという顔をした。
「……何を言っている」
「療養の名目で構いません。王宮に私がいることで、かえって皆が気を遣います。側妃様も、陛下も」
「私も?」
「はい」
「君は、私が君を邪魔に思っていると?」
「そうではありません」
「では、なぜ」
なぜ。
あまりにも簡単なのに、今まで絶対に言えなかった答え。
シルヴィアは窓の外を見た。
雪が積もっている。
白い。
白薔薇のように。
あの日の私は、確かに幸せだった。
「…私は、陛下が側妃様に笑いかけるところを見るのが……つらいのです」
レオンハルトの息が止まった。
シルヴィアは続けた。
「側妃様が悪いのではありません。陛下が悪いのでもありません。ただ、私が弱いだけです」
「シルヴィア、なにを」
シルヴィアは笑おうとして、うまくいかなかった。
「私はずっと、自分は王妃だから大丈夫だと思っていました。王妃だから耐えられる。王妃だから受け入れられる。王妃だから、陛下のお心が少しずつ別の方へ向かっても、祝福できるのだと」
声が震えた。あと、少し。
「でも、できませんでした」
レオンハルトが一歩近づく。
「シルヴィア」
「私は、あなたが好きです」
ようやく、言った。
七年間、胸の奥で形を変え続けていた言葉。
「王太子だったあなたも、王になったあなたも、側妃様に惹かれているあなたも、それでも好きなのです。だから、近くで見ているのが苦しい」
涙がこぼれた。
王妃として、人前で泣いたことなど一度もなかった。けれど、一度涙がこぼれてしまえば、もう止められなかった。
「私は醜くなりたくありません。王妃として毅然としていたい。あなたを恨みたくない。側妃様を憎みたくない。生まれてくる子を呪いたくない」
「それで、私の前から消えるというのか」
レオンハルトの声も震えていた。
「私を残して?」
「陛下には、側妃様がいます」
「違う!」
彼が叫んだ。
「ミリアは大切だ。あの明るさに救われたこともある。それは認める。だが、私が生涯を共にすると誓ったのは君だ」
「でも、あなたはあの人に惹かれていた!」
シルヴィアの声が悲鳴に違い。
ここまで声を荒げる姿を、初めてみた。
レオンハルトは苦しげに目を閉じた。
そして…
「……ああ」
その一言で、シルヴィアの胸は砕けた。
分かっていた。
ずっとあなたを見ていたのだもの。
分かっていたけれど、本人の口から聞くと、こんなにも辛い。
「だが、それは君を愛していないという意味ではない」
「私には、違いが分かりません」
「シルヴィア」
「私は、あなたの一番でいたかった」
溢れるように吐き出した言葉は、子どものような言葉だった。
王妃にあるまじき、狭量で、幼い願い。
けれどそれが本心だった。
「国のために側妃を迎えるよう言ったのは私です。あなたが拒むのを押し切ったのも私です。だから、こんなことを言う資格がないことくらいわかっています。それでも、私は、あなたに見つめられる女性が私だけであってほしかった。私は最低な女です」
レオンハルトは顔を歪めた。
「資格など要らない。それならなぜ最初からそう言ってくれなかった」
「言えば、あなたを困らせるから」
「困らせてくれればよかった!」
彼はシルヴィアの手を掴んだ。
熱い手だった。昔から変わらない。
「君が泣くなら、私は迷えた。君が怒るなら、私は止まれた。君が嫌だと言うなら、私は国と戦えた」
「王が国と戦ってはいけません」
「妻一人守れずに、何が王だ」
レオンハルトのその言葉に、シルヴィアは泣きそうに笑った。
「あなたは、昔からそういう方でしたね」
「君は、昔から私を正しい場所に戻す人だった」
レオンハルトは彼女の手を額に当てた。
「だが、正しさのために君が壊れるくらいなら、正しさなんてなくてもいい」
シルヴィアは首を振った。
「もう遅いのです」
「遅くない」
「側妃様のお腹には、あなたの子がいます」
その瞬間、レオンハルトの手が止まった。
