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Scene4 2度目の夢は真か
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「あぁぁぁ・・どうなってるの!?」
ミーリエルは、頭を抱えていた。
今日は遠征隊出発の日。当然、ミーリエルも参加する。しかしその朝、再び夢を見たのだ。夢を見ただけなら、特に悩む必要もないように聞こえるが、その夢の内容が問題だった。
小説では、探し出す宝石は国中に散らばっていたが、新たに見た夢ではミーリエルは何故か王都にいた。そしてマーカスと共に入って行くのは、王城だった。そこで宝石を探し出し始めたのだ。
(あれは正夢?どうしよう。今日、出発なのに・・・止める?でも夢が本当かも分からない・・それにみんなが信じてくれるか・・・)
ミーリエルは、ベッドに再び横になると、ジタバタと悶える。すると、そこへ扉をノックする音が聞こえた。
「お嬢様、おはようございます。どうかなさいましたか?」
ミーリエルの様子がおかしいことに気づいた侍女が声をかけた。それに「うん、ちょっと夢を見て、迷ってる」と言うと、侍女は迷うなんてミーリエルらしくないと言った。
「私らしくない?」
「はい、いつものお嬢様なら即断即決でしょう。何を悩んでおられるのです?」
(いや~、メインディッシュを肉にするか魚にするか悩んでるわけではないのよ。王子も参加する遠征をこのまま出立するのか、中止にするのかだからね。あのワガママ王子のご機嫌損ねたら、下手したらクビ飛ぶから)
侍女に言われてミーリエルはそう思った。確かに小説のミーリエルなら即断即決しているだろう。そして前世の自分もどちらかといえば“何とかなるさ”と、とりあえず行動に移すタイプだった。
ミーリエルは、ベッドから窓の外を見る。そこには澄んだ青空に真っ青な鳥が対で飛ぶ姿があった。
(青い鳥・・青い鳥といえば、ヘン○ルとグ○ーテルよね・・あっ、これは・・・・決めた!!悩んだ時間がもったいなかったな)
ミーリエルは、決めた。夢に従うことにしたのだ。
そもそもアリアナとマーカスそしてオーウェンの容姿からして、小説と食い違っている。今更、自分の書き上げた小説どおりじゃないからと、狼狽えるほうが馬鹿らしい。時間の無駄だ。
ミーリエルは、侍女のおかげで心が決まったことに礼を言うと、支度に取りかかった。
◇◇◇◇◇
ミーリエルを乗せたリンドン侯爵家の馬車は、急ぎ城へ向かっていた。仕度を大急ぎで済ませたミーリエルは、朝食もとらずに馬車へ飛び乗った。
そして城に着くと、扉が開く前に飛び出し父ケインズの姿を探す。するとマーカスの姿が真っ先に目に飛び込んできた。
「エルガド様!父を見ませんでしたか?遠征は中止です!」
すっかり準備を整えたマーカスに飛びつき、必死にそう訴えるミーリエルに、驚きの表情を浮かべたマーカスは、とりあえず落ち着くよう言った。
「リンドン嬢、落ち着いて。一体どうしたと言うのです?」
「落ち着いてなど、いられません!とにかく今すぐ遠征を中止するよう父に話さないと」
そのミーリエルの必死な様子にマーカスは「分かった」とひとこと言うと、彼女の手を取り城の中へ駆け出した。その力強い腕に引かれ、ミーリエルも走る。通り過ぎる騎士たちが何事かと振り返る。きっと髪も遠征用に揃えたブラウスとパンツも乱れているだろうが、そんなこと気にしていられなかった。
そしてマーカスは、真っ直ぐに宰相の仕事の部屋へ向かうと思われたが、彼がミーリエルを連れてきたのは、遠征を決めたあの部屋だった。勢いよく飛び込むと、騎士団長と話すケインズの姿があった。ケインズたちは、ノックもなしにいきなり飛び込んできたミーリエルたちに眉をひそめる。
