勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~

時野洋輔

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3巻

3-1

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 プロローグ


「回復薬三本、たしかに受領しました。こちら、納品依頼達成の報酬ほうしゅうになります」

 そう言って、ハロワ職員のキルシェルさんは僕――クルト・ロックハンスに、貨幣かへいの詰まった革袋を渡してくれた。
 中身を確認すると、銀貨が三十枚程入っている。騎士様の中隊長クラスの人の給料二日分くらいだ。市場で売っている素材があればすぐにでも作れる薬なのに、こんなにもらってもいいのだろうか? と不安になる。 

「大丈夫ですよ、クルトくんが作った薬はとっても人気なんだから。お礼状、読んだでしょ?」
「は、はい。ただ、えっと、僕が作った薬の数よりも多くのお礼状が届いているのが気になって」
「あぁ……そ、そう。一本の薬をみんなで使っているのよ」

 キルシェルさんはそう言って笑って、何か誤魔化ごまかすような仕草をした。
 どうしてだろう? キルシェルさんは僕と話すと、結構な割合でこういう仕草をするんだよな。
 ううん、キルシェルさんだけじゃない。僕が働く工房の筆頭冒険者のユーリシアさんも、この町の太守代理のリーゼさんも、それに工房所属の冒険者パーティ「サクラ」のシーナさんやカンスさんやダンゾウさんも。僕と話している時、なんでか妙な間があったり言葉を詰まらせたりする。

「と、とにかく自信を持ってください、クルトくん。ハロハロワークステーション・ヴァルハ支部はクルトくんの工房が頼りなんですから」

 キルシェルさんはさらに誤魔化すように言った。
 ヴァルハというのは、僕が所属する工房の工房主アトリエマイスターであるリクト様が決めたこの辺境町の新たな名前だ。
 名前が変わってから、この町に大きな変化が二つあった。
 まず一つは、町の郊外に転移石が設置されたこと。
 これで今後、王都や他の町に行く時にわざわざ転移石のある隣町サマエラまで行く必要がなくなった。
 それともう一つはこの町になかったハロハロワークステーション――ハロワの支部が誘致ゆうちされ、隣町で受付嬢うけつけじょうをしていたキルシェルさんが支部長として就任したことだ。小さい町のハロワは、就職の斡旋あっせんだけでなく、冒険者ギルドが行っているような物資の調達、魔物退治、そして商人の護衛などの依頼の斡旋も行っている。
 この二つのお陰で、僕はこれまでできなかった王都や他の都市からの仕事の依頼も受けられるようになり、工房主アトリエマイスター代理として多くの仕事をこなせるようになったんだけど……

「自信なんて持てませんよ。僕が仕事に行ってもかなりの確率でキャンセルされてしまうんで。キルシェルさんに申し訳なくて」
「あ……ええと、うん。まぁ……あれは……ね」

 たとえば、ある日、王都にある富豪の家に工房主アトリエマイスター代理として仕事に行った。仕事の内容は、目が見えないというその富豪の奥さんを治療ちりょうするために、薬の素材を集めてきてほしいというものだ。
 僕はユーリシアさんと一緒に、まずはその素材を一つ手に入れた。そして途中経過を報告するために富豪の家に行き――そこで仕事がキャンセルされた。
 十分過ぎる程、というより依頼報酬と同額のキャンセル料を貰って。
 そんなことが多々あった。

「はぁ……やっぱり、僕には工房主アトリエマイスター代理なんて無理だったんですよね」

 僕は小さくため息をついた。

「いえ、それは絶対にないと思いますよ」
「……あはは、お世辞せじでもうれしいです」

 僕はかわいた笑みを浮かべた。
 でも、やっぱり向いていないことは自分でもわかるんだよね。
 なんで、リクト様は僕なんかに工房主アトリエマイスターの代理を任せたんだろうか?
 本当にわからない。


 この物語は、工房主アトリエマイスター代理の少年が、実力がないせいで周囲に迷惑をかける物語だ。


 ……なんてね。こんな僕が主人公の物語なんてあるわけがないや。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 クルトはその後、いくつか仕事の依頼を受けると、気配を消している私、ユーリシアに気付くことなくハロワを去っていった。
 彼を見送ったキルシェルが、盛大なため息をつく。