そう、もう、二人だけの問題ではなかった。
ミリアがいる。生まれてくる子がいる。国がある。
愛だけでは、ほどけない結び目ができてしまった。
だから、シルヴィアはそっと手を引いた。
「だから私は、離宮へ参ります」
「許さない」
「陛下」
「王としても、夫としても、許さない」
「ならば、王妃として願います」
シルヴィアは膝を折った。
その姿を見て、レオンハルトが息を呑む。
「やめてくれ」
「どうか、私に少しだけ時間をください」
「シルヴィア、どうか」
「このままここにいれば、私はきっと、あなたを恨みます」
レオンハルトの表情が凍りつく。
「ミリア様を憎みます。生まれてくるお子さえも」
シルヴィアの声はかすかに震えていた。
「そんな自分を、私は許せません」
一歩、彼から距離を取る。
「あなたを愛しているからこそ、そうなりたくないのです」
レオンハルトは何も言えなかった。
シルヴィアは続けた。
「私だって、あなたの隣で笑っていたい」
「ならば、ここにいればいい」
「できません」
きっぱりと、言った。
「今の私は、笑えません」
沈黙が落ちた。
暖炉の火が、静かに揺れている。
しばらくして、
「……戻ってきてくれるのか」
レオンハルトの声は、先ほどまでの強さを失っていた。
シルヴィアは少しだけ考えた。
そして、正直に言った。
「分かりません」
その答えに、彼は目を閉じた。
「ですが、願っています。あなたを、もう一度、心から愛せる自分で戻りたいと」
レオンハルトはゆっくりと目を開いた。
その瞳には、初めて諦め以外の色が灯った。
「……ならば」
彼は深く息を吐いた。
「期限を決めてくれ」
「期限、ですか」
「ああ」
レオンハルトは彼女をまっすぐ見た。
「君が戻ると決めるまで、私は待つ」
「陛下……」
「だが、いつまでもとは言えない。王として、決断を迫られる時が必ず来る」
それが現実だった。王妃の不在が長引けば、政務にも影響が出る。
当然、周囲も動く。
「一年だ」
レオンハルトが言った。
「一年は待てる。その間に答えを出してくれ」
シルヴィアはその言葉を静かに受け止めた。
「……分かりました」
彼女は頷いた。
「一年後、必ずお答えします」
レオンハルトは一歩近づいた。
手を伸ばしかけて、止めた。
その仕草が、かえって痛々しかった。
「シルヴィア」
「はい」
「私は、君を愛している」
シルヴィアはゆっくりと目を閉じた。
「……ありがとうございます」
それがシルヴィアの精一杯だった。
それ以上受け取れば、きっと動けなくなる。
「どうか、今は側妃のおそばに」
最後にそう言って、彼女は一礼した。
レオンハルトは引き止めなかった。
ただ、立ち尽くしていた。
その姿を見ないようにして、シルヴィアは部屋を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
コメントについて
初めまして、作者の羽生と申します。
初めての投稿にもかかわらず、本作を読んでくださり、本当にありがとうございます。
温かい感想やコメントをひとつひとつ大切に拝読しております。「つらい……!」というお声まで含め、とても励みになっています。
つい嬉しくて、お一人ずつお返事をさせていただいていたのですが、想像以上にたくさんの反応をいただき、現在はコメント返信が追いつかない状況になってしまいました。
そのため、しばらくは個別返信を控え、承認のみとさせていただければ幸いです。申し訳ありません。
ですが、いただいたコメントはすべてありがたく読ませていただいております。
この物語の結末が、皆様にとって満足いただけるものになるか分かりませんが、自分なりに最後まで三人と向き合っていきたいと思います。
引き続き、見守っていただけましたら嬉しいです。
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