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後日談 冬馬ストーリー - Ⅱ
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夏の暑い日、墓地に冬馬の姿があった。
「こんにちは。悟さんですよね?」
墓の前で手を合わせる男性に声をかけた冬馬。悟と呼ばれた男性が不思議そうに「・・はい」と返すと、冬馬はギラギラと照りつける太陽にも負けない眩しい笑顔を見せた。
「あー、良かった~。行き違いになったら、どうしようかと思ってたんですよ~。いや~、ラッキーラッキー!」
一人盛り上がる冬馬に悟が「あの~、私に何か用ですか?」と尋ねる。それに冬馬は慌てて自己紹介を始めた。
「あっ!すみません!会えたのが嬉しくって、盛り上がっちゃいました!あっ、俺、鷲宮冬馬っていいます。大学生です!今日は悟さんに渡したいものがあって、家に行ったんですけど、こちらだと言われて追いかけてきました!」
冬馬の言葉に悟は「私に?」と、驚き怪訝そうな表情をする。見ず知らずの男に、いきなり“会いたくて追いかけて来た。渡したい物がある”と言われれば、当然の反応だろう。
そんな悟の反応にも臆することなく、冬馬は「はい!これなんですけど」と、紙を差し出した。所々、折り目の入ったそれは、梨奈が冬馬に託した手紙だ。
すると、手紙の宛名をひと目見た悟が漏らした。
「この字・・」
「あっ、やっぱわかりますか!?その手紙、梨奈さんから預かってきました!」
それを聞いた悟は、冬馬が差し出す封筒を受け取った。そこには悟が見覚えのある字で“悟へ”と書かれている。
「君はいったい・・いつ預かったの?」
「あー、それは俺の話を聞いてもらっても、いいですか?信じられないかもしれませんけど、聞いて後悔しないと思いますんで!どうして、この手紙を俺が持ってるかお話しします!」
こうして冬馬は、転移して出会った梨奈のこと、向こうで起こった出来事、梨奈のおかげで戻って来られたこと、そして最後に別れ際に手紙を預かったことを、正直に話す。
話を聞いている間、悟は相槌をうちながら、たまに目を見開き驚きを見せた。しかし、口を挟むことなく冬馬の話に耳を傾けていた。
冬馬が話し終えると、二人の間にしばしの沈黙が流れる。冬馬は悟の想いを邪魔しないよう、彼が口を開くのを静かに待った。セミの声が耳に纏わりつくように鳴り響き、夏の暑さを増す。
そして、ようやく悟が紡ぎ出した声は、どこまでも穏やかで昔を懐かしむ声だった。
「そっか・・梨奈ならあり得るな・・・お節介っていうか、ほっとけないんだよ、アイツ・・・・そっかぁ・・・私の手からいなくなってもそんな感じかぁ・・なんか安心した」
そう言いながら、悟の目からは涙が溢れ出た。止めどなく流れる涙を拭うことなく、悟は天を仰ぎ瞼を閉じる。
しばらく、そうしていた悟が息を吐き出した。冬馬は、おずおすと「信じてくれるんですか?」と尋ねる。すると悟は、乾きかかっていた頬を伝う涙を拭うと、笑顔を浮かべて言った。
「もちろんだよ。君が嘘をついてるなんて、思えないからね。それに君の話の梨奈は、彼女そのものだ。君が見てきた真実だと、分かるよ・・・ありがとう・・来てくれて・・・」
悟の強がる言葉と笑顔の裏に寂しさを感じ取った冬馬だったが、それに気づかぬフリをする。
「いえ!良かったです!信じてもらえないかと、ずっと思ってたんで・・あの、お線香あげても?」
「もちろんだよ。さあ!」
梨奈の墓に手を合わせる冬馬。少し前まで目の前にいて話をしていた彼女が、無機質な石に変わってしまったことに、彼の胸に寂寞の想いが押し寄せる。
墓参りを終えた冬馬は「悟さんは、まだここに?」と尋ねる。
「そうだね。もう少し梨奈と話したくなった」
そう言って、悟は思いがけない異世界からの配達人に精一杯の笑顔を向けた。
「そうですか・・それじゃあ、俺はここで失礼します!」