「ミーリエル、ノックもしないで飛び込んでくるとは、騒々しい。一体何事だ?」
ミーリエルは、走って乱れた息を必死に整えながら「お父様」と口を開いた。
「申し訳ありません・・・しかし一刻も早く・・伝えなければならない・・・ことがございまして・・」
(ヤバッ・・・ミーリエル、ヤバッ・・ちょっと走っただけで、この息のあがりようはヤバッ・・)
息を切らせるミーリエルに、騎士団長が座るよう椅子を勧めたが、丁寧に断ると肝心の要件を告げた。
「お父様・・遠征は中止してください。また夢を見ました」
そして今朝見た夢の話を説明すると、ケインズたちは押し黙った。きっと頭の中で色々考えを巡らせているのだろう。ミーリエルは、それを邪魔しないよう静かに返答を待つ。
そしてしばらくの後、ケインズがようやく口を開いた。
「それが正夢だと、なぜ断言できる?」
(ゔ・・そうなんだよぉぉ。それを言われちゃうと、何も言えねぇ・・・って、あの人の名言言ってる場合じゃな~い)
この問いにミーリエルは、はっきりと答えを返すことができないでいると、「準備の整っている遠征隊を今更中止にすることが、どういう意味か分かってるのか?」と追い詰められる。
ミーリエルは「はい」と頷くと、ゴクリと喉を鳴らし口を開く。
「しかし夢が正夢なら、このまま出立しても時を無駄にする可能性が高いと思います」
この訴えにケインズは、険しい表情をする。横の騎士団長も同じ表情だ。
「ミーリエル・・“思います”では困んるんだよ。この遠征には、殿下も参加されるんだ」
(そんなこと分かってる。だからあんなに悩んだんじゃない・・でもだからこそ)
ミーリエルが反論しようと口を開きかけた時、扉がバンッと勢いよく開き、文字通りオーウェンが乱入してきた
「おい!俺様を除け者にして、重要な話をするな!」
ミーリエルは、頭を抱えていた。
今日は遠征隊出発の日。当然、ミーリエルも参加する。しかしその朝、再び夢を見たのだ。夢を見ただけなら、特に悩む必要もないように聞こえるが、その夢の内容が問題だった。
小説では、探し出す宝石は国中に散らばっていたが、新たに見た夢ではミーリエルは何故か王都にいた。そしてマーカスと共に入って行くのは、王城だった。そこで宝石を探し出し始めたのだ。
(あれは正夢?どうしよう。今日、出発なのに・・・止める?でも夢が本当かも分からない・・それにみんなが信じてくれるか・・・)
ミーリエルは、ベッドに再び横になると、ジタバタと悶える。すると、そこへ扉をノックする音が聞こえた。
「お嬢様、おはようございます。どうかなさいましたか?」
ミーリエルの様子がおかしいことに気づいた侍女が声をかけた。それに「うん、ちょっと夢を見て、迷ってる」と言うと、侍女は迷うなんてミーリエルらしくないと言った。
「私らしくない?」
「はい、いつものお嬢様なら即断即決でしょう。何を悩んでおられるのです?」
(いや~、メインディッシュを肉にするか魚にするか悩んでるわけではないのよ。王子も参加する遠征をこのまま出立するのか、中止にするのかだからね。あのワガママ王子のご機嫌損ねたら、下手したらクビ飛ぶから)
侍女に言われてミーリエルはそう思った。確かに小説のミーリエルなら即断即決しているだろう。そして前世の自分もどちらかといえば“何とかなるさ”と、とりあえず行動に移すタイプだった。
ミーリエルは、ベッドから窓の外を見る。そこには澄んだ青空に真っ青な鳥が対で飛ぶ姿があった。
(青い鳥・・青い鳥といえば、ヘン○ルとグ○ーテルよね・・あっ、これは・・・・決めた!!悩んだ時間がもったいなかったな)