「お疲れ様」
「ええ、クルトくんが可哀かわいそうで可哀そうで……彼の本当の仕事ぶりを教えてあげたいのに」

 キルシェルは、回復薬を手に取っていとおしそうに見つめた。

「この回復薬だって、とても効果が高いために百倍に薄めても通常の回復薬の倍の効果があるから、世間ではその薄めたものですら工房の秘薬って呼ばれているんですよ。その秘薬を三百本作れると考えれば、今回納品してもらった三本の報酬は、銀貨三十枚どころか、金貨三十枚でも足りないくらいなのに」
「知ってるよ。まぁ、差額はいつも通りクルトの裏口座に振り込んでおいて」
「もう済ませています――あの、ユーリシア女准男爵おんなじゅんだんしゃく様」
「私のことは普通に呼んでくれって言ってるでしょ? クルト同様ね」
「わかりました、ユーリシアさん。クルトくんの秘密、そろそろ話すべきではないでしょうか? この町の騎士様、一帯の領主であるタイコーン辺境伯へんきょうはく様、そしてリーゼロッテ様にファントムの皆さん。クルトくんを守るための準備は整っていると思うのですが」

 あぁ、そうなんだよね。
 実は今、ちょっと危ない状況になっている。
 たとえば、この前の王都での仕事。目の見えない奥さんのために薬となる素材を集めるという、どちらかといえば工房主アトリエマイスターというよりは私の冒険者としての実績じっせきを買われた仕事だった。
 その時、説明を聞いた後クルトが言った。

「あの、痛みが伴う失明ということなので、薬ができるまでの間、目に優しいハーブでお茶をれて飲むといいと思いますよ」

 それでハーブの粉を渡していたのは私も見ていた。
 そして、指定の素材の一つ目を持っていった時、依頼はキャンセルとなった。
 なぜなら、クルトが渡したハーブの効果で、その奥さんの目が治ってしまったからだ。
 本来、私達が集めた素材で薬ができたとしても、目の痛みがなくなるだけで失明が治るわけではなかった。
 だというのにその奥さんは、目の痛みがなくなり、失明が治り、さらには病気になる前の近眼すらもなくなった。今では視力2.0にまで回復しているそうだ。
 素材が不必要になったため依頼はキャンセルされたけれども、通常の依頼達成金は全額渡された。それどころか、工房や仕事を斡旋したハロワに多額の寄付までしてくる始末。
 そんな似たような話がいくつも重なり、工房アトリエもハロワも多額の寄付金が集まった。結果として、この町に念願だった転移石を設置することも可能になった。
 ただ、その依頼主達に口止めはしているものの、人の口に戸は立てられない。徐々にだが、このヴァルハの工房のうわさが流れ始めているのだ。
 幸い、リクトという影武者がいるお陰でクルトにまでその噂は及んでいないが、しかしそれも時間の問題だろう。
 だからこそ、対策を練らないといけないのだけど……


 ×この物語は、工房主アトリエマイスター代理の少年が、実力がないせいで周囲に迷惑をかける物語だ。
 〇この物語は、工房主アトリエマイスターの少年が、事態を把握はあくしていないせいで周囲に迷惑をかける物語だ。



 第1話 ダンジョン攻略


 タイコーン辺境伯領ヴァルハ。かつては辺境町と呼ばれていたこの町の太守代理に、私、リーゼが就任してから何日が過ぎたでしょうか。
 太守代理といっても、太守であるリクト様は、私が作った幻影げんえい(クルト様大人バージョン)なので、実際私が太守のようなものです。
 そんなヴァルハでは早速問題が起きていました。
 最近、南の砂漠さばくの国トルシェンからの避難民が増えてきたのです。なんでも、サンドワームという巨大な魔物が大量に現れ、各地のオアシスを占領していったのだとか。
 国の兵士達も戦っているそうですが、並の戦力では対処できなくなっているとのこと。
 国を捨てて避難した人達の多くはタイコーン辺境伯領の領主町や他の町にも流れたものの、そちらで受け入れられる人数には限りがあるらしく、この町にも増えてきました。
 避難民は今は、町の南西に急ぎ作った仮設の住居に住んでいますが、もともとこの町は魔領の監視かんしと国の防御のために造られたとりでを作り替えたものなので、それほど広くありません。難民を受け入れる人数には限度があります。
 彼らが可哀そうではありますが、クルト様の安全を考慮こうりょすれば、避難民の受け入れはあまりしたくないから、実は現状は都合がいいんですよね。外の仮設住宅の中にも、避難民を装った諜報員ちょうほういんがすでに三名程忍び込んでいるようですし。
 ちなみにそれらには現在、私達の配下の諜報部隊であるファントムが見張りについていて、こちら側に引き込めるようでしたら引き込む予定です。
 私がため息をつくと、扉がノックされて開きました。
 返事をする前に開けるなんて、ノックの意味がないではないですか。この工房でそのような無作法な者は一人しかいません。
 その人物――ユーリさんは扉にもたれかかったまま、手をかざしました。
 それで挨拶あいさつしたつもりでしょうか?