「今日は本当にありがとう。家族と仲よくね」
悟の言葉に「はい。ありがとうございます!」と返した冬馬は深く頭を下げ、別れた。
冬馬が出口へと歩き始めた直後、墓地には似合わぬ軽快な音楽が鳴る。彼の携帯の着信を告げる音だ。慌てて電話に出ると、彼の口からまたしても墓地に似合わぬ興奮した声が出た。
「えっ!!産まれそう!ええっ!!早くない!?予定日までまだ・・・いま帰るっ!すぐ帰るっ!飛んで帰るっ!だから我慢してっ!・・・えっ!?無理!?・・・・えっ!病院!?あー、そっかそっか、病院に向かえばいいんだなっ!待ってろ!すぐ行くからなっ!!」
会話を終えた冬馬の足は、自然と走り出す。しかしすぐにここが墓地だったことに気付き、速歩きへと変わった。
そんな冬馬の後ろ姿を微笑ましく見送った悟。
そして冬馬もまた、最後の角を曲がる時、振り返ると、開いた手紙を手に涙を流し座り込んだ悟が、墓に向かって笑顔を向けていた。それは冬馬が見た彼の一番の笑顔だった。
その光景に安心した冬馬は、病院へと急いだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数日後、香織のお見舞いに病院を訪れた冬馬の前には、幸せそうな笑顔で見下ろす香織と、その腕の中にはこの世に生を受けてまだ数日の赤ちゃんが気持ちよさそうに眠っていた。
そして部屋の壁には、筆で書かれた『梨織』『梨香』という名が・・・
冬馬は、それを見て「やっぱりいいな!この名前!」と満足そうに言った。そんな彼の腕の中にも小さな身体が・・
自信たっぷりな彼のセリフに、香織は「ふふっ・・」と笑いを漏らし、優しい眼差しを向ける。
部屋は、夏の熱気に覆われた外とは違い、柔らかな温かい雰囲気に包まれていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
冬馬のおつかい、無事に達成です。
冬馬の子供にベタ惚れなパパっぷりを想像していただけたら、嬉しいです。
最後におまけの冬馬小話があります。
「こんにちは。悟さんですよね?」
墓の前で手を合わせる男性に声をかけた冬馬。悟と呼ばれた男性が不思議そうに「・・はい」と返すと、冬馬はギラギラと照りつける太陽にも負けない眩しい笑顔を見せた。
「あー、良かった~。行き違いになったら、どうしようかと思ってたんですよ~。いや~、ラッキーラッキー!」
一人盛り上がる冬馬に悟が「あの~、私に何か用ですか?」と尋ねる。それに冬馬は慌てて自己紹介を始めた。
「あっ!すみません!会えたのが嬉しくって、盛り上がっちゃいました!あっ、俺、鷲宮冬馬っていいます。大学生です!今日は悟さんに渡したいものがあって、家に行ったんですけど、こちらだと言われて追いかけてきました!」
冬馬の言葉に悟は「私に?」と、驚き怪訝そうな表情をする。見ず知らずの男に、いきなり“会いたくて追いかけて来た。渡したい物がある”と言われれば、当然の反応だろう。
そんな悟の反応にも臆することなく、冬馬は「はい!これなんですけど」と、紙を差し出した。所々、折り目の入ったそれは、梨奈が冬馬に託した手紙だ。
すると、手紙の宛名をひと目見た悟が漏らした。
「この字・・」
「あっ、やっぱわかりますか!?その手紙、梨奈さんから預かってきました!」
それを聞いた悟は、冬馬が差し出す封筒を受け取った。そこには悟が見覚えのある字で“悟へ”と書かれている。
「君はいったい・・いつ預かったの?」
「あー、それは俺の話を聞いてもらっても、いいですか?信じられないかもしれませんけど、聞いて後悔しないと思いますんで!どうして、この手紙を俺が持ってるかお話しします!」
こうして冬馬は、転移して出会った梨奈のこと、向こうで起こった出来事、梨奈のおかげで戻って来られたこと、そして最後に別れ際に手紙を預かったことを、正直に話す。
