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【アニメ化記念】前日譚
ユーリシアは泉の奥で妖精のような美少女と出会った
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「はぁ……ミミコの奴、また厄介な依頼をなすりつけやがって。王家直属冒険者のことを使いぱしりだって考えているんじゃないか?」
私――王家直属冒険者のユーリシアは、第三宮廷魔術師ミミコの命令を受けてユニコーン処理に赴いた。
処理といっても殺すわけではない。
ただ、ユニコーンから角を貰うのが目的だ。
ユニコーンは心清らかな乙女に心を許すと、自らの角にこもった魔力を新たな角にして与える。そうすると、ユニコーンは失った魔力を蓄えるため、森の奥に数十年もの間身を隠すことになる。
害獣として処理されるべきという意見もあるが、ユニコーンが持つ浄化の能力は森や泉の水質改善に繋がるので、可能ならば生かしておきたい。
冒険者ギルドにも約定をとりつけ、ユニコーンが森の奥に引っ込めば討伐依頼を取り消すと言ってくれた。
あとは、私が角を貰えばいいだけだ。
しかし、私が乙女役……か。
はぁ、こんな依頼、本当は絶対に受けたくなかったんだけどね。
でも、そろそろ王家直属の冒険者の引退も考えているから纏まったお金が欲しい。
サマエラ市の近くの山の頂上に住んでいる祖母にも土産を持って会いに行きたいしね。
そう思って森の奥の泉で、私は見てしまった。
ユニコーンが誰かに角を授けているところを。
「……一足遅かった……いや、よかったのか」
朝日が泉の水面に乱反射してよく見えないけれど、それでもわかるくらいに可愛い、銀色ショートヘアの女の子がユニコーンから角を授かっている。
これで、ユニコーンは森の奥に篭ることになるだろう。
少し、ユニコーンに認められた少女の顔をちゃんと見たいし、話をしたい気持ちもあったけれど、でも――
私は自分の服を見てため息をついた。
こんなフリフリなドレスを着ているところ、ユニコーンにならともかく他の人に見られたくない。
だから、私が少し遅れてよかった。私が彼女より先にここに来ていたら、この恥ずかしい姿を他人に見られるところだったし、それに、そう! 私が純粋な乙女なわけがないし、きっとユニコーンを怒らせる結果に終わっていたな。
私は一人頷くと、少女に気付かれないように、いそいそと森を後にした。
冒険者ギルドには、討伐依頼を取消すように伝えておかないと……ん?
一瞬、泉の方から嫌な気配がした……なんだ、この気配。
※ ※ ※
僕はユニコーンに殺されたゴブリンを土深く埋葬して町に戻った。
ユニコーンが森の奥にいったことを伝えないといけない。そう思って冒険者ギルドに行ったのだが、
「え? ユニコーンさんの討伐依頼が取り消されたんですか?」
ユニコーン討伐のために人員を集めていたはずのバンダナさんが僕に語ったのは、ユニコーン討伐の依頼取消のお知らせだった。
「そやで。なんや知らんけど、ユニコーンは少女に角を授けて森深くにいったから討伐の必要がなくなったんやって」
「そうなんですか……え? 少女に?」
「そうですわ。クル、あなたにはユニコーンを見張るように言いましたよね。それを、どこの馬の骨ともわからぬ女に奪われるとはどういうことですか!」
マーレフィスさんが僕にそう怒った。
僕は慌てて言う。
「ちょ、ちょっと待ってください。角を貰ったのは少女じゃなくて僕です。ほら!」
僕はそう言って、ユニコーンの角をバンダナさんとマーレフィスさんに見せた。
二人はそのユニコーンの角を見て、顔を合わせる。
「どういうことですか、バンダナ。ユニコーンは無垢な乙女にのみ角を授けるのではなかったのですか?」
「うーん、男好きのユニコーンってのは聞いたことがないんやけどなぁ」
「そうですわ! わかりました、あれはユニコーンではなく、バイコーンであったに違いありません。私に懐かないのも無理ありません。バイコーンは不純を好む魔物ですから」
「そりゃないやろ。角は一本やったし、色も白かったやろ」
バイコーンというのは、角が二本生えている黒い馬の姿の魔物だ。
僕が見た馬は白かったし、角も一本だったので、やっぱりバイコーンじゃないと思う。
自分が不純である……なんて思いたくないし。
「ちょっと待ってください! クルが角を貰ったお陰でユニコーンが森の奥に去ったというのなら、今回のユニコーン討伐依頼、取消ではなくクルの――いいえ、クルにユニコーンの見張りを命じた私が達成したと言えなくもないですわ! 私、交渉してきます!」
マーレフィスさんはそう言うと、僕のユニコーンの角を持って、受付に行った。
「あはは、金に汚い修道女様やな。そりゃユニコーンに嫌われるわ」
「そうですか? お金は大切だし、マーレフィスさんのお陰でユニコーンさんが討伐されなくて済んだのなら、いいことだと思いますよ?」
「そこはクルの手柄とちゃうん?」
「僕はただユニコーンさんに命を救われただけで、なにもしていませんよ」
僕は笑ってそう言うと、
「そういうところが、ユニコーンに愛される理由かもしれんな」
とほほ笑むように言った。
え? それって僕が男らしくないってことなのかな。
うぅ、そう言われると男としての自信がなくなってくるよ。
その後、マーレフィスさんは無事(?)討伐報酬を手に入れ、早速ワインを飲むために併設された酒場に向かった。
僕は昨日も夜遊びして、昼過ぎに起きてくるであろうゴルノヴァさんのご飯を作るために宿に戻ることにした。
