想い出はいつも

第一章 出逢いはいつも突然に

４

　ガタンゴトン……
　　　ガタンゴトン……
　朝はどうにか無事にコンテスト会場へ着き……
　実は時間ぎりぎりだったりした。
　内心ヒヤリとしたことは言うまでもない。
　で。
　そんなこんなで、英語スピーチコンテストも無事終わることが出来、帰りの電車の中。
　三人の女性に囲まれながら、一人無口な少年。
　それなん結城隆博。
　俺自身である。
　コンテストの緊張からくる疲れももちろんあるが、それ以上に今もまた、緊張は抜けきらない。
　それもそのはず。
　俺のすぐ隣りに座っているのは、憧れの片桐先輩なのだから。
　それから一時間。
　大した会話もなく、電車はゆっくりと帰りの駅へと向かっていた。

　改札口を出て、さて帰ろうという時。
「ねぇ、みんな時間ある？」
　ふいに、片桐先輩が声をかけた。
「あ、大丈夫ですけど……」
「なぁに？」
　いかにも疑問の残る解答をする三人。
「ケーキ食べに行かない？今、駅ビルで食べ放題やってるんだけど……」
「そうだね。打ち上げのつもりで行こっか！」
　紺野先輩も乗り気だ。
　後藤先輩も頷いている。
「それじゃぁ」
　頷くしかなかったけれど……。
　制服のままっていうのはちょっと……。
　日曜日だし。
　人いっぱいだよ。
　―――……。
　気がつくと、目の前にケーキと紅茶があった。
「さぁ―。食べよ食べよ」
　そう言って、笑顔でパクパク食べ始める三人。
　女の人って……凄い！

　はてさて。
　英語スピーチコンテストの結果は……。
　内容わからないで喋ってるんだもの。
　言葉の一つ一つに説得力があるわけもなく。
　当たり前と言えば当たり前だが、入賞することは出来なかった。
　けれど、うちの高校は四人中二人が入賞した。
　学校側としては、上々の出来だろう。
　一人は片桐先輩。
　さすがだね！
　そして、もう一人。
　コンピュータ部の紺野先輩。
　とりあえず、泣き虫でいい人。
　それ以外のことは、あまり知らない。
　練習の時、先生にいろいろ言われて落ち込んでることもあったし。
　階段の陰で泣いていることも、しぱしぱあった。
　そういった努力が実を結んだのであろう。
　話しによると、紺野先輩、片桐先輩の二人とも、昨年も出場したんだって。
　残念な結果に終わったらしいのだけれど……。
　その壁を乗り越えたんだな。
　二人とも。
　表彰式が終わった後。
　慰められちゃった。
　二人に……。
　やっぱ参加して良かった！
　こんないい先輩達に出逢えたんだもの。
　
　そしてまた。
　何となく過ぎようとしていた高校生活が、色づき始める、その第一の出来事だった。