〘完〙なぜかモブの私がイケメン王子に強引に迫られてます 〜転生したら推しのヒロインが不在でした〜

hanakuro

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後日談 リーナストーリー ピンクエンド - Ⅰ

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「貴女、不安と嫉妬・・あおるのはどちらが得意かしら?」

(何それ。意味が全く分からない。そんなこと考えたこともないけど、あえて選ぶなら・・)

「嫉妬でしょうか」

そう言ったものの、嫉妬されるほど自分が美人でもなければ、魅力を持ち合わせているとは思えないリーナは全く自信がない。そもそもセドリックがリーナに執着する原点は、神の余計なお節介だ。

そんなリーナの想いを知ってか知らずか、ビクトリアは「そう・・それなら彼にヤキモチを妬かせましょう」と言った。

「あの、ビクトリア様?それは大丈夫でしょうか。もっと強引になりそうな予感しかしないんですが・・」

「そ~お?嫉妬は人から冷静な判断を奪うものよ。それが私たちの狙い」

(その冷静な判断こそセドリックの最後の砦のような気がするんだけど・・・ビクトリアこそ冷静な判断どこに置き忘れてない?)

リーナは一抹の不安を感じつつ、ビクトリアの話に耳を傾けた。

ビクトリアの『セドリックを嫉妬させちゃおう計画』は、こうだ。

まず、ニセの転移者をつくる。その転移者は、リーナの前世の彼氏が転移してきたという設定であり、前世から固い絆で結ばれたリーナとニセ転移者は、あっという間に相思相愛となる。それに嫉妬し焦ったセドリックが、リーナに謝罪。そして諦めるという選択肢など持ち合わせていないセドリックの弱みをついて、リーナの条件をのませるというものだった。

「ビクトリア様、そんな面倒な役を引く受けてくれる人なんていませんよ。大体、この国の王子を敵に回すかもしれない役なんですから」

「大丈夫。任せなさい。心当たりがあるから」

そう言って彼女が自信たっぷりにリーナの前に連れて来たのは、ベタ恋でビクトリアに密かに恋心を抱く男シリウスだった。

(シリウス!まさかここへきて、新たなベタ恋出演者と絡むとはね)

彼は想いを寄せるビクトリアが悪役令嬢として道を外れると、彼女に忠告し、真っ当な道へと戻そうとするいい人キャラだ。イケメンの侯爵家嫡男で真面目、おまけに一途。非常にお買い得物件なのだが、ベタ恋では王子であるセドリックの影に隠れて、地味な存在だった。リーナが知っているのはそこまでであり、最終巻で二人がどうなったか当然知らない。

「シリウス様、この度はお世話になります」

「ビクトリア嬢から話は聞いています。上手く出来るか分からないが、努力しよう」

真面目な性格がセリフにも表れているシリウス。リーナは、シリウスがビクトリアを見る瞳に特別な感情が滲んでいることにすぐに気付く。

(ああ、やっぱり彼はビクトリアのこと好きなのね。好きな女性に例え嘘とはいえ“他の女の恋人を演じろ”なんて言われちゃうなんて、いくら彼の想いを知らないとはいえ、ビクトリアったら罪作りな女よね)

リーナは自分の考えを確かめたくて、さりげなくシリウスに尋ねる。

「シリウス様は、なぜ私に協力してくださったのでしょうか?セドリック殿下の機嫌を損ねてしまうかもしれませんよ」

「そうだね。でも私は貴女に協力したいと思った。ただそれだけだよ」

シリウスは穏やかな笑みを浮かべたまま、リーナの目を見て答えた。その表情からは嘘偽りが感じられない。

「それに私が協力することで、ビクトリア嬢の役に立てるのなら、こんなに嬉しいことはないからね。昔から彼女にだけは甘いんだよ」

(それって、もはや告白・・・なのに)

シリウスの言葉にも当のビクトリアは、全く気付く様子がない。落ち着いた笑顔を浮かべ、これからの計画に思いを巡らせているようだった。

そしてリーナは、更に意外なことにも気付く。それは、シリウスを見つめるビクトリアの瞳に他の男へ向けるものとは違う何かが含まれていることだった。それは、友情や尊敬といった類のものではないことは確かだ。

(これはもしかして、もしかする?)

そしてリーナは、さり気なく今度はビクトリアに質問する。

「ビクトリア様、本当にシリウス様にご協力頂いてもいいんですね?私がシリウス様と仲睦まじくしてもいいんですね?」

「どうしたのよ、リーナ。その為に彼を呼んだのだから、当たり前でしょう?まさか彼のこと、気に入らなかったかしら?」

「めっ、滅相もないっ!!!シリウス様はとっても素敵です!ただ素敵すぎて、目眩が・・・」

「でしょう?幼い頃から知ってるけど、シリウス様はすごく頼りになるのよ」

普段は優秀すぎるくらい優秀なビクトリアが、自分の色恋に鈍感なことにリーナはビクトリアの考えているのとは違う意味で目眩が起きそうだった。

(焦れったい・・・)

お互い、互いの気持ちに気付かない状態に、リーナの世話焼きな性格がひょっこりと顔を出し始めたのだった。
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