「どうしました、ユーリさん」

 私は再びため息をつき、そう尋ねました。

「ちょっと話したいことがあってね」

 だから、その用事がなにか、私は尋ねたつもりだったのですが。

「待ってくださいね。もうすぐ書類の整理が終わりますから」
「どうしたんだ? なんか忙しそうだな」
「外にいるトルシェンからの避難民の受け皿をどうしようかと考えていたのです」
「ん? 避難民なら辺境伯領の領主町で受け入れているんじゃないのか?」
「あれは一時的な処置です。しかも、町の中に入れているのは子供と体力のないお年寄りが中心で、それ以外の者はいまだに町の外で寝起きをしています。タイコーン辺境伯領の厚意で食料の配給は行っていますが、それもいつまで続くかどうか」

 私はそう説明し、残りの書類に手を付け始めました。
 その間、ユーリさんはソファに座って待ってくれています。
 ここは太守の執務室としてクルト様が改装なさった部屋ですので、クルト様お手製の来客用のソファがあって、ユーリさんが座っているのもそれです。このソファはとても気持ちよく、仕事が忙しい日などは自分の部屋に戻る気力もなくなり、ここで寝てしまうくらいです。
 それから数分で仕事を終えた私は、立ち上がります。

「紅茶を淹れますね」

 クルト様が用意してくださった魔道具は、水を入れるだけでお湯がく優れもので、これのお陰でお茶を淹れるのもとても楽になりました。
 疲れているので、角砂糖を二個入れましょう。
 砂糖は贅沢品ぜいたくひんですが、最近値段が下がり、私の個人の稼ぎでも十分買えるようになりました。北の街道にみついて交易のために行き交う行商人を襲っていたフェンリルが数カ月前に討伐とうばつされたお陰で、北の諸島都市連盟コスキート経由で様々な品が入ってくるようになったからです。

「疲れていると甘い物が染みますね」
「いいのかい? そんなに砂糖ばかり入れたら太るよ?」
「そういうユーリさんこそ、糖分ばかりっているようですけど? 脳細胞をやすのだとか言って」
「し、仕方ないだろ。クルトと一緒にいると脳が疲れるん――アチッ」

 照れ隠しで紅茶を飲んだユーリさんでしたが、舌を火傷やけどしたようですね。
 慌てて飲むからいけないんです。

「それで、話とはなんですか? ユーリさん、文字を読むと頭が痛くなるとか言って、書類いっぱいのこの部屋には顔を出さなかったじゃないですか」
「文字を読むと頭が痛くなるなんて言ってないし、そんなキャラ設定を勝手につけるな。これでも読書家だよ。毎日、寝る前に読むとぐっすり寝られるからね」
「……はぁ……で、話はなんですか?」

 私は耳と一緒に、ユーリさんと同じてつまないようにゆっくりと紅茶を飲もうとカップを傾けました。

「そろそろクルトに全部話さないか」
「えっ!? アッ――つぃっ!」

 カップが私のひざの上に落ちました。クルト様が粘土ねんどから作ってくださったティーカップが割れなかったのはいいのですが、紅茶の中身が私の膝の上にこぼれてしまい、思わずカップをつかんで立ち上がります。
 はぁ……このスカート、染みができやすいので注意していたんですが……もうこれは使えませんね。クルト様の前で染みの残ったスカートを穿くなんて、はしたない真似まねはできません。
 って、そうではありませんっ!

