〘完〙婚約破棄してメイドになった愛され子爵令嬢が、溺愛される・・・まで

hanakuro

文字の大きさ
16 / 21

Scene16 負け犬の遠吠えがすごいです

しおりを挟む
「えっ・・?シーラ様?その見事なお胸は似てるけど、失礼ですがお顔は・・」

シャーロットの言葉にシーラの顔はみるみる真っ赤に染まる。そしてシャーロットの胸を指差すと、大声で叫んだ。

「悪かったわね!地味顔で!それに私のこの自慢の胸を、そんな貧相なものと一緒にするな!ルーカス様から王子に乗り換えたくせに!この強欲女!」

その罵声に辺りはしんと静まり返り、セリウスは氷のオーラ放っている。そして恐ろしいほどに口角を上げたセリウスは、シャーロットの横に立つと、彼女の腰を抱き侮蔑の目で見下した。

「貴様・・誰に向かって言ってる。もう一度言ってみろ。ただし、次に汚い言葉を言ったら、貴様の首が飛ぶと思え。わかったか?それと・・・お前の自慢だというその胸に付いているのは何だ?飾りか?ならば今すぐ取り外すが、どうする?ん?答えてみろ!」

セリウスの怒気を含んだ声に、シーラは身体をビクリと震わせた。そして、傍らで聞いていたシャーロットも背筋が寒くなり、肩から掛けたショールをギュッと掴んだ。

(殿下・・・怖い。せっかくの美丈夫が台無しだわ)

「殿下、落ち着いてくださいませ。私は気にしてません。それに彼女の言うとおりですもの」

シャーロットはセリウスをなだめると、シーラと改めて向き合った。

「シーラ様。確かに私に貴女のような自慢のお胸はありませんが、全然羨ましくありませんよ。これ負け惜しみではありませんから、勘違いなさらないでくださいね。
だってそんなものここにつけてたら、明らかに重そうだし、肩こりそうだし、何より男性の視線が邪魔ですもの。
そして貴女は、私がコーネリアス様から乗り換えたと言われましたが、そうではありません。あなた方が愛し合っているところを見てしまったので、身を引いたのです。この機会にはっきり申し上げますが、殿下とはただの主とメイドの主従関係です。
それからコーネリアス様には、私も困ってるんですよ。自分でシーラ様を選んでおきながら、今更私を愛称で呼ぶなど、正気ではありません。将来を共にするなら、シーラ様が彼を引きずってでも、お医者様に連れて行くべきですわ」

「な、何よ!私だって好きでこんな体に産まれたんじゃないんだから!あんたたち男どもが勝手に勘違いしてるだけなんだから!」

そう言い切ったシーラに、さっきまでの威勢は影も形もない。しゅんとして、肩を落としている。そんなシーラにシャーロットは目の前にしゃがみ込むと、「そうよね。でなきゃ、布なんかで隠さないわよね」と優しい声で言った。

しかしシーラから謝罪の言葉はなく、彼女はフンッと不貞腐れたように顔を背けた。シャーロットは苦笑すると、羽織っていたショールをシーラの肩にかけ、そして立ち上がりセリウスに告げる。

「殿下、終わりました。ありがとうございました。衛兵の方々にもお手間を取らせて、申し訳ありませんでした」

そう言って、シャーロットが頭を下げると、衛兵たちは大人しくなったシーラを連れて、部屋を出て行った。

部屋に残ったシャーロットたち五人。無言で騒動の元が消えた扉を見ていた。そして徐ろにメイド長が謝罪を口にする。

「セリウス殿下、アベル宰相。この度は私の教育が行き届かず、このような騒ぎを起こし、申し訳ありません」

深々と頭を垂れる彼女に、セリウスは「いや、君が悪い訳ではない。コーネリアス伯爵家とバーガンディ男爵家には、しっかり責任を取らせるから、気にするな」と言った。

(責任・・そんな大袈裟だわ。被害者の私が止めたら、殿下はこれ以上追求するのをやめてくれるかしら)

セリウスの話にそう思ったシャーロットだったが、それよりも気になっていることがあった。シーラの犯行の様子を映し出した置物だ。

恐る恐る置物の側に近寄ると、マジマジと観察する。

(うーん。どう見ても普通の置物なのよね。これがあの鮮明な映像を記憶してるなんて、誰も思わな・・・あら?ちょっと待って・・)

シャーロットは、ここであることに気付いた。ギギギッと油を指し忘れた機械のように、首をセリウスの方へぎこちなく向けると、「殿下・・・」と弱々しく呼んだ。それにセリウスが不思議そうな眼差しを向けると、シャーロットは言葉を続ける。

「あの・・・つかぬことを伺いますが、これは部屋の中の映像を記憶する道具ですよね?ただの置物ではなく・・・ということは、私の・・その・・・着替えてる姿とかも・・・映ったり・・」

シャーロットの質問にセリウスは、満面の笑みで「しないよ」と言った。

それにホッと安堵したシャーロットは、置物が気になっていた。アベルによると、瞳と同じ石の付いた鍵が近くにあると、映像が記憶されないそうだ。

「まあ、そんな便利なものがあるんですね」

感心したシャーロットは、再び疑問を口にする。それなら、衛兵の証言など取らずに最初からあの映像でシーラだけ連れてくればよかったのではないかと・・

そして、その問いにセリウスは、いたずらっ子のような笑顔で答えた。

「それじゃあ、つまらないよね?それにああやって犯人をあぶり出したほうが、探偵みたいじゃないか。これも窮屈な城暮らしを紛らわす娯楽の一つだよ」

そんなセリウスにシャーロットは、呆れると同時に彼らしいとも思う。だが、今回ばかりは心臓に悪いので、勘弁して欲しいと思った。

そして、そんな彼女の気持ちをよんだかのように、セリウスは言った。

「クックックッ・・大丈夫だよ。もうしないから・・」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました

ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。 壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【旦那様は魔王様 外伝】魔界でいちばん大嫌い~絶対に好きになんて、ならないんだから!~

狭山ひびき
恋愛
「あんたなんか、大嫌いよ!」ミリアムは大きく息を吸い込んで、宣言した。はじめてアスヴィルと出会ったとき、彼は意地悪だった。二度と会いたくないと思うほど嫌っていたのに、ある日を境に、アスヴィルのミリアムに対する態度が激変する。突然アスヴィルは、ミリアムを愛していると言い出したのだ。しかしミリアムは昔のまま、彼のことが大嫌い。そんなミリアムを振り向かせようと、手紙やお菓子、果ては大声で愛を叫んで、気持ちを伝えようとするアスヴィル。果たして、アスヴィルの気持ちはミリアムに届くのか―― ※本作品は、【旦那様は魔王様!】の外伝ですが、本編からは独立したお話です。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

処理中です...