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空っぽな青春
しおりを挟む「修也ー。遅刻しちゃうよー」
俺は姉ちゃんの声で目が覚めた。今日は学生の謳歌である夏休みがちょうど終わった日。つまりは学校の始業式の日だ。
「もう高校生でしょ?ほら、ご飯できてるから」
俺こと日村修也は高校一年生の15歳。普通の進学校に通う普通の高校生。特に顔がいいわけでもないし特別に勉強や運動ができるわけじゃない。得意なことと言っても速読程度だ。両親は共働きなので二つ年上の姉ちゃんが家事をしてくれる。
「あぁーああ……。今日から学校か」
「こんなことになるから早起きの練習していてって言ったのに」
「もうすこし近い学校を選んだらよかったよ」
「何言ってんのよ、紗香と一緒の高校にするって決めたのは修也でしょ?」
バシン!とデコピンを俺の額に決めて姉ちゃんは部屋を出て行った。艶のあるロングの髪にスラリと長い足。凛とした二重に桜色の唇。姉ちゃんは地元でも学校でも有名な美少女だ。恋愛経験がありそうな見た目をして月一で告白を受けるがだいたい断っている人で付き合ったとしてもすぐに別れてしまう。姉ちゃん曰く「ここの家事は私がするって決まりでしょ?」だとか。
羨ましいよ。平凡な顔で生まれた俺は今までの人生で告白する、されると言った行為を経験したことがない。制服に着替えて居間に行くと朝ごはんがテーブルに置かれていた。
「お弁当も置いておくから、ちょっとバレーで集まらないといけないって連絡きたから先行ってくるね」
「あぁー、うん」
姉ちゃんはバレー部でレギュラーだ。背もすこし高めで女子のバレーだともってこいな体型らしい。
朝ごはんはトーストとハムエッグ。料理好きが行き過ぎて姉ちゃんはよくわからない、噛みそうな名前の調味料を使うので毎回味の表現が難しい。
多分今日はバジルソースだな。しょっぱいトーストだった。俺は食べ終わった皿を洗って歯を磨く。俺は帰宅部なので予鈴前に学校についたらそれでいいみたいな考えがメジャーだ。
バシャバシャと顔を洗い眠気を完全に吹き飛ばした。カバンを持って弁当を入れると同時に忘れ物がないかの確認…。大丈夫かな?
俺は家から出て鍵を閉め、自転車に乗った。ここから駅まで自転車でそこから電車一本で着く。
俺は朝日に向けて自転車を漕ぎだした。
「もう……秋か」
葉桜も終わりを告げてもみじの色が染まる頃。俺は色褪せてるけど。俺は自転車を漕ぎ続けた。そして駐輪場が目に入る。ここで自転車をおくのだ。
「いつもご利用ありがとうございます」
駐輪場のおじさんがいつも挨拶してくれる。
「あ、おはようございます」
軽い会釈で俺は駅の入り口まで早歩きで進んだ。ピッと定期を通して駅のホームでスマホを開く。海原の壁紙が映し出され俺はお気に入りのプレイリストをかけた。好きなアーティストの歌声で包まれる。最近買ってもらったイヤホンの性能を確かめながら音楽を聞いてると後ろからトンっと指で突かれる。
「どうした燈?」
「音楽聴いてるんだなぁって」
ポニーテールに髪を結んだ少女が俺の前で茶目っ気に笑った。こいつは南野燈。どうしてかは忘れたが俺の幼なじみだ。幼稚園から一緒で家は俺の家の近所だ。身長は小さめだがその体のどこにそんなエネルギーがある?と思いたくなるほどの無邪気な性格だ。
「朝ぐらいゆっくりさせろよ」
「これが燈のスタイルだもん」
「お前のスタイルを押し付けんなよ…」
正直言って燈とは性格が真逆なので燈についていけた試しがない。しかし向こうが絡んでくるので俺はそれに答えるしかないのだ。ちょうど電車が来たので俺たちは乗る。
「いやぁ多いね人」
「朝だからな」
だいたい俺の朝はこんな感じだ。姉ちゃんがいれば姉ちゃんと行くがだいたい俺よりも遅く寝て早く起きて早く登校するのが姉ちゃんなのでこの頃一緒にいる時間が少ない。
「紗香ちゃん元気?」
「まぁ元気」
「すっごいよね、この前だって大会優勝でしょ?表彰たくさんされてるからさ」
