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第二章
第三話 初仕事
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開店するとすぐに、二組のゲストが来店した。店長には、なるべくゲストのことは気にしないで弾いて、と言われたが、なかなかそうもいかない。ドアのベルが鳴る度に、手が止まりそうになる。
発表会や試験の時に、人が咳をしたり話していたりするのは、それほど気にならない。そういうものだと、慣れてしまっているのかもしれない。が、ここはまた独特だ。
今までは、人に評価を受ける立場で弾いていたので、聞いてもらわなければいけなかった。が、それをここでやってはいけない。
ゲストは、食事や会話を楽しむ為にここに来ている。それを壊すような演奏をしてはいけない。
静かに、そして、大事な人との時間が、より素敵になるような、そんな演奏。それが、ここで求められているのではないかと、ワタルは、ぼんやり思った。
何を弾いてもいいと言われたが、閉店前の曲だけは決まっている。ショパンの『別れの曲』だ。美しい曲で、ワタルもこの曲が好きだった。
弾き終わる頃に、ドアの鍵が掛けられ、今日の営業は終了した。店長が、笑顔でそばに来ると、「お疲れ様」と、声を掛けてくれる。ワタルも、「お疲れ様でした」と言って、頭を下げた後、更衣室に向かった。私服に着替えながら、大きく息を吐いた。
翌日、食堂で宝生を見かけた。ワタルは駆け寄り、「宝生先生」と呼ぶと、彼は振り向き、
「吉隅くん。昨日はどうでしたか?」
「えっと……、採用になって、早速仕事をしてきました。それで、今までとは勝手が違うことがわかりました」
ワタルの言葉に、宝生は首を傾げた。
「君の言っていることが、よくわからないんですが」
言われてワタルは、昨夜考えていたことを伝えた。宝生は、納得したように頷くと、
「君。一日目で、すぐそんなことがわかって、すごいじゃないですか。で、今日も行くんですか?」
「はい」
「そうですか。その内に、食事しに行きますね」
そう言って、宝生は微笑した。
発表会や試験の時に、人が咳をしたり話していたりするのは、それほど気にならない。そういうものだと、慣れてしまっているのかもしれない。が、ここはまた独特だ。
今までは、人に評価を受ける立場で弾いていたので、聞いてもらわなければいけなかった。が、それをここでやってはいけない。
ゲストは、食事や会話を楽しむ為にここに来ている。それを壊すような演奏をしてはいけない。
静かに、そして、大事な人との時間が、より素敵になるような、そんな演奏。それが、ここで求められているのではないかと、ワタルは、ぼんやり思った。
何を弾いてもいいと言われたが、閉店前の曲だけは決まっている。ショパンの『別れの曲』だ。美しい曲で、ワタルもこの曲が好きだった。
弾き終わる頃に、ドアの鍵が掛けられ、今日の営業は終了した。店長が、笑顔でそばに来ると、「お疲れ様」と、声を掛けてくれる。ワタルも、「お疲れ様でした」と言って、頭を下げた後、更衣室に向かった。私服に着替えながら、大きく息を吐いた。
翌日、食堂で宝生を見かけた。ワタルは駆け寄り、「宝生先生」と呼ぶと、彼は振り向き、
「吉隅くん。昨日はどうでしたか?」
「えっと……、採用になって、早速仕事をしてきました。それで、今までとは勝手が違うことがわかりました」
ワタルの言葉に、宝生は首を傾げた。
「君の言っていることが、よくわからないんですが」
言われてワタルは、昨夜考えていたことを伝えた。宝生は、納得したように頷くと、
「君。一日目で、すぐそんなことがわかって、すごいじゃないですか。で、今日も行くんですか?」
「はい」
「そうですか。その内に、食事しに行きますね」
そう言って、宝生は微笑した。
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