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第3章
第176話 リリス14歳 開放
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枝を投げ入れられた炎は、弱まっていたのが嘘のようにゴウッとその勢いを増した。しかし、それは一瞬だった。あっという間にその勢いはなくなり、黒い蛇は炎にのまれるように消えていった。やがて灰色に変化した炎は、徐々に小さくなる。そして最後の枝でくすぶっていた炎が消えると同時に眩いばかりの光を放ち、それは天高く一筋の光の柱が上がったが、その柱も一瞬で弾けるように消えた。
リリスが天を見上げていた視線を戻すと、木は跡形もなくなくなり、代わりに一人の男性が立っていた。その髪は燃えるような赤い色をしており、衣はキラキラと輝き不思議な色をしていた。しかし顔色は悪く、どこか覇気がなかった。目を閉じたままの男性は、足を取られバランスを崩す。それを慌てて走り寄ったリリスが支えた。
「大丈夫ですか?」
その声に男性の瞼が開かれ、リリスの視線と交差する。リリスに向けられる瞳は、着ている衣と同様に不思議な色をしていた。
「そのまま座らせてやりな」
アルミーダのアドバイスに従い、男性を座らせたリリスにアルミーダが小瓶を差し出した。それは鞄から出した瓶だった。中には透明な液体が入っている。リリスが受け取ると、アルミーダが説明した。
「回復薬だ。飲ませておやり。精霊用に特別に調合したものだから、体力も魔力も元に戻るはずだ」
リリスは瓶の蓋を開けると、男性の手に握らせた。そして男性と目を合わせ「飲んでください。良くなりますから」と言った。男性は小瓶を口へ運ぶと、中の液体を一気に飲み干した。すると赤い髪は艶を取り戻し、頬には赤みがさしてきた。生気が戻った瞬間だった。
「どうですか?まだどこか具合が悪かったりしますか?」
「あたしの特別な薬を飲んで、全快しないはずないじゃないか。疑ってるのかい?」
アルミーダが被っていたフードをとり、汗を拭いながら言った。リリスは両手を振り、慌てて否定する。
「えっ!?いえっ!そんなつもりは一ミリもありません!」
「本当だろうね?あんたはたまに調子のいいこと言うからねぇ」
「えー、そんなぁ・・・」
まだ何か言いたそうなアルミーダに肩を落とすリリス。そんな二人のやり取りを見ていた男性が笑いを漏らす。
「くっくっくっ・・・」
「あっ、すみません。お見苦しいところをお見せして・・・あの・・サラマンデル様ですよね?」
リリスは恥ずかしさを誤魔化すように早口に尋ねた。男性はリリスたちに交互に視線を送ると、微笑みを浮かべながら言った。
「ああ、いかにも。そんなに畏まらなくてもいい。君達は命の恩人だ。感謝している」
口を開いたサラマンデルは瞳や衣と同様、不思議な声をしていた。それは力強いが優しく心地よい色を帯びおり、心の奥に響いた。リリスは自然と胸が高鳴るの自覚しながら、自己紹介をしようとしたが、それはサラマンデルによって遮られる。
「はじめまして。私は・・・」
「いや、いい・・全て知っている。私がただここに封印されていただけと思ったか?君たちはリリスにアルミーダだろう?」
サラマンデルの言葉に目を丸くするリリスに対して、アルミーダは目を細めた。さらにサラマンデルは言葉を続ける。
「魔女に不意をつかれたとはいえ、このような失態をおかし、君たちに迷惑をかけた。改めて礼を言う」
「そんな・・・」
「まぁ。そんなとこで勘弁しといてやるかね」
照れ隠しなのかアルミーダはプイッとそっぽを向いた。リリスは彼女の赤く染まった頬を見逃さなかった。
(そんな・・サラマンデル様に向かって・・・・んっ?そもそも魔女と精霊ってどっちが上なの?・・・あっ、でも立場が上とか下とか関係ない?・・んん?)
リリスがそんなことを考えていると、眩しい光が結界の外から差した。リリスたちが外を見ると、アルバスが満足そうにこちらを眺めていた。
リリスが天を見上げていた視線を戻すと、木は跡形もなくなくなり、代わりに一人の男性が立っていた。その髪は燃えるような赤い色をしており、衣はキラキラと輝き不思議な色をしていた。しかし顔色は悪く、どこか覇気がなかった。目を閉じたままの男性は、足を取られバランスを崩す。それを慌てて走り寄ったリリスが支えた。
「大丈夫ですか?」
その声に男性の瞼が開かれ、リリスの視線と交差する。リリスに向けられる瞳は、着ている衣と同様に不思議な色をしていた。
「そのまま座らせてやりな」
アルミーダのアドバイスに従い、男性を座らせたリリスにアルミーダが小瓶を差し出した。それは鞄から出した瓶だった。中には透明な液体が入っている。リリスが受け取ると、アルミーダが説明した。
「回復薬だ。飲ませておやり。精霊用に特別に調合したものだから、体力も魔力も元に戻るはずだ」
リリスは瓶の蓋を開けると、男性の手に握らせた。そして男性と目を合わせ「飲んでください。良くなりますから」と言った。男性は小瓶を口へ運ぶと、中の液体を一気に飲み干した。すると赤い髪は艶を取り戻し、頬には赤みがさしてきた。生気が戻った瞬間だった。
「どうですか?まだどこか具合が悪かったりしますか?」
「あたしの特別な薬を飲んで、全快しないはずないじゃないか。疑ってるのかい?」
アルミーダが被っていたフードをとり、汗を拭いながら言った。リリスは両手を振り、慌てて否定する。
「えっ!?いえっ!そんなつもりは一ミリもありません!」
「本当だろうね?あんたはたまに調子のいいこと言うからねぇ」
「えー、そんなぁ・・・」
まだ何か言いたそうなアルミーダに肩を落とすリリス。そんな二人のやり取りを見ていた男性が笑いを漏らす。
「くっくっくっ・・・」
「あっ、すみません。お見苦しいところをお見せして・・・あの・・サラマンデル様ですよね?」
リリスは恥ずかしさを誤魔化すように早口に尋ねた。男性はリリスたちに交互に視線を送ると、微笑みを浮かべながら言った。
「ああ、いかにも。そんなに畏まらなくてもいい。君達は命の恩人だ。感謝している」
口を開いたサラマンデルは瞳や衣と同様、不思議な声をしていた。それは力強いが優しく心地よい色を帯びおり、心の奥に響いた。リリスは自然と胸が高鳴るの自覚しながら、自己紹介をしようとしたが、それはサラマンデルによって遮られる。
「はじめまして。私は・・・」
「いや、いい・・全て知っている。私がただここに封印されていただけと思ったか?君たちはリリスにアルミーダだろう?」
サラマンデルの言葉に目を丸くするリリスに対して、アルミーダは目を細めた。さらにサラマンデルは言葉を続ける。
「魔女に不意をつかれたとはいえ、このような失態をおかし、君たちに迷惑をかけた。改めて礼を言う」
「そんな・・・」
「まぁ。そんなとこで勘弁しといてやるかね」
照れ隠しなのかアルミーダはプイッとそっぽを向いた。リリスは彼女の赤く染まった頬を見逃さなかった。
(そんな・・サラマンデル様に向かって・・・・んっ?そもそも魔女と精霊ってどっちが上なの?・・・あっ、でも立場が上とか下とか関係ない?・・んん?)
リリスがそんなことを考えていると、眩しい光が結界の外から差した。リリスたちが外を見ると、アルバスが満足そうにこちらを眺めていた。
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