【完】真実の愛

酒酔拳

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10.王宮からの手紙

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10.王宮からの手紙



ダニエルの足音がしてくるのは、すぐにわかった。
彼の足音は、トタントタン、とサンタクロースがこちらにやって来るような、優しく不思議な世界に連れて行ってくれる音だ。

トントン、と扉を叩く音。

「シャーロット、入っていいかい?」

扉越しに、ダニエルの声がする。私はすぐに、扉を開けた。

「母様が今寝てる。」

「じゃあ、静かに話すね。」

彼の匂いが好きだ。お日様のような、陽差しがたっぷりの匂い。

「王宮から手紙が来たよ。」

「え?」

現実に引き戻される。いつもそうだった、現実というのは過酷な試練のようなもの。

「今、王宮の使いが来て、たまたまいたサーラに渡したみたいだ。すぐに帰って行ったようだ。」

サーラ、と聞くと、胸がちくりと痛みだす。
ダニエルは、サーラのことを今でも未練に思っているのだろうか。
ダニエルとサーラは、時々楽しそうに話している。まるで恋人のように。

私はダニエルから渡された手紙を読んだ。

差出人は、アルフレッドからだった。

 ゛親愛なるシャーロット

王宮は今、ラダトン町からの税が途絶えて、困惑している。
王宮の財政は苦しくなってきている。
市民から税をとらなければ、王宮は枯渇してしまう。
君は、何かを誤解している。ぜひ、誤解を解いて、前のように戻りたい。
今日の夜、使者を送るので、王宮に来てほしい。
                   
                             君のアルフレッド ‘‘


手紙を読んで、アルフレッドの思惑が手に取るようにわかった。
私は最近、ラダトン町だけでなく、周辺の町も視察していた。
騎兵団員が市民を搾取しているのを見つけたら、必ず彼らを討ち返し、追い返していた。
私一人では範囲が広いので、最近は訓練で強くなった者を視察で送っていた。

反乱軍に入り、3週間が経った。
私のことは、あの日、アンドレアやリドニアから聞いているだろう。
騎兵団も反乱軍が脅威に感じられるようになってきたのだ。

「俺は、これは罠だと思う。行かないほうがいい。」

ダニエルは手紙を読むと、きっぱりとした口調で言った。

「わかっている。それは重々承知のこと。だが、敵を知るにはまず、懐に入るのがいい。」

「だけど、王宮に入ったら、敵に囲まれたも同じだ。危険すぎる。俺は反対だ。」

ダニエルが私を心配している。
それがこの上なく嬉しく、天にも昇るような気持ちだった。

「私は王宮を熟知している。アーニャの黒魔術にさえ気をつければ大丈夫。アルバート王がどうされているのかが心配なのだ。」

「王が?」

「ああ、アルバート王は不運にも兄を二人亡くしてしまい、王にならざるおえない状態になったんだ。本当なら、末っ子のアルバート王は、兄の後ろに隠れ、趣味のバードウォッチングをささやかに楽しむ、そういう穏やかな方なんだ。もしも、アルフレッドやアーニャに操作されているなら、反乱軍は、王まで手をかけなくてよいと考えている。それを見極めたいんだ。」

「だが、この状態を招いた、王の責任は大きい。人柄が良いだけでは済まない。」

「わかっている。それも見極めてきたいと思ってる。信じてくれ。」

「シャーロット、今、反乱軍から君がいなくなれば、決起もできなくなる。君を信じるが、くれぐれも気をつけてほしい。」

 ダニエルは私の手を握り、真剣な口調で言った。

 私は真顔で頷いたが、内心は、彼の手が私に触れたところが、火傷しそうに熱く感じられていた。








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