こうして、ユニコーンの角を巡る僕の小さな冒険は終わるかに思えた。
でも、その事件はこれからが本番だった。
私――王家直属冒険者のユーリシアは、第三宮廷魔術師ミミコの命令を受けてユニコーン処理に赴いた。
処理といっても殺すわけではない。
ただ、ユニコーンから角を貰うのが目的だ。
ユニコーンは心清らかな乙女に心を許すと、自らの角にこもった魔力を新たな角にして与える。そうすると、ユニコーンは失った魔力を蓄えるため、森の奥に数十年もの間身を隠すことになる。
害獣として処理されるべきという意見もあるが、ユニコーンが持つ浄化の能力は森や泉の水質改善に繋がるので、可能ならば生かしておきたい。
冒険者ギルドにも約定をとりつけ、ユニコーンが森の奥に引っ込めば討伐依頼を取り消すと言ってくれた。
あとは、私が角を貰えばいいだけだ。
しかし、私が乙女役……か。
はぁ、こんな依頼、本当は絶対に受けたくなかったんだけどね。
でも、そろそろ王家直属の冒険者の引退も考えているから纏まったお金が欲しい。
サマエラ市の近くの山の頂上に住んでいる祖母にも土産を持って会いに行きたいしね。
そう思って森の奥の泉で、私は見てしまった。
ユニコーンが誰かに角を授けているところを。
「……一足遅かった……いや、よかったのか」
朝日が泉の水面に乱反射してよく見えないけれど、それでもわかるくらいに可愛い、銀色ショートヘアの女の子がユニコーンから角を授かっている。
これで、ユニコーンは森の奥に篭ることになるだろう。
少し、ユニコーンに認められた少女の顔をちゃんと見たいし、話をしたい気持ちもあったけれど、でも――
私は自分の服を見てため息をついた。
こんなフリフリなドレスを着ているところ、ユニコーンにならともかく他の人に見られたくない。
だから、私が少し遅れてよかった。私が彼女より先にここに来ていたら、この恥ずかしい姿を他人に見られるところだったし、それに、そう! 私が純粋な乙女なわけがないし、きっとユニコーンを怒らせる結果に終わっていたな。
私は一人頷くと、少女に気付かれないように、いそいそと森を後にした。
冒険者ギルドには、討伐依頼を取消すように伝えておかないと……ん?
一瞬、泉の方から嫌な気配がした……なんだ、この気配。
※ ※ ※
僕はユニコーンに殺されたゴブリンを土深く埋葬して町に戻った。
ユニコーンが森の奥にいったことを伝えないといけない。そう思って冒険者ギルドに行ったのだが、
「え? ユニコーンさんの討伐依頼が取り消されたんですか?」
ユニコーン討伐のために人員を集めていたはずのバンダナさんが僕に語ったのは、ユニコーン討伐の依頼取消のお知らせだった。
「そやで。なんや知らんけど、ユニコーンは少女に角を授けて森深くにいったから討伐の必要がなくなったんやって」
「そうなんですか……え? 少女に?」
「そうですわ。クル、あなたにはユニコーンを見張るように言いましたよね。それを、どこの馬の骨ともわからぬ女に奪われるとはどういうことですか!」
マーレフィスさんが僕にそう怒った。
僕は慌てて言う。
「ちょ、ちょっと待ってください。角を貰ったのは少女じゃなくて僕です。ほら!」
僕はそう言って、ユニコーンの角をバンダナさんとマーレフィスさんに見せた。
二人はそのユニコーンの角を見て、顔を合わせる。
「どういうことですか、バンダナ。ユニコーンは無垢な乙女にのみ角を授けるのではなかったのですか?」
「うーん、男好きのユニコーンってのは聞いたことがないんやけどなぁ」
「そうですわ! わかりました、あれはユニコーンではなく、バイコーンであったに違いありません。私に懐かないのも無理ありません。バイコーンは不純を好む魔物ですから」
「そりゃないやろ。角は一本やったし、色も白かったやろ」
バイコーンというのは、角が二本生えている黒い馬の姿の魔物だ。
僕が見た馬は白かったし、角も一本だったので、やっぱりバイコーンじゃないと思う。
自分が不純である……なんて思いたくないし。
「ちょっと待ってください! クルが角を貰ったお陰でユニコーンが森の奥に去ったというのなら、今回のユニコーン討伐依頼、取消ではなくクルの――いいえ、クルにユニコーンの見張りを命じた私が達成したと言えなくもないですわ! 私、交渉してきます!」
マーレフィスさんはそう言うと、僕のユニコーンの角を持って、受付に行った。
「あはは、金に汚い修道女様やな。そりゃユニコーンに嫌われるわ」
「そうですか? お金は大切だし、マーレフィスさんのお陰でユニコーンさんが討伐されなくて済んだのなら、いいことだと思いますよ?」
「そこはクルの手柄とちゃうん?」
「僕はただユニコーンさんに命を救われただけで、なにもしていませんよ」
僕は笑ってそう言うと、
「そういうところが、ユニコーンに愛される理由かもしれんな」
とほほ笑むように言った。
え? それって僕が男らしくないってことなのかな。
うぅ、そう言われると男としての自信がなくなってくるよ。
その後、マーレフィスさんは無事(?)討伐報酬を手に入れ、早速ワインを飲むために併設された酒場に向かった。
僕は昨日も夜遊びして、昼過ぎに起きてくるであろうゴルノヴァさんのご飯を作るために宿に戻ることにした。
こうして、ユニコーンの角を巡る僕の小さな冒険は終わるかに思えた。
でも、その事件はこれからが本番だった。
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