【完】真実の愛

酒酔拳

文字の大きさ
8 / 18

8.ダニエルの婚約者

しおりを挟む
8.ダニエルの元婚約者



その日のうちに、「反乱軍に入りたい」とダニエルに伝えると、彼は私の手を握り、喜び勇んだ。

「これで、反乱軍の未来も明るくなったよ!ありがとう、シャーロット!」

ダニエルの笑顔は、子供のように眩しく輝いている。
心にぐっと入ってくるのを止めることができない。

「部屋が決まるまで、2階の部屋を使っていいから。あと、仲間たちを紹介したいから、反乱軍の決起集会に出てもらってもいいかい?」

「決起集会?」

「そう、もう町の現状はこのまま放っておけない状態だ。せめて、食料と薬を王宮の備蓄庫から開放させないと、町は全滅してしまう。王宮への反乱の日を急がなければいけない。」

ダニエルは真顔になって言った。
確かに、今の状態は荒み過ぎている。早急に手を打たなければいけない状態だ。

「わかった、いつ集会はあるの?」

「大体、その日の夜にやっている。実はこのオルハウスが、建前は酒場だけど、反乱軍の集会所になっているんだ。そして、武器の貯蔵庫にもなっている。詳しくは後で話すね。」

私はこくりと頷くしかできなかった。





その日の夜、20人ほどの人が1階の酒場に集まった。
私は皆に紹介され、拍手喝采を受ける。

「頼りにしてるぜ!」

などと言われたら、悪い気はしなかった。

「シャーロットには、皆に、剣術や銃の訓練と、王宮への戦略を考えてもらう。大切な役割だ。」

「訓練をするのか?」

「ああ、もう時間がないが、まだ銃の打ち方もわからない者もいる。今日集まった者はそれぞれ、10名ほどの反乱軍に共感している市民たちのリーダーになっている。飢えている者や、病にかかっている者もいる。騎兵団に比べると、兵としては弱いだろう。」

「わかった。決起の日は?」

「もう時間がない。こうしている間にも、飢えた人々が、一人、一人と死んでいっている。1か月後を予定している。やるしかないんだ。」

やるしかない、という言葉に力が込められていた。

1か月で銃や剣の扱いを教えるのは大変だろうが、やるしかないのだ。
その日は皆と握手をして、ささやかだがビールを少し飲んだ。

武器がどこにあるのか聞いてみると、

「そうだ、紹介するよ、彼女はサーラ=カマドーラ。この酒場の娘だ。それは表の顔で、裏では武器を密輸入して、反乱軍の決起日に備えてくれている。」

ダニエルはサーラを呼んだ。

「よろしく、シャーロット。」

サーラは笑って握手を求めてきた。

サーラは、ボブカットで笑うとえくぼができる。くりくりとした目が可愛く、愛嬌があった。
可愛らしい人なのに、武器を任せているなんて、人は見かけによらない。

「よろしく、サーラ。」

私はサーラの握手に応じて言った。
サーラは、すぐに地下の武器庫を案内してくれた。
1階のカウンター下に秘密の階段があった。

「こんなところがったなんて、すごいな。」

地下に続く階段を下りながら感嘆する。

「いつ、誰に襲われるかわからないからね。」

サーラはそう言って、地下の灯りをつけた。暗い地下に灯りがつくと、自分の目を疑った。
棚がいくつも連なり、棚には多数の銃や剣などが保管されていた。

「3千はあると思う。これを集めるのに、何年かかったかしら。外国から来ている密輸入組織の情報が入ったら、喜び勇んで買い付けに行ったわ。これでも語学が得意なの。」

サーラは得意そうに羅列されている剣を、1本1本触りながら言った。

「私さ、実はダニエルと婚約していたの。」

愛しそうに剣をさすりながら、サーラは不意に言葉を発した。

「婚約?」

サーラは素敵な女性なので、ダニエルが惹かれてもおかしくなかった。
なぜだろう、胸にちくりと針が刺さったような痛みを感じる。

「私たち、幼馴染なの。ダニエルは両親や妹さんを亡くしたとき、まだ6歳だった。父がそんなダニエルを不憫に思って、2階においてあげたの。私、お兄さんができたみたいで、嬉しくて、毎日遊びに誘ったわ。」

サーラは懐かしそうな目をして話し出す。
私は食い入るように、彼女の話を聞いている。

「でも、ダニエルは24時間働いていて、あまり遊べる時間がなかったんだけど。でも、時々は遊んでもらえて嬉しかった。18歳の時に告白をして、婚約をした。嬉しすぎて、絶叫しちゃったわ。」

「なぜ、婚約解消した?」

私は動悸する鼓動を感じながら、口にした。

「ダニエルは、結婚をしても、まずは反乱軍のことが大切だから、家庭を1番にできないと言われたの。私、我儘なの、彼の1番はすべて私であってほしかったの。考え方が食い違ってしまって、終わってしまったの。」

「そうなのか。」

なぜか安堵感が心を満たしていた。

「でも、まだ、未練があるの。だから、盗らないでね。ダニエルのこと。」

サーラはぺろっと舌をだして、さらりと言った。

「・・・なぜ、私が?」

「さあ、なんとなく、女の感。あなた、ダニエルのタイプだしね。」

サーラはそう言うと、それ以上は私に口を出させずに、

「さあ、話は終わり。戻りましょう。」

と言って、またぱちっと灯りを消し、階段を上っていく。
一方的に話し始め、一方的に話を遮断される。
彼女が我儘と自分のことを言ったのが、わかるようだった。

でも、なぜ私はサーラとダニエルの婚約が解消されたと聞いて、安堵したのだろう。
胸が張り裂けるように、苦しい。
私は、ダニエルに惹かれているのかもしれない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

処理中です...