除夜の鐘を聞きながら

ヤン

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第19話 本音

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 二人で並んで歩いていると、除夜の鐘がどこからか聞こえてきた。今年がもうすぐ終わってしまうことを、それによって実感させられた。

 僕は、先生の腕を軽く引き、

「先生」

 先生は僕の方に向いて、「何ですか?」と訊いた。僕は少しの間先生を見つめてから、

「今年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いします」
「何ですか、急に改まって」

 先生は立ち止まり僕を見つめ返して微笑むと、僕を強く抱き締めた。驚きで固まってしまった。心臓が速く打って、息苦しい感じがした。

「本当はこのままでいたいですけれど、そうもいかないので離れます」

 先生から解放されても、身動き出来ない。そんな僕の様子を見て先生は、

「そんなに嫌でしたか? すみませんでしたね」
「違います。嫌じゃないです」

 つい本音が口からこぼれた。先生は目を見開くと、もう一度僕を抱き締めてきた。

「僕のこと、嫌じゃないですか? でも、君は油利木ゆりきくんが好きでしょう?」
「好きです。今でも和寿かずとしのこと。でも……」

 僕は、その先を言うのをためらった。

「でも、何ですか?」

 先生が静かに問う。僕は、黙って首を振った。先生は、僕の髪を梳いてから、

「言い掛けて、やめないでください。でも、の後は何て言おうとしていましたか?」

 重ねて訊かれ、僕は大きく息を吐き出した後、隠そうとしていた思いを口にした。

「でも、生きている人の中では、先生が一番好きです。意地悪を言って僕をからかう先生も、嫌いになれない。優しくしてくれる先生は、もちろん大好きです。この気持ちが恋愛感情なのか、そうじゃないのか、よくわかりません。でも……」
「君、でも、が好きですね」

 少し不機嫌そうな口調で言う。それでも、僕を離そうとはしない。

「先生……」

 少し顔を上げて、先生を見た。先生は、「すみません」と言った後、僕に口づけた。

 どれくらい、そうしていただろうか。先生が僕から腕を外し、もう一度、「すみません」と言った。僕は首を振って、先生の背中に腕を回した。そうされて、先生がビクッとしたのを感じた。

「僕の方こそ、はっきりしなくてすみません。でも、今の、嫌だったら突き飛ばしてます」
「期待させることを言わないでください」

 先生が、溜息混じりにそう言った。本当にそうだ、と自分でも思う。

「君、僕が誰か他の人を好きになったら、どんな気持ちになりそうですか?」
「はい?」
「焼き餅を焼いてくれますか?」

 真剣な表情で訊く。僕は吹き出してしまい、慌てて口元を両手で覆った。それを見て先生は、眉間に皺を寄せ、

「吉隅くん。笑うところではありません」
「はい。すみません」

 心から反省していた。先生は僕の耳元で、

「今日から先、僕は君に言い寄る人が現れたり、君が他の誰かを好きになったと聞かされたら、焼き餅を焼きますよ。絶対です」

 囁かれて、ドキドキする。

 先生は僕の頭を軽く撫でると、「行きましょう」と言って、歩き出した。
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