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君は
第1話
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ずっと考えていた。
僕がここにいる意味って何だろうって。
ずっと考えていた。
僕は今まで何かを成し遂げてこれたのだろうかって。
でも、きっと、それは誰もが考えていることで…
でも、きっと、それは誰にも分からないことで…
これから僕、近藤勇太の、恋のお話を綴っていこうと思う。
中学二年の春、僕のクラスに転校生がやってきた。
「大崎美香です。よろしくお願いします。」
開いた窓から吹き込む風に黒く長い髪をなびかせ、彼女はそう言った。
その日の昼休みには、彼女の周りにはたくさんの人が集まるようになっていた。
理由はきっと単純。
彼女はとても綺麗だった。
中学二年生の彼女を、綺麗と表現するのは少しおかしいのかもしれないが、僕はとにかく、綺麗だと、そう思った。
彼女を取り囲む人の中に、僕は入れずにいた。
いや、入らなかった。
これもきっと、理由は単純なんだろう。
僕にはどのみち、何もできない。
話しかけることすらできない。
そんなことを考えてしまう自分が情けなくて、惨めだった。
そう思ってしまった自分が嫌で、僕は教室を出て、屋上に向かった。
結局その日の昼休みは、ずっと屋上にいた。
情けなく惨めな僕の心を癒すように、春の暖かな風が屋上を吹き抜けていった。
一週間後。
彼女の周りにはいまだに、たくさんの人が集まっていた。
僕はまだ、彼女と話すことすらできずにいた。
昼休みには必ず屋上にきていた。
彼女を…彼女の周りに集まる人たちを見ていると、あの情けなく惨めな心を思い出してしまいそうで。
彼女が転校してきた日に咲いていた桜も、今ではほとんど残っていなかった。
一週間の間、散りゆく桜の花びらを眺めていた。
花びらと一緒に、僕が彼女に抱いていた思いも散っていくようだった。
次の日。
いつものように屋上で昼食を食べていた。
登校中にコンビニで買う焼きそばパンとコロッケパン。
空を見ながらいつもこの二つを食べていた。
ギィ…
屋上の扉が開く音がした。
ふと目をやると、そこには、大崎美香が立っていた。
彼女がこちらに気づき少しずつ近づいてくる。
僕の前に立った彼女は、
「いつもその二つだね。体に悪いよ?」
そう言った。
何も答えられなかった。
ここに彼女がいる理由や、僕がいつも食べている物を知っている理由なんてどうでもよかった。
僕はただ、彼女に見惚れてしまっていた。
まだ暖かな春の風に髪をなびかせ、クスリと笑った彼女に。
散っていく桜と共に、忘れそうになっていた気持ち…
僕は彼女に一目惚れしていた。
「近藤くん、昼休みはいつも屋上にいるよね。
私が目で追ってたの、気づいてた?」
そう言う彼女の声で、僕はふと、我に返った。
「どうして?」
そう言うのが精一杯だった。
「近藤くんがいつもその二つのパン買ってるの、私、知ってたんだよ?
