【 化学型錬金術師の異世界放浪記 】

杏忍 東風

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プロローグ③

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 実験室に用意した装置の調整調整が終わったのか、ノブは俺に怪しく妖艶に微笑みかけながら、俺に向かってこう言った。
「さあ、準備出来たよ?早くそのジャケット、脱いでよ?」
 その時、俺はそんなに嫌そうな顔をしていたのだろうか、ノブの瞳は悲しそうな表情を俺に向けた。
「そんなに嫌?本当に無理だったら、今ならやめてもいいんだよ」
と、優しくにこやかに言うノブの目はいつものように笑ってはいなかった。
 いつもは丸縁のメガネをかけているからか、怒ったりしていても、その瞳は幼く見えていた。
 だが今は、いつも真剣な眼差しの中の奥にある姿がオモテに出てきているかのように、俺にその視線が向けられていて、少し怖いくらいだった。
 今から、始めるのかという緊張感がそうさせただけだと言って、ノブが不貞腐れる前に、俺はジャケットを研究室のテーブルの上に置いた。
「じゃあ、始めようか」
そう俺はノブにった後に、俺の手を強く引っ張るノブの手は、少し汗ばんでいるようにも感じられ、強く握りしめると壊してしまいそうな小さな手であった。
 そして、俺は今、緊張しているのは俺だけではないことに安心した。
 研究者なんて生き物はそれほど強い生き物ではない。ましてや、めったにスポーツなんかしないノブはどちらかと言うと、女性のような華奢なスタイルだ。肩幅が大きな自分とは対象的であり、時々、女のコのような仕草をノブがしているかのように見えることもある。俺はそんな相棒とずっと一緒に、色々な研究をしてきた。それはときに妖しく、危なっかしいモノもあった。もちろん俺自身は大学生らしい研究であって、そんな後ろめたいような研究をすることはなかったのだけれど。
 研究室内に作られた2畳分の部屋のようなボックスの扉を開けた。
 俺は段々と緊張してきたのが、ノブに悟られないように必死だった。
 そして、楽しそうなノブの顔を見ていると、この後どうなっても構わないという気分になってきた。
 もちろん、いくら相手が長年の連れだとしても、本当にどうなっても良いと思っていたわけではない。
 大学生することなんて、そんなたいしたことではないとその時、たかをくくっていたのが間違いだったのかもしれない。俺があの時、断っておけば、良かったのかもしれないと後悔が襲うことが何度かある。
 信用とは時に、人間の理性を可怪しくしてしまう。そして、それは相手を信用していればしているほど、おかしなものとなり、取り返しのつかない過ちを犯してしまうことになる。
 仲が良かった。それだけで、もう二度と解決の糸口が見えない迷路に迷い込み、身動きが取れない状況へと自分自身の中で変化していく。
 ひとつのきっかけでしかなかった出来事が今では、もうあとには戻れないモノに変化し、もう一度やり直すには生まれ変わるしか方法がないという状態まで変化する。
 そして、もう一度生まれ変わった時には、もうあの時と同じにはなれないのだと、時間という概念の中で生きるのは人間だけではないことを悟る。
 それは化学であり、すべてが産まれることの始まりがその現実に拘束され、交わった後に産まれたものが全く別のものであるという結果を導き出すことが、化学の研究者の研究材料でしかないことに気付かされる。
 2畳のボックスの密室で二人っきりで何をするのかと思えば、再度、ノブは俺の身体に装着した器具を少しずついじり始めた。
 その時間が俺には少し憂鬱に思えた。なんとも言えない緊張感と羞恥心が、頭の中で駆け巡る。
 他人に見られてはいけない。そんなありもしない感覚に囚われ、今にも逃げ出しそうになった。
「まだなのか」
俺がそう言うと、ノブは少し恥ずかしそうな表情をしてこう言った。
「うん。まだ・・・あれ?なんでだろう?うまくいかない」
 ノブの表情が少しずつ変わっていった。焦りを覚えたように、息が少し荒くなる。不安げな表情が、こちらの心理状態に変化をもたらしていることに気づいているのだろうか。
 俺は少しづつ苛立イラちをつのらせていた。
 ノブはひとつため息を付き、
「もう大丈夫だと思うから、心配しないで」
 俺はその言葉を鵜呑みにしなければよかった。
 ノブはそう言って、箱の外にひとりで出ていった。
 そして、ノブが扉を占める際にぎこちない音が聴こえたのが気になった。
 ちなみにノブの研究の本分は生体化学であり、俺はいつもモルモット役でしかなかった。医療系などに用いられるなど例えば、化学療法かがくりょうほう、英語で、 chemotherapyと言われ、化学物質の選択毒性を利用して疾患の原因となっている微生物やウイルスの増殖を阻害し、さらには体内から駆逐することを目的とする医学的な治療法などで使われることが主である。単に化学療法といった場合は、抗がん剤治療、つまりがん化学療法を指す場合が多い理由として、他の治療法、例えば外科手術、放射線療法と対比する場合に使われる。
 俺自身は健康体なのだが、研究対象として、ノブに体を預けるのは初めてのことじゃない。
「ところで今回はなんの研究なんだ?」
そうノブに言うと、満面な笑みを浮かべ、
「インターネットのマイクロウェーブ波が人体に及ぼす影響を化学治療に変換し、分子にエネルギーを与え、分子を振動・回転させて再生を活発化させ、いわゆるマイクロ波加熱に近い状況にならないように、消費電力を調整して発熱体を熱して発生する赤外線とマイクロ波は性質と波長が異なるから、赤外線で加熱しない程度に放射し、体内の細胞の活発化を促進させる器具の研究だよ」
 俺は一瞬、言っている意味がわからなかった。
 だが、俺がその意味に気づいたときには、ノブの手でスイッチが入れられたあとだった。
 
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