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Scene8 メイド始めます!
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「でも当の本人は、まだピンピンしてるじゃない」
「田舎育ちで体力だけはあるのよ、きっと」
「しかし滑稽よねぇ。みんなから嘘を教えられているとも知らずに“メイド長、メイド長”と歩き回って・・クスッ、これからたっぷりかわいがってあげないとねぇ」
「ほんと、楽しみだわ」
クスクスッと下卑た笑い声が響き渡り、シャーロットは陰から声の主たちの様子を窺った。そこには数人の若いメイドがいた。彼女たちは背を向ける形で話しているので、シャーロットの存在には気づいていないようだ。
(あら、褒められたわ。領民の手伝いで鍛えられてるから、体力には自信があるのよ。それの何が可笑しいのかしら?それに“嘘”って言ったわ。嘘をつかなくてはならないなんて、寂しい方たちね)
シャーロットはメイドたちの会話に嫌なものを感じながらもその場を後にすると、ローラの手を引いて自室へと向かった。
◇◇◇◇◇
「本日からお世話になります。シャーロット・コールマンです」
「ローラ・クレールです」
「「よろしくお願いします」」
シャーロットとローラが挨拶をしているのは、メイド長だ。昨日は結局会えず、メイド初日の今日、挨拶をしていた。そこでメイド長から意外な言葉を聞く。
「昨日は休んで、悪かったですね」
(まあ・・メイド長は、そもそも休んでいたのね。あんなに探しても見つかるはずないじゃない。全く子供じみたことをするものね・・・でも歩き回ったおかげでここの様子も分かったし、良かったわ)
シャーロットは、厨房に集まっていたメイドたちを思い出し、内心哀れんだ。
「いえ、セリウス殿下からも、休むよう言われておりましたので・・」
簡単な挨拶を交わし、メイド長から仕事の説明が始まった。まず、仕事内容の確認からだ。この城でのメイドの主な役割は、主に三つ。一つ目が掃除や洗濯などの家事全般。二つ目が来客対応、三つめは、食事の給仕だ。
「はい!わかりました」とシャーロットとローラが返事をすると、メイド長がコホンッと咳払いをして、更に話を続けた。
「・・と、ここまでは普通のメイドの話です。シャーロット、貴女はセリウス殿下付きのメイド。ですから、掃除や洗濯をする必要はありません。来客対応も給仕も不要です」
「はい!メイド長!・・・えっ?それでは私の仕事は一体・・」
思わず元気よく返事をしたシャーロットだったが、説明されたばかりの仕事はしなくていいと言われ、混乱する。戸惑いの眼差しを向けると、メイド長は苦笑して言った。
「難しいことはありません。貴女の役目は、セリウス殿下のお世話です。殿下のお側にいて、殿下の指示に従う。ただそれだけ。いいですね?」
「はい、分かりました」
(何だか拍子抜けだわ。みんなと一緒に頑張ろうと思ってたのに・・)
「それからローラ。貴女は私の下に付きなさい。私の手伝いをしてもらいます」
「はい、メイド長!頑張ります」
話を聞いていたシャーロットが、どんな表情をしていたのか、メイド長が「羨ましいですか?」と尋ねてくる。それにシャーロットは、慌てて「いえ・・・」と返すと、頬を染めた。
(顔に出てたかしら・・恥ずかしい。でもローラと別でよかったのかも・・・昨日みたいに疲れさせちゃうかもしれないし・・)
「さて・・・話は以上です。二人とも、しっかり励むように」
メイド長の締めのセリフに「はいっ!」と頷いたシャーロットのメイドとしての日々が始まるのだった。
◇◇◇◇◇
「あの~、殿下・・何かお仕事を」
「何言ってるのさ。仕事中だろ?」
シャーロットは今、セリウスと並んでソファーに座っている。言われた通りに部屋の掃除を済ませ、剣の稽古から戻ってきた彼とお茶の最中だった。これも「一人で飲むより、二人でお茶を楽しんだほうが美味しいだろ?」というセリウスの言葉に頷いた形だ。
「・・そうね。・・・・あっ、美味しい」
紅茶を一口飲んだシャーロットが素直な感想を口にすると、隣のセリウスは満足そうに微笑んだ。
「やっぱり高級な茶葉は、香りも深みも違うわね。本当に美味しい」
「これ高級なものでは、ないんだよ」
「えっ、そうなの? 」
セリウスが言うには、いつも飲んでる安い紅茶だという。シャーロットが驚いていると、彼はクスリと笑った。
「別に私は、高級なものを選んで嗜むわけではないよ。値段に関わらず、良いものは受け入れる。それに今日は、煎れた人が上手いから、いつもよりさらに美味しく感じるね」
セリウスの褒め言葉に頬を染めるシャーロット。メイドであるシャーロットが、これを煎れたのだから当然だ。
シャーロットは、更にカップを口に運ぶと、ずっと心にあった疑問をぶつける。