あのコンビニ、私も朝、よく行くし。」
そう言いながら、彼女は僕の横に座った。
「だから私、近藤くんと話してみたかったの。
あのコンビニに毎日行くってことは、家も近所だと思うし。」
本気で夢かと思った。
僕が憧れていた、一目惚れした女性が、僕の横に座って、僕に話しかけている。
自分でも、頬が赤くなって行くのが分かった。
「そ、そうなんだ。」
赤くなる頬を隠しながら、僕はそう言った。
「近藤くん。」
僕の名前を口にすると、彼女はスッと立ち上がり、僕の前に立った。
「私と、友達になって。」
その言った彼女の方を向くと、彼女は僕を見て笑っていた。
僕は、また赤くなる頬を隠して、
「うん。」
と、小さく呟いた。
春の風と共にやってきた彼女は、こうして、僕のかけがえのない友達になった。
僕がここにいる意味って何だろうって。
ずっと考えていた。
僕は今まで何かを成し遂げてこれたのだろうかって。
でも、きっと、それは誰もが考えていることで…
でも、きっと、それは誰にも分からないことで…
これから僕、近藤勇太の、恋のお話を綴っていこうと思う。
中学二年の春、僕のクラスに転校生がやってきた。
「大崎美香です。よろしくお願いします。」
開いた窓から吹き込む風に黒く長い髪をなびかせ、彼女はそう言った。
その日の昼休みには、彼女の周りにはたくさんの人が集まるようになっていた。
理由はきっと単純。
彼女はとても綺麗だった。
中学二年生の彼女を、綺麗と表現するのは少しおかしいのかもしれないが、僕はとにかく、綺麗だと、そう思った。
彼女を取り囲む人の中に、僕は入れずにいた。
いや、入らなかった。
これもきっと、理由は単純なんだろう。
僕にはどのみち、何もできない。
話しかけることすらできない。
そんなことを考えてしまう自分が情けなくて、惨めだった。
そう思ってしまった自分が嫌で、僕は教室を出て、屋上に向かった。
結局その日の昼休みは、ずっと屋上にいた。
情けなく惨めな僕の心を癒すように、春の暖かな風が屋上を吹き抜けていった。
一週間後。
彼女の周りにはいまだに、たくさんの人が集まっていた。
僕はまだ、彼女と話すことすらできずにいた。
昼休みには必ず屋上にきていた。
彼女を…彼女の周りに集まる人たちを見ていると、あの情けなく惨めな心を思い出してしまいそうで。
彼女が転校してきた日に咲いていた桜も、今ではほとんど残っていなかった。
一週間の間、散りゆく桜の花びらを眺めていた。
花びらと一緒に、僕が彼女に抱いていた思いも散っていくようだった。
次の日。
いつものように屋上で昼食を食べていた。
登校中にコンビニで買う焼きそばパンとコロッケパン。
空を見ながらいつもこの二つを食べていた。
ギィ…
屋上の扉が開く音がした。
ふと目をやると、そこには、大崎美香が立っていた。
彼女がこちらに気づき少しずつ近づいてくる。
僕の前に立った彼女は、
「いつもその二つだね。体に悪いよ?」
そう言った。
何も答えられなかった。
ここに彼女がいる理由や、僕がいつも食べている物を知っている理由なんてどうでもよかった。
僕はただ、彼女に見惚れてしまっていた。
まだ暖かな春の風に髪をなびかせ、クスリと笑った彼女に。
散っていく桜と共に、忘れそうになっていた気持ち…
僕は彼女に一目惚れしていた。
「近藤くん、昼休みはいつも屋上にいるよね。
私が目で追ってたの、気づいてた?」
そう言う彼女の声で、僕はふと、我に返った。
「どうして?」
そう言うのが精一杯だった。
「近藤くんがいつもその二つのパン買ってるの、私、知ってたんだよ?
あのコンビニ、私も朝、よく行くし。」
そう言いながら、彼女は僕の横に座った。
「だから私、近藤くんと話してみたかったの。
あのコンビニに毎日行くってことは、家も近所だと思うし。」
本気で夢かと思った。
僕が憧れていた、一目惚れした女性が、僕の横に座って、僕に話しかけている。
自分でも、頬が赤くなって行くのが分かった。
「そ、そうなんだ。」
赤くなる頬を隠しながら、僕はそう言った。
「近藤くん。」
僕の名前を口にすると、彼女はスッと立ち上がり、僕の前に立った。
「私と、友達になって。」
その言った彼女の方を向くと、彼女は僕を見て笑っていた。
僕は、また赤くなる頬を隠して、
「うん。」
と、小さく呟いた。
春の風と共にやってきた彼女は、こうして、僕のかけがえのない友達になった。
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