「え? クルト様に全部話す?」

『全部』というのはどこまででしょうか?
 クルト様の能力適性は戦闘能力以外全て測定不能のSSSランクであるということまででしょうか? それとも、リクト様の正体は私が作った幻影であるということまで?
 まさか、私がこの国の第三王女であることまで話せとおっしゃるのでしょうか?

「だって、そうだろ? この町の騎士はもうクルトの味方。実質リーゼが太守をしている。ハロワもクルトの秘密を隠してくれているし、タイコーン辺境伯という新しいうしだてもできて、工房主アトリエマイスター代理という実績もできた。それにクルト本人だって名誉士爵めいよししゃくだ。というより、クルトにはそろそろ自分の実力を正確に把握して、手加減というものを覚えて欲しい。外での仕事をする時に誤魔化すのが大変でね」

 ユーリさんが頭をいて、面倒そうに言いました。
 そうですね、クルト様の能力については、すでにこの町に住む人達も勘付き始めています。そのたびに、ファントムに命じ、使える手段を全て行使し、口封じ……ではありません、口止めをしてきました。
 ただ、ファントムからもそろそろ限界ではないかという話が上がっています。
 たしかに、もう潮時しおどきなのかもしれませんね。

「……そそそそそそそ、そうですね」

 私は震える手でカップを持ち、口に運びます。
 しかし、カップの中はさっきこぼしてしまったので空でした。

「不安かい?」

 ユーリさんが、私にティーポットを差し出して尋ねました。
 私はカップを受け皿にせてうなずきました。

「い、いえ。そもそもこうして私が太守の仕事をしているのも、タイコーン辺境伯を味方につけたのも、クルト様に爵位を与える便宜べんぎを図らせたのも、全てはクルト様の秘密を明かす準備をするため……するためですが」
「するためですが?」

 ユーリさんが紅茶を注ぎながら鸚鵡返おうむがえしします。

「き……」
「き?」
「きらわれない?」

 私は震える声でユーリさんにそう尋ねた。

「え?」
「だ、だって、クルト様のためにしている行為だけど、でもそれはクルト様が望んだことじゃないし、私達がクルト様をだましていたことには変わりないし、も、もしクルト様にきらわれたら私……もう死ぬしかありません。想像するだけで恐ろしいです。もう体の穴という穴から今飲んだばかりの紅茶が出そうです」
「わぁぁぁっ、落ち着けっ! お前はまだ紅茶を飲んでいないっ! 飲んでないものを出せるわけないだろ、出るとしたら別のもんだから出すんじゃない。ったく、いつも冷静で強気なお前はどこにいったんだ。大丈夫だ、クルトがそんなことで人を嫌うわけないじゃないか」

 ユーリさんが一気にまくてます。

「本当に?」
「目をうるうるさせて聞くな。本当だ。クルトを最後まで支えられるのはお前いないんだ。しゃきっとしろ」
「……ユーリさん」

 私は指で涙をぬぐい、ユーリさんの手を取りました。
 今まで以上にユーリさんのことが好きになりました。

「ありがとうございます、ユーリさん。今まで隠れ巨乳えぐれろなんて毎晩祈っていた自分が恥ずかしいです。藁人形わらにんぎょう五寸釘ごすんくぎも、明日の燃えるゴミの日に捨ててしまいます」
「リーゼ、それ祈りじゃなくて呪いだからな……はぁ、本当に頼んだよ。あと、五寸釘は燃えないゴミだからな」

 ユーリさんはそう言って微笑ほほえみました。

「それで、どうやって伝えるんだい? あいつの勘違いは筋金入りだからね。言葉で言ってもわからないと思うんだが」
「そうですわね、クルト様にはこれまで以上に大きなことをしていただいて、本来の仕事との差をわかっていただくのが一番なのですが――」