「ところでセリウス様、一つ聞きたいことがあるの。以前セリウス様が言っていた私の噂って何?」
「田舎育ちで体力だけはあるのよ、きっと」
「しかし滑稽よねぇ。みんなから嘘を教えられているとも知らずに“メイド長、メイド長”と歩き回って・・クスッ、これからたっぷりかわいがってあげないとねぇ」
「ほんと、楽しみだわ」
クスクスッと下卑た笑い声が響き渡り、シャーロットは陰から声の主たちの様子を窺った。そこには数人の若いメイドがいた。彼女たちは背を向ける形で話しているので、シャーロットの存在には気づいていないようだ。
(あら、褒められたわ。領民の手伝いで鍛えられてるから、体力には自信があるのよ。それの何が可笑しいのかしら?それに“嘘”って言ったわ。嘘をつかなくてはならないなんて、寂しい方たちね)
シャーロットはメイドたちの会話に嫌なものを感じながらもその場を後にすると、ローラの手を引いて自室へと向かった。
◇◇◇◇◇
「本日からお世話になります。シャーロット・コールマンです」
「ローラ・クレールです」
「「よろしくお願いします」」
シャーロットとローラが挨拶をしているのは、メイド長だ。昨日は結局会えず、メイド初日の今日、挨拶をしていた。そこでメイド長から意外な言葉を聞く。
「昨日は休んで、悪かったですね」
(まあ・・メイド長は、そもそも休んでいたのね。あんなに探しても見つかるはずないじゃない。全く子供じみたことをするものね・・・でも歩き回ったおかげでここの様子も分かったし、良かったわ)
シャーロットは、厨房に集まっていたメイドたちを思い出し、内心哀れんだ。
「いえ、セリウス殿下からも、休むよう言われておりましたので・・」
簡単な挨拶を交わし、メイド長から仕事の説明が始まった。まず、仕事内容の確認からだ。この城でのメイドの主な役割は、主に三つ。一つ目が掃除や洗濯などの家事全般。二つ目が来客対応、三つめは、食事の給仕だ。
「はい!わかりました」とシャーロットとローラが返事をすると、メイド長がコホンッと咳払いをして、更に話を続けた。
「・・と、ここまでは普通のメイドの話です。シャーロット、貴女はセリウス殿下付きのメイド。ですから、掃除や洗濯をする必要はありません。来客対応も給仕も不要です」
「はい!メイド長!・・・えっ?それでは私の仕事は一体・・」
思わず元気よく返事をしたシャーロットだったが、説明されたばかりの仕事はしなくていいと言われ、混乱する。戸惑いの眼差しを向けると、メイド長は苦笑して言った。
「難しいことはありません。貴女の役目は、セリウス殿下のお世話です。殿下のお側にいて、殿下の指示に従う。ただそれだけ。いいですね?」
「はい、分かりました」
(何だか拍子抜けだわ。みんなと一緒に頑張ろうと思ってたのに・・)
「それからローラ。貴女は私の下に付きなさい。私の手伝いをしてもらいます」
「はい、メイド長!頑張ります」
話を聞いていたシャーロットが、どんな表情をしていたのか、メイド長が「羨ましいですか?」と尋ねてくる。それにシャーロットは、慌てて「いえ・・・」と返すと、頬を染めた。
(顔に出てたかしら・・恥ずかしい。でもローラと別でよかったのかも・・・昨日みたいに疲れさせちゃうかもしれないし・・)
「さて・・・話は以上です。二人とも、しっかり励むように」
メイド長の締めのセリフに「はいっ!」と頷いたシャーロットのメイドとしての日々が始まるのだった。
◇◇◇◇◇
「あの~、殿下・・何かお仕事を」
「何言ってるのさ。仕事中だろ?」
シャーロットは今、セリウスと並んでソファーに座っている。言われた通りに部屋の掃除を済ませ、剣の稽古から戻ってきた彼とお茶の最中だった。これも「一人で飲むより、二人でお茶を楽しんだほうが美味しいだろ?」というセリウスの言葉に頷いた形だ。
「・・そうね。・・・・あっ、美味しい」
紅茶を一口飲んだシャーロットが素直な感想を口にすると、隣のセリウスは満足そうに微笑んだ。
「やっぱり高級な茶葉は、香りも深みも違うわね。本当に美味しい」
「これ高級なものでは、ないんだよ」
「えっ、そうなの? 」
セリウスが言うには、いつも飲んでる安い紅茶だという。シャーロットが驚いていると、彼はクスリと笑った。
「別に私は、高級なものを選んで嗜むわけではないよ。値段に関わらず、良いものは受け入れる。それに今日は、煎れた人が上手いから、いつもよりさらに美味しく感じるね」
セリウスの褒め言葉に頬を染めるシャーロット。メイドであるシャーロットが、これを煎れたのだから当然だ。
シャーロットは、更にカップを口に運ぶと、ずっと心にあった疑問をぶつける。
「ところでセリウス様、一つ聞きたいことがあるの。以前セリウス様が言っていた私の噂って何?」
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