ミーリエルは、決めた。夢に従うことにしたのだ。
そもそもアリアナとマーカスそしてオーウェンの容姿からして、小説と食い違っている。今更、自分の書き上げた小説どおりじゃないからと、狼狽えるほうが馬鹿らしい。時間の無駄だ。
ミーリエルは、侍女のおかげで心が決まったことに礼を言うと、支度に取りかかった。
◇◇◇◇◇
ミーリエルを乗せたリンドン侯爵家の馬車は、急ぎ城へ向かっていた。仕度を大急ぎで済ませたミーリエルは、朝食もとらずに馬車へ飛び乗った。
そして城に着くと、扉が開く前に飛び出し父ケインズの姿を探す。するとマーカスの姿が真っ先に目に飛び込んできた。
「エルガド様!父を見ませんでしたか?遠征は中止です!」
すっかり準備を整えたマーカスに飛びつき、必死にそう訴えるミーリエルに、驚きの表情を浮かべたマーカスは、とりあえず落ち着くよう言った。
「リンドン嬢、落ち着いて。一体どうしたと言うのです?」
「落ち着いてなど、いられません!とにかく今すぐ遠征を中止するよう父に話さないと」
そのミーリエルの必死な様子にマーカスは「分かった」とひとこと言うと、彼女の手を取り城の中へ駆け出した。その力強い腕に引かれ、ミーリエルも走る。通り過ぎる騎士たちが何事かと振り返る。きっと髪も遠征用に揃えたブラウスとパンツも乱れているだろうが、そんなこと気にしていられなかった。
そしてマーカスは、真っ直ぐに宰相の仕事の部屋へ向かうと思われたが、彼がミーリエルを連れてきたのは、遠征を決めたあの部屋だった。勢いよく飛び込むと、騎士団長と話すケインズの姿があった。ケインズたちは、ノックもなしにいきなり飛び込んできたミーリエルたちに眉をひそめる。
「ミーリエル、ノックもしないで飛び込んでくるとは、騒々しい。一体何事だ?」
ミーリエルは、走って乱れた息を必死に整えながら「お父様」と口を開いた。
「申し訳ありません・・・しかし一刻も早く・・伝えなければならない・・・ことがございまして・・」
(ヤバッ・・・ミーリエル、ヤバッ・・ちょっと走っただけで、この息のあがりようはヤバッ・・)
息を切らせるミーリエルに、騎士団長が座るよう椅子を勧めたが、丁寧に断ると肝心の要件を告げた。
「お父様・・遠征は中止してください。また夢を見ました」
そして今朝見た夢の話を説明すると、ケインズたちは押し黙った。きっと頭の中で色々考えを巡らせているのだろう。ミーリエルは、それを邪魔しないよう静かに返答を待つ。
そしてしばらくの後、ケインズがようやく口を開いた。
「それが正夢だと、なぜ断言できる?」
(ゔ・・そうなんだよぉぉ。それを言われちゃうと、何も言えねぇ・・・って、あの人の名言言ってる場合じゃな~い)
この問いにミーリエルは、はっきりと答えを返すことができないでいると、「準備の整っている遠征隊を今更中止にすることが、どういう意味か分かってるのか?」と追い詰められる。
ミーリエルは「はい」と頷くと、ゴクリと喉を鳴らし口を開く。
「しかし夢が正夢なら、このまま出立しても時を無駄にする可能性が高いと思います」
この訴えにケインズは、険しい表情をする。横の騎士団長も同じ表情だ。
「ミーリエル・・“思います”では困んるんだよ。この遠征には、殿下も参加されるんだ」
(そんなこと分かってる。だからあんなに悩んだんじゃない・・でもだからこそ)
ミーリエルが反論しようと口を開きかけた時、扉がバンッと勢いよく開き、文字通りオーウェンが乱入してきた
「おい!俺様を除け者にして、重要な話をするな!」
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