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ダルは作戦通り、昼食の仕込み時間になると、調理人に変装をして、調理場に潜り込み、自家製の睡眠剤を料理に混ぜた。
この日、タンジア王子は、芝居を見に行こうというユーナ姫の誘いを断りきれなかった。夕方になると、タンジア王子は、ユーナ姫と共に、芝居に行く準備をした。その後ろからは、ミネアが2人を護衛している。
タンジア王子とユーナ姫に付き添う侍者の昼食には眠り薬が入れられたが、まだ、眠剤は効いていなかった。
芝居の時間がくると、タンジア王子はユーナ姫を乗せて馬車に乗り、城から出発した。その周りを包囲するように、侍者らの護衛がついてくる。
(ああ、今もミネアは、私とユーナ姫を見ているだろと思うと、いたたまれない。なんて、自分は不甲斐ない!)
タンジア王子は、馬車の中で、憂鬱そうに溜め息をつく。一方、ユーナ姫は、目を輝かせて、タンジア王子を見つめていた。
(浮かない王子。きっと、カリューシャのことやサーリャの地で、頭を痛めているのだわ。私が、元気を出させてあげないと)
ユーナ姫は、愛しそうにタンジア王子の肩に頭をすり寄せる。タンジア王子は、ユーナ姫が腕を握る手を振りほどきたい衝動をなんとかおさめた。
ミネアは、2人が仲良く馬車に乗って出る姿を、複雑な気持ちで追っていた。
(ああ、タンジア王子に、ユーナ姫を裏切るなと言ったけど、なんなのかしら、このもやもやさした気持ちは。。)
ミネアは、胸に棘が刺さったような痛みを感じていた。そして、黒いもやが棘から生じているのをひしひしと実感していた。
(なんで、こんなに、ユーナ姫を疎ましく思ってしまうのかしら。ああ、これは、もしかしたら、嫉妬なの。。?)
ミネアは、自分の身に起こっていることが、信じられず、動揺が全身に駆けずりわっていた。
(とにかく、今はお父さんもいないのだから、しっかりと見張らないと。こんな外出の日をカリューシャが見逃すはずがないわ。)
ミネアは、どこかに潜むカリューシャの存在を思い出し、自ら手で顔を打ち、気を引き締める。
ミネアの予想通り、カリューシャはタンジア王子を乗せた馬車を家々の屋根を飛び越え、追っていた。
護衛の侍者らに、眠り薬が聞いてきたのは、タンジア王子とユーナ姫が芝居を見終わった帰り道であった。
ちょうど、家々が途絶え、裏通りに入っていく道で、護衛の集団は、欠伸をしながら道路に座り込み、眠りについてしまう。
(なに?!)
すぐに異変に気づいたミネアは、すぐに馬車の側に寄り、タンジア王子とユーナ姫に声をかける。
御者にも眠り薬が入れられており、運転席でいびきをかいて眠ってしまう。急に馬車が止まったことに、タンジア王子も異変に気づいた。
「王子、大丈夫ですか?」
ミネアは、馬車の扉を開けて、タンジア王子と、怯えているユーナ姫を確認する。
(良かった。まだ2人はご無事だ)
「ああ、私たちは、大丈夫だ。一体、何事だ?!」
タンジア王子は、道端に大の字をして眠っている何人もの侍者を見て、震える声で発する。
「おそらく、ダルに眠り薬を入れられたのでしょう。それにしても、こんな人気のないところを選び、計算して眠剤の効果を狙うとは。。」
ミネアは、ダルという薬使いに感服する。
(私は、基本的に城の食事はとらない。それが幸とでた。用心しておいて、良かった)
ミネアは、辺りを見渡した。夜の闇に、緊張感が走った。路地裏から、ひっそりとした影がやって来るのを察知する。
(カリューシャだ!)
ミネアは、カリューシャの影を睨み、タンジア王子とユーナ姫を守るようにして前に出た。
この日、タンジア王子は、芝居を見に行こうというユーナ姫の誘いを断りきれなかった。夕方になると、タンジア王子は、ユーナ姫と共に、芝居に行く準備をした。その後ろからは、ミネアが2人を護衛している。
タンジア王子とユーナ姫に付き添う侍者の昼食には眠り薬が入れられたが、まだ、眠剤は効いていなかった。
芝居の時間がくると、タンジア王子はユーナ姫を乗せて馬車に乗り、城から出発した。その周りを包囲するように、侍者らの護衛がついてくる。
(ああ、今もミネアは、私とユーナ姫を見ているだろと思うと、いたたまれない。なんて、自分は不甲斐ない!)
タンジア王子は、馬車の中で、憂鬱そうに溜め息をつく。一方、ユーナ姫は、目を輝かせて、タンジア王子を見つめていた。
(浮かない王子。きっと、カリューシャのことやサーリャの地で、頭を痛めているのだわ。私が、元気を出させてあげないと)
ユーナ姫は、愛しそうにタンジア王子の肩に頭をすり寄せる。タンジア王子は、ユーナ姫が腕を握る手を振りほどきたい衝動をなんとかおさめた。
ミネアは、2人が仲良く馬車に乗って出る姿を、複雑な気持ちで追っていた。
(ああ、タンジア王子に、ユーナ姫を裏切るなと言ったけど、なんなのかしら、このもやもやさした気持ちは。。)
ミネアは、胸に棘が刺さったような痛みを感じていた。そして、黒いもやが棘から生じているのをひしひしと実感していた。
(なんで、こんなに、ユーナ姫を疎ましく思ってしまうのかしら。ああ、これは、もしかしたら、嫉妬なの。。?)
ミネアは、自分の身に起こっていることが、信じられず、動揺が全身に駆けずりわっていた。
(とにかく、今はお父さんもいないのだから、しっかりと見張らないと。こんな外出の日をカリューシャが見逃すはずがないわ。)
ミネアは、どこかに潜むカリューシャの存在を思い出し、自ら手で顔を打ち、気を引き締める。
ミネアの予想通り、カリューシャはタンジア王子を乗せた馬車を家々の屋根を飛び越え、追っていた。
護衛の侍者らに、眠り薬が聞いてきたのは、タンジア王子とユーナ姫が芝居を見終わった帰り道であった。
ちょうど、家々が途絶え、裏通りに入っていく道で、護衛の集団は、欠伸をしながら道路に座り込み、眠りについてしまう。
(なに?!)
すぐに異変に気づいたミネアは、すぐに馬車の側に寄り、タンジア王子とユーナ姫に声をかける。
御者にも眠り薬が入れられており、運転席でいびきをかいて眠ってしまう。急に馬車が止まったことに、タンジア王子も異変に気づいた。
「王子、大丈夫ですか?」
ミネアは、馬車の扉を開けて、タンジア王子と、怯えているユーナ姫を確認する。
(良かった。まだ2人はご無事だ)
「ああ、私たちは、大丈夫だ。一体、何事だ?!」
タンジア王子は、道端に大の字をして眠っている何人もの侍者を見て、震える声で発する。
「おそらく、ダルに眠り薬を入れられたのでしょう。それにしても、こんな人気のないところを選び、計算して眠剤の効果を狙うとは。。」
ミネアは、ダルという薬使いに感服する。
(私は、基本的に城の食事はとらない。それが幸とでた。用心しておいて、良かった)
ミネアは、辺りを見渡した。夜の闇に、緊張感が走った。路地裏から、ひっそりとした影がやって来るのを察知する。
(カリューシャだ!)
ミネアは、カリューシャの影を睨み、タンジア王子とユーナ姫を守るようにして前に出た。
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