きっとこれは…

ゆーた

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君は

第2話

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四月を過ぎると、季節は瞬く間に流れていった。

一瞬とも思える、一度しかない時間の中で、僕は、どれぐらい彼女と分かり合えたのだろうと、今になって思う。

そして、季節が過ぎるごとに、僕の彼女に対する思いは強くなっていた。




中学三年の始業式の日、僕は彼女に告白した。
一目惚れだったこと。
屋上で話しかけてくれて、心底嬉しかったこと。
彼女に対する思いが日に日に増していたこと。
思いのありったけを彼女に伝えた。

「ごめん。
勇太くんとは付き合えない。」

彼女は頭を下げて僕にそう告げると、僕の前をいつもより速い歩調で去っていった。

放心状態ってこういう感じなんだってその時実感した。
去っていく彼女を見ながら、全く動けなかった。
何も考えられなかった。


その日の帰り道のことは何も覚えていない。
気がつくと家に帰っていた。
家で一人になると、心が痛みだした。
振られたことで、ではない。
彼女が去る前に見せた、いつもより強張った笑顔に、うっすらと涙が浮かんでいたことを思い出したからだ。

僕が告白したことで、彼女を傷つけてしまったのではないか。
そう考えると、自然と涙がこぼれた。




それからの時間は、二年生の頃よりもっと早く過ぎていった。
僕と彼女は三年でも同じクラスだったので、結構気まずい思いをしていた。
それはたぶん、彼女の方もだろう。

結局彼女とは、業務連絡のような会話しかできなかった。
互いが互いを牽制している。
そんな感じだった。


三学期に入り、中学での生活も残すところわずかとなった。
しかし、教室に彼女の姿はなかった。

何日たっても彼女は学校に来なかった。


二月に入ったあたりで、僕は担任の不破先生に呼ばれた。
「少し時間いいか?」
僕が大丈夫です。と告げると、不破先生は僕を生徒指導室へと連れて行った。

「急にすまないな。
近藤に話しておいたほうがいいと思って。」
生徒指導室に入り、五分程経ったところで、不破先生が話し始めた。
「どうしたんですか?」
「近藤は、二年のとき、大崎と仲が良かったよな?」
彼女の名前が出た時、少し驚いた。
「近藤が学校に来なくなった理由なんだが…
彼女は今入院しているんだ。」

何を言っているんだろう。
あの頃の僕はきっと、そう思っただろう。
「脊髄小脳変性症といって、体が動かせなくなる病気なんだ。
春休みの頃から症状は出ていたらしいが、気丈に振る舞っていたんだろう。
大崎からは口止めされていたんだが、一番仲の良さそうに見えた近藤には、伝えておこうと思ってな。」

その後の先生の言葉は何も覚えていない。
僕はその日の帰り道、ただただ泣き続けていた。
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