 と、そこで、テーブルの上の資料を見て、名案がひらめきました。
 そうです、それがいいです。

「クルト様に、町を一つ作っていただきましょう!」


「僕が一人で町を作るんですか?」
 私は早速、厨房ちゅうぼうで夕食を作っているクルト様に町作りの話をしました。
 このヴァルハと辺境町は、普通に街道を進もうとすると馬車で二日はかかる距離があります。高速馬車を使うならその半分の時間で行けますが、しかしそれでも強行軍。間に宿場町の一つでもあればと常々思っていました。
 開拓町として人員を募集しようと考えましたが、それだと村として完成するのに数年はかかってしまいます。
 幸い、トルシェンの難民が多く発生している今、その受け皿となる建物や施設さえできれば町として機能するのにも時間があまりかからないと思ったわけです。もちろん、タイコーン辺境伯には事後承諾を取るつもりです。
 普通の人間ならば、「僕一人でできるわけないですよ」と言ったり、それこそ「リーゼさんらしくない冗談ですね」と最初から真に受けなかったりするものですけれど、ここはやはりクルト様です。

「結構時間がかかっちゃいますけど、大丈夫ですか?」

 と、話を受ける方向で尋ねてきました。作れるんですね、当然。
 さすがはクルト様です。
 首を傾げる姿に、ピンクのエプロンがとても似合います。今すぐおよめさんにして欲しいくらいです。クルト様が婿入むこいりしてくるのでもいいですから!
 いっそクルト様がお嫁さんになってくれても……って、話がずれちゃいましたね。

「どのくらいかかりますか?」
「仮設でよければ八日程、この町と同じくらいの町にしようと思えばその五倍――一カ月以上かかっちゃいますね」

 普通ならば信じられない見積もりですね。八日で仮設の町を作るなんて、どれだけ突貫とっかん工事のできそこないの町ができるのかと心配になるものですが……クルト様が作れば仮設でも立派な町になりそうです。

「難民を受け入れるための町ですから、仮設でも十分です。早い方がいいので」

 八日で町を作れるのであれば、いろいろと計画を進められそうです。
 そう思っていると、クルト様が何かに気付いたような表情になりました。

「それでしたら、このあたりではあまり見ない方法ですけど、明日にでも町を完成させる方法がありますよ」
「――え?」

 さすがに私も混乱しました。
 一夜で? しかも、今の話の雰囲気からすると、仮設ではなく完全な町を?
 この工房を作るのにも三日くらいかかっていた気がするのですが。
 さすがにそれは不可能なのではないでしょうか?

「いったい、どのように町を作るのですか?」
「ダンジョンコアを作ってダンジョンにするんです」
「……はい?」

 ダンジョンコアヲツクッテ、ダンジョンニスル。
 はて? クルト様は何をおっしゃっているのでしょうか?
 意味がわかりません。
 そもそも、ダンジョンというのは、魔物の発生源であると言われる場所です。ダンジョンコアは文字通りダンジョンのかくで、それを破壊すればダンジョンとしての機能が失われ、魔物が発生しなくなります。

「リーゼさん、このあたりに今は機能していないダンジョンってありませんか?」
「え? ええ、たしか北西のダンジョンでは、すでにコアを破壊しています。魔領に近いので、ダンジョンの魔物を魔族に利用されては困るからと、先々代の国王陛下……私のひい祖父おじいさまが――」
「え? リーゼさんの曾祖父さん?」
「先々代の国王陛下が破壊したと、私の曾祖父様が教えてくれたんです」

 危ないところでした、クルト様の発言に呆気あっけにとられ、つい私の曾祖父が先々代の国王であることを暴露ばくろしてしまうところでした。そんなことがばれたら、私がこの国の第三王女であることもばれてしまうではありませんか。
 まぁ、クルト様にご自身の実力を把握していただく際に、私の正体も一緒に話すつもりなのですが。

「では、夕食の後片付けが終わったら、今夜にでもちょっと行ってきますね」
「あ、待ってください。廃棄されたダンジョンでも魔物はいますから、ユーリさんを連れていったほうがいいですよ。私から伝えておきますから」
「はい、ありがとうございます」

 そう言ってクルト様が頭を下げたので、私は厨房を出ました。
 あれ? ところで話を聞くことができませんでしたが、なんで町を作るのにダンジョンを作る必要があるのでしょうか?
 ……さっぱりわかりません。
 まさか、ダンジョンを作って町にするわけはないですよね?
 そんなの危険すぎますからね。


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