【完結】捨てられた姫の行方 〜名高い剣士に育てられ〜

酒酔拳

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 ミネアは、ごくりと唾を飲み込むと、カルデア王の方へ顔を向けた。

「カルデア王は、サーリャの地を得るために母に近づいた。そして、最後は見殺しにした」

 ミネアは静かに口を開いた。怒りが頂点を越えたからか、不思議と冷静に王を見ることができた。

「知ってしまったか。サーリャの地は、石油もでた。今や、サーリャを手に入れれば、世界が手に入る。それほど、価値のある場所なのだ」

「そのために、母を、、!許せない」

 ミネアは、カルデア王を睨んで言う。

「そなたは、私の娘だ。子は、親に従うものだ。サーリャを手に入れ、共に世界を手にしよう。サリーンのときには、できなかったことだ」

 カルデア王は冷酷に笑い、ミネアに言う。

「ふざけるな!私の父は、ランビーノ!気高い剣士だ!!」

 ミネアが気持ちを高ぶらせて叫んだときに、ランビーノが天井から、カルデア王の前に立ち塞がるように下り立った。

「お父さん!」

(ずっとついていてくれてたんだ、、)

 ミネアは、一瞬、気を緩めた。ランビーノがいてくれることに、何よりも、心強く感じられた。

「すまん。カリューシャを追っていた。タンジア王子は、西の塔の地下牢にいるはずだ。カリューシャに何をされているのかわからない。信用ならない奴だ。ミネア、ここは俺が相手をするから、タンジア王子のほうへ!」

 ランビーノは、腰から剣を抜いて両手に構えた。目には怒りと哀れみの色が映されていた。

「何を!お前がランビーノか。目の上のたんこぶとはこのことだ。私の剣の腕も、満更ではないぞ」

 カルデア王も、かつては剣の腕を磨き、豪剣の剣士として名を刻んでいた。

「面白い、どちらが上か。勝負だ!」

 ランビーノは間合いをとり、カルデア王に剣を仕掛けた。

 カルデア王も剣を抜き、ランビーノの稲妻の一太刀を受けた。両者互角であった。

「行け!ミネア!」

 ランビーノは一太刀も気を抜かず、カルデア王に切り掛かる。ランビーノの言葉に押され、扉を開けて、元来た道へと走り出した。

(お父さん、ありがとう!)

 ミネアは、今、自分の父は最高の剣士、ランビーノであると確認する。

(お父さんは、気高き剣士。必ず勝つ!私は、タンジア王子を助けなければ!!)

 ミネアは走りながら、移動呪文を唱え、一番はじめに迎えられた部屋へ瞬間移動する。

(西の塔の地下か。行ったことがない。。走るしかない)
 
 ミネアは、隼の呪文を唱え、風の如き速さで西の塔へと向かう。西の塔までは場所がわかりやすかったが、地下牢への階段がわからず、執事を剣で脅し、地下牢の場所を聞き出した。

(早く!早く!!タンジア王子、生きていて!)

 ミネアは、今までにない速さで地下牢への道を走った。階段を下りて、地下道を走り抜けると、いくつもの柵で隔てられた、牢に行き着いた。

 入り組んだ数々の牢には、囚人が捕らわれている。奥へと進んで行くと、瀕死のタンジア王子を囲み、カリューシャ、それに王妃と思われる着飾った女がいた。

「タンジア王子!」

 タンジア王子は、脇腹に包帯を何重にも巻き、顔色不良で真っ青だった。

 ミネアは、タンジア王子の元へと、瞬間移動を唱える。

「大丈夫ですか?」

 ミネアは、タンジア王子を抱き寄せて、声を上げた。タンジア王子は、虫の息だったが、なんとか呼吸はできていた。

「ミ、ミネア、、、」

 タンジア王子の意識はかろうじてあるようだった。ミネアは、タンジア王子の手をとり抱きしめて、カリューシャと王妃の方へ向いた。

(生きてる。良かった!)