「燈みたいなちびっこには味わえんだろうな」
「な…!言ったな!」
静かに過ごしたいのはやまやまだが俺はなんだかこの空気が好きだった。最寄りの駅に着き改札を出ると学校まですぐだ。なんだか周りの人のほとんどは知らない人なのにみんな同じ気持ちであることが悟れる。「終わるなよ夏休み……」ってな。そこから五分ぐらい歩いて学校が目につく。
「あぁー、憂鬱だ」
燈がガクンと肩を落としてうなだれた。
「私立なんだから、夏休みが終わる日数も早いのは当然だろう?」
「大学付属だからって決めた自分が……」
そう、俺の通ってる高校は大学の付属高校だ。つまりは私立だ。夏休みも何回か補修があったし、宿題も多かったので実質夏休みかどうかがわからなかったほどだ。燈と俺は同じ教室なのでそのまま入った。木の匂いがほのかに香る。この高校は未だに木が目立つ作りの机に椅子だ。床もワックスを塗って乾いたばかりなのか匂いが目立った。カーテンのように木が日光を遮ってはいるが葉の間からチラチラと光が目をつく。
俺は眩しくてすこし顔をしかめた。それからぞろぞろとクラスメイトが入ってきた。みんなすこし憂鬱そうだ。カラオケに行けなかっただのもうすこし旅行したかっただの15時間ぐらい寝ていたかっただの高校生を代表するかのような愚痴をこぼしていた。
「よぉ~修也。夏休みはどうだった?」
馴れ馴れしく肩を組んでくるやつがいる。
「なんだよ、野村」
野村魁斗、バスケ部所属のクラスメイト。図体はでかいのに意外にも料理と写真が好きだという風変わりなやつだ。
「今回の夏休みはさー。京都にも行けなかったしロクな料理もできなかったんだよ」
「俺だって睡眠を取れなかったよ」
風変わりな趣味を持っておきながら成績はいい結果オーライの野村。それに対しての自分は何にもない。なんか俺めっちゃ普通の高校生。青春してるって言えない。おかしいな?中学の頃は高校生はティーンエイジャーの最高地だってことを聞いたのに。高校一年の頃はなんとかして部活に入ろうとしたが入りたいものが見つからずただただ時間だけが流れていった。それでも行事は楽しかったし何人か友達もできたさ。そうであったが元々人に飽きっぽい自分のせいで結果的に浮いてる存在としてみられるようになり一年後半は孤立していた。
そして進路選択がやってきたのだが俺は特にやりたいことも何にもなかったのでその時のノリで文系コースを選んで今に至る。夏休みだって誰とも出かけなかったし俺は一人で自転車をこいで遠出するぐらいだった。元々一人は好きな方だからそれは良かったけどね。家に帰ると虚無感しか残らなかった。燈を誘おうかと迷ったがなんだか気恥ずかしいしあいつと俺はただの幼馴染のご近所さんと言う関係なのでそこまで親しい関係じゃない。いっつもスマホを開いてチャット画面を開いて3分ほど画面を見つめてから電源を消していた。
このままじゃあダメだってわかるけどさ。変えれるもんじゃあないんだよ。そもそも何かを変えようとすることも辛いがそんな簡単に変えれるもんじゃあないということも辛い。俺は日光を浴びながら机に俯いて目を閉じた。まぁいい今は忘れよう。俺は心の中で唾をペッと吐き捨てた。そして叫ぶ。
いるんだったらな、変えてくれよ神様!賽銭なんて払えるもんじゃあないけど、あなたの言うことなら聞きますよ!苦労してもいいから俺は変わりたいんですよ!夢を持ちたいんです! 心の中で叫んで電波を送ったとしても解決されるもんじゃあない。俺はため息をついて腕を伸ばしカバンから筆箱を手繰り寄せる。その時に声がした。
「お前は変わりたいのか?」
その声を聞いて俺は一瞬ビクリとして半身を起こして辺りを見渡す。しかし誰もそんな声を出すものはいない。しかし俺は朝のテンションということもあって気にすることはなかった。どうせ自分が聞いた幻聴さ。予鈴がなり担任が入ってくる。今日も息苦しい授業が幕を開ける。
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