〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

文字の大きさ
6 / 74
本編

第6話 悪役は皇太子に翻弄される

翌日、朝食を終えたマリオンは「来い」と短い言葉でエルメの手を取ると、強引に彼女を部屋から連れ出した。そして、半ば引きずられるように連れてこられたのは、色とりどりの薔薇が咲き乱れる皇城の庭だった。カラマノ王国の王城にも薔薇はあったが、ここまで様々な色の薔薇を見たことがなかった。

自然と彼女の口から感嘆の声が漏れる。

「わあ、キレイ」

そんな彼女の様子にマリオンは僅かに目を細めるが、薔薇に目を奪われたエルメは気が付かない。さらにマリオンの強引な腕に引かれ奥へ進むと、豊満な薔薇の香りが二人を包んだ。

高貴な薔薇の香りを抜けた先には、四阿があった。マリオンは何も言わずにエルメを四阿に座らせ「貸せ」とまた短く言うと、頭を彼女の膝の上に乗せ横になった。いわゆる膝枕だ。目を瞑ったその端正な顔をエルメは見下ろし、抗議する。

「ちょっとマリオン様!」

しかし相変わらず聞く耳を持たない様子に、エルメは「どこまで強引なんですか!」と再び言葉を降らせる。すると、マリオンはその瞳に彼女を映すことなく口を開いた。

「私がこうしたいのだから、君は大人しく従っていればいい」

「本当にどこまで身勝っ・・」

エルメはマリオンの俺様発言に再び口を開くが、それは途中で切れた。何故ならマリオンがその瞳に彼女を映すと、抗議を口にする彼女の唇に人差し指を当てたからだ。

「黙れ・・君は静かにするという事を知らんのか?」

「はい?マリオン様が強引なことをするから、黙っていられないのです」

「だから黙れと言っている」

「私は人形ではありません。大体、強引に連れてきて、勝手に膝を貸し出されて、挙げ句“黙れ”とは、マリオン様こそっ・・・」

ここでまたもエルメの言葉が途切れる。今度は、マリオンが親指で彼女の唇を撫でたからだ。色気を帯びた眼差しを向け、左から右へ撫でるように触れるだけの彼の指に、エルメの身体がピクッと反応する。

「黙れないのなら、また塞いでやろうか?」

そう口にしたマリオンは、エルメの唇から肩に垂れる長い髪に指を絡ませると、ぐいっと引っ張った。

「痛っ」

お互いの鼻が触れるほどの近い距離に、エルメは瞳を揺らす。そしてマリオンの翡翠色の瞳は、エルメの揺れる瞳を映していた。目を背けることも瞬きすることもできずに、その翡翠色を見つめるエルメは、昨日の夜の出来事を思い出した。自然と熱る顔を自覚したエルメは、頭の中からそれを必死に追い出そうとする。しかし必死になればなるほど、それはぐるぐると頭の中を回り、占領していく。

「どうした。顔が赤いぞ」

エルメの動揺を察しているのか、そう言う彼の表情はからかっているようにも見える。エルメが言い返せないでいると、マリオンは更に言葉を続けた。

「何を考えている?」

昨夜、テラスで聞いたのと同じセリフに動揺という大波が彼女の心を押し潰す。

(完全に遊ばれてる・・悔しい・・・どうしたら、この人にギャフンと言わせられる?)

そんなエルメを見つめ、フッと笑みをこぼしたマリオンは、更に煽る言葉を吐く。

「どうやらこのセリフ覚えていると見えるな。この後も続けてやろうか?・・・君を抱かないが、触れないとは言ってない。それに君のく・・」

ここでエルメが反撃に出た。

マリオンの顔を両手でガッチリ押さえると、挑戦的なセリフを吐く彼の唇を自身のそれで塞いだ。昨日の仕返しとばかりに唇を重ね合わせていると、彼の顔が一瞬苦悶の色に染まる。
そして、エルメがマリオンの顔の拘束を解き、顔を上げると、そこには唇を赤く染めたマリオンの顔があった。どうやらエルメが彼の唇を噛んだようだ。

さらにエルメは顔を上げた勢いのまま、膝に横たわる彼の身体を抱き起こすと、自由になった足で立ち上がる。そしてすぐに四阿から出ると、振り返りマリオンへ真っ直ぐな眼差しを向けた。

「レディの髪を引っ張った罰です!」

エルメは精一杯の怒りの感情を込めて言葉を吐き出す。しかし相変わらずクールな表情を崩さずにエルメを見つめ返すマリオンは、親指で唇の血を拭った。たったそれだけの仕草なのに、エルメの瞳にやけに色っぽく映る。

「私の妻は暴れ馬だけでなく、噛み癖のある犬の顔も持っていたか・・・」

そう独り言のように言ったマリオンは、立ち上がる。エルメはまた捕まるのかと身構えるが、彼は四阿の入り口で立ち止まると片肘を壁につき、翡翠色の瞳を彼女へ向けた。
感想 14

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!

奏音 美都
恋愛
 ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。  そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。  あぁ、なんてことでしょう……  こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです