58 / 74
新章
新章第11話 意地悪な夫に翻弄される妻
しおりを挟む
(何で壁を見なくちゃいけないの?何するつもり!?)
「何するの!?」と声に出す前に後ろから腕が伸びてきて、エルメのお腹の上に乗せられた。
「フフッ、くすぐったい」
「マッサージしてやる。運動して疲れてるんだろ?それとも嫌か?」
艶のある声で耳元で囁かれるセリフは、何てことないはずなのに妙に官能的でゾクゾクとしたものが背中を走る。エルメはブルッと身体を震わせた。
「・・えっと・・嫌じゃないけど、嫌・・・」
「それはどっちなんだ?」
「嫌じゃないよ。マリオンに触れてもらうと嬉しいし・・・でもこれは何か恥ずかしい」
「いま君の視界にあるのは、壁だけだ。私にも君の煽情的な表情は見えない。この状況で、どこに恥ずかしがる要素がある?」
(だからそれが恥ずかしいんだって・・何も視界に入ってこないからこそ、変な想像しちゃうし・・)
「踊ってたから、汗かいてるかもしれないし、やっぱり嫌。離して」
「気にするな。マッサージだと言っただろう。それに君は綺麗だ」
そう言いながら、マリオンの手はエルメのお腹を優しく撫でる。そして、同時に首筋に唇を落としていく。
「んっ・・・」
ピクッと反応を示すエルメの身体に、マリオンは手の動きを止める事はない。ゆっくりとお腹のラインを確かめる様に撫でられると、エルメはお腹の奥底が熱を帯びていく感覚に襲われた。
やがてお腹の手がスルリと脇の方へ滑っていく。エルメはくすぐったさに「ひゃっ・・」と声を上げ、身をよじる。
「他の場所もどうだ?」
マリオンの提案にエルメは、白目をむく寸前だ。
(!!もう無理!本当に無理!これ以上やったら、鼻血出ちゃうぅ!)
「ダメ・・・お願い。許して・・・」
涙目になり懇願するエルメだが、マリオンは「どこにするか?」と問いかけてくる。
(聞いてよぉぉ。どこもいらないってぇぇ)
「どこも嫌。間に合ってます!」と必死に断りのセリフを口にしたが、マリオンは「間に合ってる?それは確認が必要だな」と聞き流す。
マリオンの言葉にエルメは、ブンブンと首を振ると、固まった。身動きしようにも、ガッチリ動けないようにガードされ、後ろを振り向くことすらできない。
エルメはマリオンの腕の中で固まり、目をギュッと瞑る。全身が熱を帯び、心臓の音がドクンドクンとうなりを上げている。しかし、そのまま彼の言う次のマッサージを待つが、一向にその気配がない。
恐る恐る目を開けて、チラリと後ろを見ると、そこには意地悪な笑みを浮かべるマリオンの顔があった。
(!!!あ~、やられたぁ。完全にからかわれてる~。おちょくられてる~・・・もう!信じられない!)
「イジワルっ!!」
思わず叫び、いつの間にか緩んだ腕の中で身体を反転させると、エルメはマリオンの胸に飛び込む形となる。
「エルメ・・・」
頭上から降ってきたマリオンの声は甘く、優しい。エルメは、ゴクリと喉を鳴らすと、意を決したように見上げた。
「マリオンのイジワル・・・最愛の妻をからかって面白い?」
うっすら潤んだ瞳で睨みつけるエルメの顔は、耳まで真っ赤に染まっている。
「仕方ないだろ。私の妻が可愛いいのが悪いんだ」
目を細めるマリオンの何とも理不尽な言い訳にエルメが「やっぱりイジワル・・」と不満げに声を漏らすと、マリオンから全く反省の色のないセリフが返ってきたのだった。
「クックッ、君に怒られるのは本望だ」
◇◇◇◇◇
「いいですね?殿下とのダンスの前にこれを飲んでくださいね」
「ええ、分かったわ」
「前ですよ。でないと、意味がありませんから」
「大丈夫よ。ちゃんと分かってる。この日のためにみんなに協力してもらったんだから」
「母上、僕もついてます!大船に乗ったつもりでいてださい」
今日は舞踏会当日。
エルメとアリスそしてリオルの三人が人目を避けてコソコソと話している理由。それは今日、決行される計画の最終段階の打ち合わせのためだ。
この日のために、エルメは息子まで巻き込んで、マリオンに茶番を披露してきたのだ。
「もちろんそのつもりよ。リオルは、やっぱり頼もしいわね。私がどれだけ助けられたか・・・本当に貴方に協力してもらって、良かったと思ってるのよ」
そうエルメが褒め言葉を送り、目を細めて息子を見つめると、当のリオルは瞳をキラキラさせた。年齢の割にしっかりしているリオルだが、その姿はやはり八歳の子供だ。
「あ~!リオル様、羨ましいです!エルメ様!私の船も大船ですか?」
「もちろんアリスもね。ここまでくると、もう私たちは運命共同体よね」
エルメがアリスの手を握ると、彼女は頬を染めた。そして、その横でウズウズしているリオル。その姿は、左右にブンブン振る尻尾とパタパタと動く耳を持つ犬のようだ。
「母上、僕も共同体ですか?」
その問いかけを「当たり前じゃない!」と肯定したエルメの手には、アリスから渡された小さな包み紙が握られていた。
「何するの!?」と声に出す前に後ろから腕が伸びてきて、エルメのお腹の上に乗せられた。
「フフッ、くすぐったい」
「マッサージしてやる。運動して疲れてるんだろ?それとも嫌か?」
艶のある声で耳元で囁かれるセリフは、何てことないはずなのに妙に官能的でゾクゾクとしたものが背中を走る。エルメはブルッと身体を震わせた。
「・・えっと・・嫌じゃないけど、嫌・・・」
「それはどっちなんだ?」
「嫌じゃないよ。マリオンに触れてもらうと嬉しいし・・・でもこれは何か恥ずかしい」
「いま君の視界にあるのは、壁だけだ。私にも君の煽情的な表情は見えない。この状況で、どこに恥ずかしがる要素がある?」
(だからそれが恥ずかしいんだって・・何も視界に入ってこないからこそ、変な想像しちゃうし・・)
「踊ってたから、汗かいてるかもしれないし、やっぱり嫌。離して」
「気にするな。マッサージだと言っただろう。それに君は綺麗だ」
そう言いながら、マリオンの手はエルメのお腹を優しく撫でる。そして、同時に首筋に唇を落としていく。
「んっ・・・」
ピクッと反応を示すエルメの身体に、マリオンは手の動きを止める事はない。ゆっくりとお腹のラインを確かめる様に撫でられると、エルメはお腹の奥底が熱を帯びていく感覚に襲われた。
やがてお腹の手がスルリと脇の方へ滑っていく。エルメはくすぐったさに「ひゃっ・・」と声を上げ、身をよじる。
「他の場所もどうだ?」
マリオンの提案にエルメは、白目をむく寸前だ。
(!!もう無理!本当に無理!これ以上やったら、鼻血出ちゃうぅ!)
「ダメ・・・お願い。許して・・・」
涙目になり懇願するエルメだが、マリオンは「どこにするか?」と問いかけてくる。
(聞いてよぉぉ。どこもいらないってぇぇ)
「どこも嫌。間に合ってます!」と必死に断りのセリフを口にしたが、マリオンは「間に合ってる?それは確認が必要だな」と聞き流す。
マリオンの言葉にエルメは、ブンブンと首を振ると、固まった。身動きしようにも、ガッチリ動けないようにガードされ、後ろを振り向くことすらできない。
エルメはマリオンの腕の中で固まり、目をギュッと瞑る。全身が熱を帯び、心臓の音がドクンドクンとうなりを上げている。しかし、そのまま彼の言う次のマッサージを待つが、一向にその気配がない。
恐る恐る目を開けて、チラリと後ろを見ると、そこには意地悪な笑みを浮かべるマリオンの顔があった。
(!!!あ~、やられたぁ。完全にからかわれてる~。おちょくられてる~・・・もう!信じられない!)
「イジワルっ!!」
思わず叫び、いつの間にか緩んだ腕の中で身体を反転させると、エルメはマリオンの胸に飛び込む形となる。
「エルメ・・・」
頭上から降ってきたマリオンの声は甘く、優しい。エルメは、ゴクリと喉を鳴らすと、意を決したように見上げた。
「マリオンのイジワル・・・最愛の妻をからかって面白い?」
うっすら潤んだ瞳で睨みつけるエルメの顔は、耳まで真っ赤に染まっている。
「仕方ないだろ。私の妻が可愛いいのが悪いんだ」
目を細めるマリオンの何とも理不尽な言い訳にエルメが「やっぱりイジワル・・」と不満げに声を漏らすと、マリオンから全く反省の色のないセリフが返ってきたのだった。
「クックッ、君に怒られるのは本望だ」
◇◇◇◇◇
「いいですね?殿下とのダンスの前にこれを飲んでくださいね」
「ええ、分かったわ」
「前ですよ。でないと、意味がありませんから」
「大丈夫よ。ちゃんと分かってる。この日のためにみんなに協力してもらったんだから」
「母上、僕もついてます!大船に乗ったつもりでいてださい」
今日は舞踏会当日。
エルメとアリスそしてリオルの三人が人目を避けてコソコソと話している理由。それは今日、決行される計画の最終段階の打ち合わせのためだ。
この日のために、エルメは息子まで巻き込んで、マリオンに茶番を披露してきたのだ。
「もちろんそのつもりよ。リオルは、やっぱり頼もしいわね。私がどれだけ助けられたか・・・本当に貴方に協力してもらって、良かったと思ってるのよ」
そうエルメが褒め言葉を送り、目を細めて息子を見つめると、当のリオルは瞳をキラキラさせた。年齢の割にしっかりしているリオルだが、その姿はやはり八歳の子供だ。
「あ~!リオル様、羨ましいです!エルメ様!私の船も大船ですか?」
「もちろんアリスもね。ここまでくると、もう私たちは運命共同体よね」
エルメがアリスの手を握ると、彼女は頬を染めた。そして、その横でウズウズしているリオル。その姿は、左右にブンブン振る尻尾とパタパタと動く耳を持つ犬のようだ。
「母上、僕も共同体ですか?」
その問いかけを「当たり前じゃない!」と肯定したエルメの手には、アリスから渡された小さな包み紙が握られていた。
21
あなたにおすすめの小説
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる