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強い女
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何回も鏡の前でポーズをとる。鏡の中では、最高に美しい私が誕生していた。
私は生まれてからずっと痩せていた。健康診断で見る肥満の文字は最早健康の証だ。とはいっても、メタボの基準を超えることはなかった。去年の春までは。
さすがに自分の腹周りが90㎝オーバーであることは衝撃だった。そこから奮起し、食事制限や有酸素運動に取り組んだ。といっても難しいものではない。基礎代謝をぎりぎり超える程度の食事をとるなら、何を食べても構わない。運動は通勤中の徒歩。1日100回のスクワット。1日10分の腹筋。気が向いたら泳ぎにも出てただろうか。
なんにせよ、何カ月もかかったが、自分の誕生日を迎える前に過去最高に美しい私に出会うことができたのだ。BMIは22。この数字を見て太ってると思う人はいるかもしれないが、そんな囁きなど気にならない。この薄っすらと割れた腹筋や女性らしさを残したハリのある体に、ただ見とれていた。
だがここまで頑張れたのは私だけの力じゃない。的確に食事のカロリーや適切な運動を教えてくれた女医がいたからこそだ。私は結果報告のために颯爽と女医のいる病院へ向かった。
「あら、いらっしゃい。久しぶりね。ますます綺麗になったじゃない」
彼女は扉を開けると同時に外国人のように抱きしめ迎えてくれた。彼女が発する言葉は生気が宿り、目を女優のように輝かせた。肩まで伸びた炭のように黒い髪からは、清潔なシャンプーの香りがした。彼女は私の手を引き診察室に向かう道すがら、私の体重についてヒアリングした。
彼女の診察室は白が協調されており、全体的にぼやけた感じに見える。これまた輪郭がぼやけた椅子に座り、彼女が入れてくれたお茶を啜った。
「本当によく頑張ったわね。今のあなたはとてもきれいよ」
「ありがとう、先生」
「なら今度はBMI18ね。あなたはもっときれいになるわよ。ほら、この写真を見て」
予期していたような、そうでないような。彼女の眼の輝きが一つ上がるごとに私は心からの笑顔を張り付けの笑顔に変えていった。彼女は私の隣に座り、目の前のテーブルに写真をばらまいた。骨と皮だけになった美女だったものを嬉しそうに指さす彼女。
「今度は胃を縛る手術をするわ。大丈夫、胃の手術は簡単よ。食欲も抑えられて、何もしなくても美しく痩せていくわ。胃の手術についてもう一つ資料を持ってくるわね」
彼女が私から背を向けた途端、私は隠し持っていた赤いボタンを押した。怒声のような爆発音と目も眩む光線。彼女の腹を突き破り、建物の一角をも破壊する爆弾のおかげで、彼女は跡形もなく消え去った。私は最初の診療で、お茶のお供にとクッキーを差し入れたことがある。その中に小型爆弾を仕込んでおいたが、彼女はちゃんと食べてくれてたようだ。
清々した胸をなでおろしながら、私は胸を張り歩く。こうなることは何となく予期していた。彼女は金のためにどんどん私にダイエットを進めるだろう。だが私が目指すのは痩せた体ではない。美しい体だ。それを邪魔するものは何人たりとも許さない。
そう。今の私が、一番美しい。
私は生まれてからずっと痩せていた。健康診断で見る肥満の文字は最早健康の証だ。とはいっても、メタボの基準を超えることはなかった。去年の春までは。
さすがに自分の腹周りが90㎝オーバーであることは衝撃だった。そこから奮起し、食事制限や有酸素運動に取り組んだ。といっても難しいものではない。基礎代謝をぎりぎり超える程度の食事をとるなら、何を食べても構わない。運動は通勤中の徒歩。1日100回のスクワット。1日10分の腹筋。気が向いたら泳ぎにも出てただろうか。
なんにせよ、何カ月もかかったが、自分の誕生日を迎える前に過去最高に美しい私に出会うことができたのだ。BMIは22。この数字を見て太ってると思う人はいるかもしれないが、そんな囁きなど気にならない。この薄っすらと割れた腹筋や女性らしさを残したハリのある体に、ただ見とれていた。
だがここまで頑張れたのは私だけの力じゃない。的確に食事のカロリーや適切な運動を教えてくれた女医がいたからこそだ。私は結果報告のために颯爽と女医のいる病院へ向かった。
「あら、いらっしゃい。久しぶりね。ますます綺麗になったじゃない」
彼女は扉を開けると同時に外国人のように抱きしめ迎えてくれた。彼女が発する言葉は生気が宿り、目を女優のように輝かせた。肩まで伸びた炭のように黒い髪からは、清潔なシャンプーの香りがした。彼女は私の手を引き診察室に向かう道すがら、私の体重についてヒアリングした。
彼女の診察室は白が協調されており、全体的にぼやけた感じに見える。これまた輪郭がぼやけた椅子に座り、彼女が入れてくれたお茶を啜った。
「本当によく頑張ったわね。今のあなたはとてもきれいよ」
「ありがとう、先生」
「なら今度はBMI18ね。あなたはもっときれいになるわよ。ほら、この写真を見て」
予期していたような、そうでないような。彼女の眼の輝きが一つ上がるごとに私は心からの笑顔を張り付けの笑顔に変えていった。彼女は私の隣に座り、目の前のテーブルに写真をばらまいた。骨と皮だけになった美女だったものを嬉しそうに指さす彼女。
「今度は胃を縛る手術をするわ。大丈夫、胃の手術は簡単よ。食欲も抑えられて、何もしなくても美しく痩せていくわ。胃の手術についてもう一つ資料を持ってくるわね」
彼女が私から背を向けた途端、私は隠し持っていた赤いボタンを押した。怒声のような爆発音と目も眩む光線。彼女の腹を突き破り、建物の一角をも破壊する爆弾のおかげで、彼女は跡形もなく消え去った。私は最初の診療で、お茶のお供にとクッキーを差し入れたことがある。その中に小型爆弾を仕込んでおいたが、彼女はちゃんと食べてくれてたようだ。
清々した胸をなでおろしながら、私は胸を張り歩く。こうなることは何となく予期していた。彼女は金のためにどんどん私にダイエットを進めるだろう。だが私が目指すのは痩せた体ではない。美しい体だ。それを邪魔するものは何人たりとも許さない。
そう。今の私が、一番美しい。
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