「あらあら、誰かと思ったら。馬鹿な女、サリーンの娘じゃない。生きていたとはね。。ここで、お前も王子も殺してしまえば、一石二鳥。早く、母親のところへ行けば良い。」

 王妃は、突然ミネアが現れても、冷静であった。冷たい微笑が消えると、冷酷無惨な雰囲気が能面に漂っていた。

「お前が、母を殺した王妃か!」

「おやおや、ミネア様。解毒剤を飲ませるかわりに、カルデア王国につくと約束したではありませんか?」

 カリューシャは、ミネアがやって来たことに動揺していた。

「何を!こんな牢に閉じこめ、解毒剤など飲ますつもりはなかったのだろう!」

「そんなことは、、。これからこの薬を飲ませるところでした」

 カリューシャは、腰袋から瓶を取り出して、ミネアに見せた。

「嘘だ!それは、ただの毒だ!本当は、お前は、解毒剤など持っていない」

 ミネアは、確信に満ちて言った。ミネアの言葉が当たっていたのか、カリューシャは怯んだ目を見せた。

「そ、そんなこと。ミネア様は、私たちカルデア王国に、抵抗するつもりですか?」

 カリューシャは無表情に戻り、言った。

「私の父は、ランビーノ!私の故郷はアリシアの国。私は、タンジア王子とアリシアへ戻る。それが、答えだ!」

 ミネアは、タンジア王子を引き離し、守るように腰から剣を抜いた。

「良いでしょう。それでは、死を!」

「そうよ、カリューシャ!2人とも殺しておしまい!!」

 王妃は忌々しそうに、カリューシャに命令を下した。カリューシャは、剣を抜いて、間合いを取った。

(なんだ、この感じは。。あの時と違う気をミネア様から感じる。もしや、呪術を!?)

 カリューシャは、ミネアの身体から発する光のオーラを感じ、恐怖感を覚えた。

 ミネアは、カリューシャに斬りかかりながら、

「▲βα▲」

 と、唱えた。ミネアが唱えた呪文は、火の最強呪文であった。たちまち、牢の中が火柱に包まれ、最も熱い火が王妃とカリューシャを包んだ。

「ぎゃああああ!」

 王妃は、熱さに苦しさで歪んだ表情を浮かべ、泣き叫んだ。

「助けて!助けて!」

 カリューシャは、剣で風を巻き起こし、王妃と自分の炎を消そうとするが、ミネアの呪力は、カリューシャの力を上回っていた。炎は消えず、かろうじて火の勢いが弱まっただけであった。

 ミネアは、その隙に、カリューシャの腹を斬り、背中を斬った。カリューシャから血が吹き出した。

「ぐふ。いつの間に、呪文を、、。サーリャの地に、行ったのですね、、」

 カリューシャは意識朦朧となっていく。炎とミネアの姿が霞んでいく。

「いやあああ。た、助けて」

 王妃は、地獄のような叫びを出して、ミネアの足に絡みつく。

「お願い、お願い」

 ミネアは、苦渋の表情で、王妃を見下ろす。王妃は、苦しみで顔を歪ませながら、火に呑み込まれていく。

「私は、あなたたちを、許せない」

 ミネアはそう言い放ち、タンジア王子を抱き起こした。炎は徐々にミネアとタンジア王子の方へと近づいてくる。ミネアは、バリアの呪文を唱える。

「王子、すぐに解毒の呪文を!」

 ミネアが呪文を唱えようとしたとき、王子の意識が落ちた。

「王子!」

 王子の心臓は止まっていた。

「王子!!!」

(だめ、間に合わなかった!?)

 ミネアは、冷静になって考えた。何とか王子を救いたかった。聖域の呪文を思い出し、もしかしたら、まだ光の力があれば、息を戻すかもしれないと希望をかけた。

(サーリャの地へ!)

 ミネアは、命をかけてタンジア王子を救うため、瞬間移動の呪文を唱えた。

 
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