話を聞いている間、悟は相槌をうちながら、たまに目を見開き驚きを見せた。しかし、口を挟むことなく冬馬の話に耳を傾けていた。
冬馬が話し終えると、二人の間にしばしの沈黙が流れる。冬馬は悟の想いを邪魔しないよう、彼が口を開くのを静かに待った。セミの声が耳に纏わりつくように鳴り響き、夏の暑さを増す。
そして、ようやく悟が紡ぎ出した声は、どこまでも穏やかで昔を懐かしむ声だった。
「そっか・・梨奈ならあり得るな・・・お節介っていうか、ほっとけないんだよ、アイツ・・・・そっかぁ・・・私の手からいなくなってもそんな感じかぁ・・なんか安心した」
そう言いながら、悟の目からは涙が溢れ出た。止めどなく流れる涙を拭うことなく、悟は天を仰ぎ瞼を閉じる。
しばらく、そうしていた悟が息を吐き出した。冬馬は、おずおすと「信じてくれるんですか?」と尋ねる。すると悟は、乾きかかっていた頬を伝う涙を拭うと、笑顔を浮かべて言った。
「もちろんだよ。君が嘘をついてるなんて、思えないからね。それに君の話の梨奈は、彼女そのものだ。君が見てきた真実だと、分かるよ・・・ありがとう・・来てくれて・・・」
悟の強がる言葉と笑顔の裏に寂しさを感じ取った冬馬だったが、それに気づかぬフリをする。
「いえ!良かったです!信じてもらえないかと、ずっと思ってたんで・・あの、お線香あげても?」
「もちろんだよ。さあ!」
梨奈の墓に手を合わせる冬馬。少し前まで目の前にいて話をしていた彼女が、無機質な石に変わってしまったことに、彼の胸に寂寞の想いが押し寄せる。
墓参りを終えた冬馬は「悟さんは、まだここに?」と尋ねる。
「そうだね。もう少し梨奈と話したくなった」
そう言って、悟は思いがけない異世界からの配達人に精一杯の笑顔を向けた。
「そうですか・・それじゃあ、俺はここで失礼します!」
「今日は本当にありがとう。家族と仲よくね」
悟の言葉に「はい。ありがとうございます!」と返した冬馬は深く頭を下げ、別れた。
冬馬が出口へと歩き始めた直後、墓地には似合わぬ軽快な音楽が鳴る。彼の携帯の着信を告げる音だ。慌てて電話に出ると、彼の口からまたしても墓地に似合わぬ興奮した声が出た。
「えっ!!産まれそう!ええっ!!早くない!?予定日までまだ・・・いま帰るっ!すぐ帰るっ!飛んで帰るっ!だから我慢してっ!・・・えっ!?無理!?・・・・えっ!病院!?あー、そっかそっか、病院に向かえばいいんだなっ!待ってろ!すぐ行くからなっ!!」
会話を終えた冬馬の足は、自然と走り出す。しかしすぐにここが墓地だったことに気付き、速歩きへと変わった。
そんな冬馬の後ろ姿を微笑ましく見送った悟。
そして冬馬もまた、最後の角を曲がる時、振り返ると、開いた手紙を手に涙を流し座り込んだ悟が、墓に向かって笑顔を向けていた。それは冬馬が見た彼の一番の笑顔だった。
その光景に安心した冬馬は、病院へと急いだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数日後、香織のお見舞いに病院を訪れた冬馬の前には、幸せそうな笑顔で見下ろす香織と、その腕の中にはこの世に生を受けてまだ数日の赤ちゃんが気持ちよさそうに眠っていた。
そして部屋の壁には、筆で書かれた『梨織』『梨香』という名が・・・
冬馬は、それを見て「やっぱりいいな!この名前!」と満足そうに言った。そんな彼の腕の中にも小さな身体が・・
自信たっぷりな彼のセリフに、香織は「ふふっ・・」と笑いを漏らし、優しい眼差しを向ける。
部屋は、夏の熱気に覆われた外とは違い、柔らかな温かい雰囲気に包まれていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
冬馬のおつかい、無事に達成です。
冬馬の子供にベタ惚れなパパっぷりを想像していただけたら、嬉しいです。
最後におまけの冬馬小話があります。
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