〘完〙婚約破棄してメイドになった愛され子爵令嬢が、溺愛される・・・まで

hanakuro

文字の大きさ
5 / 21

Scene5 応援します!だから婚約破棄してください!

しおりを挟む
そして数日後、王都に戻ってきたシャーロットは、両親と共にコーネリアス伯爵家を訪れていた。もちろん婚約破棄の話し合いをするためだ。兄のギルバートも行くと意気込んでいたが、なんとか宥めつかせ留守番させた。別に喧嘩をしに行くわけではないのだ。

応接間に通されたシャーロットたちがソファーに座って待っていると、しばらくしてルーカスと彼の両親が入ってきた。エルウィンは手紙で婚約破棄をしたい旨を伝えていたが、理由まで書かなかった為、伯爵たちは不機嫌そうだ。まさか息子の浮気が原因だとは、欠片も思っていないのだろう。青ざめた顔で入ってきたルーカスはシャーロットを見ると、明らかにハッとした表情をする。

そしてエルウィンが、挨拶もそこそこに口火を切る。それは、はっきりとした声で単刀直入だった。

「手紙でもお知らせしたとおり、娘とルーカス殿の婚約を破棄します」

「正気ですかな?息子にその意志はないようですが・・」

「それはおかしいですね。どうやらご子息には、娘ではなく他に情を交わす女性がいるようですが・・・」

「そんなことはないと、息子は否定しました。ですから婚約破・・」

コーネリアス伯爵の言葉を遮り「では娘が嘘を言っていると?」と、一段低い声で尋ねたエルウィン。その声に部屋に流れる空気がピリついた。シャーロットは肌に伝わる感覚で、両隣に座る両親の纏う空気が変わったことに気付く。

(お父様もお母様も怒ってる・・?今日は言い争うために来たのではなく、ただ婚約破棄の書類にサインを貰えばいいだけなのに・・・)

ここでシャーロットが、「お父様、私からよろしいでしょうか?」と割って入った。

「ルーカス様・・私はバーガンディ男爵家のシーラ様とお二人が・・その・・・離れがたいほど抱きしめ合っているところを見ました。ルーカス様のあんな表情、私は見たことありません」

「まぁっ!」

驚いたように声を上げたのは、彼の母親の伯爵夫人だ。一方の伯爵は、シャーロットへ向ける真っ直ぐな視線をそらさない。

「私はそんなお二人がとてもお似合いだと心の底から思いました。そしてお互いに心を寄せていると理解しました。ですから、今後の人生はお互いに一生添い遂げたい相手を選びましょう。ルーカス様、お二人は本当にお似合いです。ですから、私は全力で応援させていだきますね。
それと私、メイドとして城に住むことになりました。セリウス殿下から直々にお誘いを受けましたので、これからはメイドの仕事にこの身を捧げるつもりです。ですからご心配なく・・ルーカス様はシーラ様のことだけをお考えください」

シャーロットは、彼を責めるつもりはなかった。ただ事実を伝え、こちらの申し出に頷き、書類にサインさえしてくれればいいのだ。一度きりの人生。魅力的な女性が現れ、心変わりしたのなら、本当に好きな人と人生を歩んだ方がいい。そんな考えは、政略結婚が当たり前の貴族たちには理解できないかもしれないが、それが彼女の本心だ。

シャーロットの話に伯爵夫妻の顔色が一気に変わった。シャーロットの方を見て、必死の形相を浮かべている。

(まあ!お二人ともお顔の色が・・)

シャーロットは、何かおかしなことを言っただろうか?不思議そうに首を傾げた。

(説明が足りなかったかしら?)

そう思ったシャーロットがさらに口を開く。

「ルーカス様にお心あたりがないようなので、もう少し詳しい状況を説明させていただきますね。私がここでルーカス様とお会いするはずだったあの日、風邪で訪問をキャンセルしましたが、実はこちらのお屋敷まで伺っていたんですよ。時間には早かったので、お庭を散策させていただいておりましたの。
そこでお二人を見かけたんです。ルーカス様はシーラ様のお口とお胸に吸い付かれるように、自身の身体を・・・」

「わああああっ!!」

そう唐突に叫んだのは、ルーカスだ。彼は突然立ち上がると、真っ赤になった顔を隠すように両手で覆った。

(あら?ルーカス様のこんな姿は、初めて見るわ。いつも落ち着いていて、最近は私が話しかけても反応なさらなかったのに・・・)

シャーロットは、ルーカスが慌てふためく様子に目をパチクリさせた。そして隣にいる伯爵夫妻に視線を向けると、彼らは揃って顔色が悪い。その瞳に滲ませるのは、侮蔑ぶべつの色だ。夫人は息子を唖然と見上げ、伯爵は信じられないものを見るような目で、息子を見つめていた。

そんな彼に構わず、シャーロットは話を続ける。

「状況をお分かり頂けたのでしたら、こちらの書類にサインをお願いします。私も早く帰って登城の準備したいのです。殿下の依頼をあまりお待たせするわけには、まいりませんから・・・ルーカス様もとっとと私との関係を断って、愛する人との時間を大切になさってくださいね。時間は無限ではありませんから・・」

最後にスッキリとした表情でニッコリ微笑んだシャーロットと、まるで魂が抜けたかのようなルーカスの姿は対照的だ。そして、伯爵は立ち尽くす顔面蒼白のルーカスを強引に座らせると、渋々ペンを取った。

しんと静まり返った室内に、ペンの走る音だけが響く。そして、伯爵はシャーロットを睨むように一瞥すると、書類をぞんざいに渡し、レジーナはそんな伯爵に非難の目を向けた。

(お母様、そんなに怖い顔をするとシワが増えてしまいますよ?お父様もそんなに眉間にしわを寄せたら、お仕事に差し支えませんか?)

シャーロットはそんな二人の様子を見ながら、呑気にそんなことを考えた。そして書類を受け取った両親たちと、そのまま退出しようと腰を上げる。だが、それは叶わなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました

ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。 壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【旦那様は魔王様 外伝】魔界でいちばん大嫌い~絶対に好きになんて、ならないんだから!~

狭山ひびき
恋愛
「あんたなんか、大嫌いよ!」ミリアムは大きく息を吸い込んで、宣言した。はじめてアスヴィルと出会ったとき、彼は意地悪だった。二度と会いたくないと思うほど嫌っていたのに、ある日を境に、アスヴィルのミリアムに対する態度が激変する。突然アスヴィルは、ミリアムを愛していると言い出したのだ。しかしミリアムは昔のまま、彼のことが大嫌い。そんなミリアムを振り向かせようと、手紙やお菓子、果ては大声で愛を叫んで、気持ちを伝えようとするアスヴィル。果たして、アスヴィルの気持ちはミリアムに届くのか―― ※本作品は、【旦那様は魔王様!】の外伝ですが、本編からは独立したお話です。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

処理中です...