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儚い
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穏やかな太陽が一カ月のうち20日顔をだす砂の世界で、俺たちはテントで暮らしている。俺たち、というのは俺の家族のことだ。両親に、弟、妹が1人ずつ。家はテントだと紹介すると、ひとところに留まっているのにテント生活かと顔をしかめる人もいる。今の時代のスタンダードは地下に家を作ることだから。
だけど、俺たちは地上に建てたこのテントを気に入っていた。
ぱたぱたと風にあおられる音や、雨がぽつぽつと当たる音。必要なものしか置いていないとこ。俺たちが放牧している牛の様子がすぐ見れること。とにかく大好きだった。
だけど大好きなものがすぐ壊れたりなくなったりするのは人生の摂理だ。ある日……その日は雲一つない、気持ちのいい快晴だった。夕方までは。
夕方から遮光カーテンでも引いたかのようにあたりが暗くなった。日が落ちるまであと一時間はあるのに、風がどんどん強く強く吹き付ける。そして、10年に一度発生するかしないかといわれる大きさの竜巻が発生した。ぶわっと風が舞い上がり、風船が飛んでくかのように、テントが舞い上がる。砂と一緒に遠くに飛んでいくテントはきらきらと光ってとてもきれいで、それを追って残った家具やモウモウとうるさい牛が飛んでいくのが、荘厳なパレードのようだった。離れ離れにならないよう抱きしめあってた俺たちは不幸中の幸いにも無傷だった。この壮大なショーに呆気にとられるばかりで、家も仕事も財産も失ったというのに、泣くという感情を誰一人思い出せなかった。
こうして俺たちは、仮住まいの生活が始まった。仮住まいというか、不法侵入。人が住んでなさそうな家を精査して、中に忍び込む。飯とベッドを拝借し、仮眠をして、また次の家を探す。
最初のうちはホテルを転々としてるようで面白かった。家にはその人のこだわりが出る。
全部真っピンクな独り者の家もあったし、白い壁が落書きで汚れてる大家族の家もあった。
今日仮住まいしたところは息をのむほどだった。大理石の床に陶器のような壁。カレンダーを見る限りあと数日は旅行で不在らしい。薄汚れたテント生活だった俺たちには若干落ち着かなくもあったが、ふかふかのベッドに身を投げて、その日は皆、熟睡してしまった。
俺は気持ちよく寝ていたのに、誰かの悲鳴で目が覚めた。目が覚めた直後はただの大きな声だと、迷惑だなと思い起き上がったが、見るも無残な荒らされた部屋と、弟と妹がいないことに完全に脳が覚醒した。
「なんで、これ……どうしたんだよ」
「攫われたんだ、この家を狙った強盗に。二人ともまだ小さい。攫われてしまった」
生気のない目をした父にとは裏腹に、母親は目をぎらつかせて、わめきながら至るところを探し始めた。扉を全部開けて、棚を倒して隙間をなくし、テーブルの上のものを全部払った。そんなところにいるわけないだろと呟くと、ぽっかり空いた心にその言葉が通って抜けていった。そう、もうどこにもいないんだ。
俺たちは外に出た。誰も一言も発しなかった。そして一歩一歩足を進めて、またあてもなく彷徨う。
大きな鷹が俺たちの上を旋回しながら一声鳴いた。
だけど、俺たちは地上に建てたこのテントを気に入っていた。
ぱたぱたと風にあおられる音や、雨がぽつぽつと当たる音。必要なものしか置いていないとこ。俺たちが放牧している牛の様子がすぐ見れること。とにかく大好きだった。
だけど大好きなものがすぐ壊れたりなくなったりするのは人生の摂理だ。ある日……その日は雲一つない、気持ちのいい快晴だった。夕方までは。
夕方から遮光カーテンでも引いたかのようにあたりが暗くなった。日が落ちるまであと一時間はあるのに、風がどんどん強く強く吹き付ける。そして、10年に一度発生するかしないかといわれる大きさの竜巻が発生した。ぶわっと風が舞い上がり、風船が飛んでくかのように、テントが舞い上がる。砂と一緒に遠くに飛んでいくテントはきらきらと光ってとてもきれいで、それを追って残った家具やモウモウとうるさい牛が飛んでいくのが、荘厳なパレードのようだった。離れ離れにならないよう抱きしめあってた俺たちは不幸中の幸いにも無傷だった。この壮大なショーに呆気にとられるばかりで、家も仕事も財産も失ったというのに、泣くという感情を誰一人思い出せなかった。
こうして俺たちは、仮住まいの生活が始まった。仮住まいというか、不法侵入。人が住んでなさそうな家を精査して、中に忍び込む。飯とベッドを拝借し、仮眠をして、また次の家を探す。
最初のうちはホテルを転々としてるようで面白かった。家にはその人のこだわりが出る。
全部真っピンクな独り者の家もあったし、白い壁が落書きで汚れてる大家族の家もあった。
今日仮住まいしたところは息をのむほどだった。大理石の床に陶器のような壁。カレンダーを見る限りあと数日は旅行で不在らしい。薄汚れたテント生活だった俺たちには若干落ち着かなくもあったが、ふかふかのベッドに身を投げて、その日は皆、熟睡してしまった。
俺は気持ちよく寝ていたのに、誰かの悲鳴で目が覚めた。目が覚めた直後はただの大きな声だと、迷惑だなと思い起き上がったが、見るも無残な荒らされた部屋と、弟と妹がいないことに完全に脳が覚醒した。
「なんで、これ……どうしたんだよ」
「攫われたんだ、この家を狙った強盗に。二人ともまだ小さい。攫われてしまった」
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俺たちは外に出た。誰も一言も発しなかった。そして一歩一歩足を進めて、またあてもなく彷徨う。
大きな鷹が俺たちの上を旋回しながら一声鳴いた。
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