パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
78 / 130

78.頻発する接触

しおりを挟む

 俺たちは回廊を歩きつつ、どこかに休める場所がないか探すことにする。できればここよりも肌寒くない室内が望ましい。外の寒さはダンジョンの外にいた頃となんら変わらないからな。

 そんな中、こういうときに限ってモンスターとの遭遇率が上昇していた。

 不安が敵を呼び寄せるんじゃないかと思えるほどで、半漁兵士だけじゃなく、コルヌタートルとかいう、緩慢な動きからいきなり跳躍してくる亀のモンスター、さらには骨だけになった状態で宙に浮いてるボーンフィッシュとかいう魚のモンスターまで出てきた。

 亀に関しては二匹だけだったので、気を失ったスピカや《追従》を使うルシアが戦えない状態とはいえ、一匹はバニルが上手く弱点を突いて倒してくれたし、俺のほうに飛んできたもう一匹も、咄嗟に抜いた短剣を《ファイヤーウッド》で薪に変えたことでなんとか身を守ることができた。

 さらに亀は自慢の角が薪に刺さって動けなくなり、ミルウに棍棒で殴り倒されていた。見た目は幼いがこの子も結構強いんだよなあ。

 また、そのあとに来たボーンフィッシュに関しては十匹もいたので特に肝を冷やした。やつらは主に群れで行動することが多く、幾つかの群れが合流して大群と化すのも珍しくないのだそうだ。

『……』

 骨だけの魚たちは無言で宙を飛んで迫ってきて、鋭い牙だらけの大口を開けて襲ってくる。一度噛みつかれたら切断するまで放してくれないらしく、倒しても一回限りだがまたすぐに復活するという厄介なモンスターだった。

 しかも飛行しているためか《忠節》が通用せず、ミルウやバニルのように避けながら倒すというわけにもいかず俺は回避するのみになっていた。迂闊に攻撃すれば痛い目を見るから仕方ないとはいえ歯痒い。

 しかも結構素早いから、一匹を攻撃してる間にほかのやつにやられてしまう可能性が高い。バニルとミルウも容易には手を出せない様子で、回避のほうが多めになっていた。今あるスキルで対処できないものか……。

「あ……」

 そうだ。この手があった。

 俺はボーンフィッシュたちが群れてくる習性を利用し、触れ合ったところで徐々に《結合》していって、最終的に一つの塊――巨大魚――にしてやると、一気に《ハンドアックス》で叩き壊してやった。もちろんすぐに復活はしてくるが、みんな同じ場所なためにごちゃごちゃになって合体し、的も大きいのでかわされる心配もなく、即座に俺やミルウの餌食となった。

「セクト、やるね!」

「セクトお兄ちゃん、あったまいいー!」

「……よせって。みんながくれたアイテムのおかげだよ」

 今思うと、バニルたちがくれたアイテムを変化することで得た派生スキルは、俺が頻繁に使う主力スキルといっていいからな。

《忠節》《結合》《反転》《成否率》……それぞれ、ミルウ、バニル、ルシア、スピカから貰ったアイテムを変えたものだし。

「……セ、クト。や、やるわ……ね……」

「……」

 ルシア、ちょっと無理しちゃったな。かなり棒読みだった。

「――お……」

 とはいえルシアからの応援もあったので気をよくして回廊を歩いていると、左側に城の内部へと続きそうな道が見えた。どんなところだろうと思って入ってみたわけだが、L字の細い通路で奥には扉があった。鍵は掛かっていない。

 敵の気配もなかったので早速中に入ってみると、とても暗かったので《導きの手》で照らしてみる。……窓はないものの普通の小部屋だった。狭い上に壁にはあっちこっちに赤い手形が幾つもつけられていて不気味だったが、暖炉もベッドもテーブルもある。

 俺は暖炉に残っていた本物の薪に火をつけた。あれだけ薄気味悪かった部屋の雰囲気も結構明るくなるな。その間、ルシアがスピカをベッドに寝かせるのがわかる。これで一安心かな。

 彼女が目覚めるまで、しばらくここで休むか……。食欲減退、眠気覚ましのために持参してきた、宿舎の庭で栽培していたクラップハーブに加えて、《恵みの手》《エアケトル》のスキルでお茶を作るとしよう。それを《エアウェア》に入れたあと、敵が現れたときに備えて《夢椅子》を使用し、立ったままみんなと飲むことにする。

 熟練度が低いためにすぐ消えてしまうが、状態の維持はできるので充分に水の入った《エアケトル》をひたすら使用して暖炉に置くだけだ。

 しばらくして、小部屋ではなんとも不思議な光景が広がったが、味は普通に飲むのとなんら変わらなかった。

 そういやハーブをスキルにすれば次からこれもいらなくなるんじゃないかと思って早速変えてみたんだが、《エアクラップ》という近くの相手に手を使わず平手打ちができるFランクスキルになった。思ったものとは違うが、確かに眠気覚ましにはなりそうだ……。

「――あ……」

 みんなでくつろいでいたところ、パーティーの気配がして俺は息を呑んだ。この小部屋からそう遠くない場所だ。しかもいきなり……。集中力が削がれてた感じはなかったのに気付けなくて不思議に思う。自分が思っている以上に疲れてて気配察知能力が上手く機能しなかったんだろうか……。

「セクト、どうしたの?」

「どうしたのお? セクトお兄ちゃん」

「……どうし、たの……」

「だ、誰かこっちに来る……」

 俺の言葉で、みんな緊張した様子で黙り込んだ。謎のパーティーがこっちに徐々に近づいてきているのはわかる。まだどんな面子なのかは読み取れないが、カルバネたちか、あるいは……『ウェイカーズ』である可能性も捨てきれない。

「……はぁ、はぁぁ……」

 呼吸が荒くなってきた。もうすぐ、例のパーティーがどんな連中なのか俺の気配察知能力によってわかる距離まで来る。スピカがこんな状態だし、今はまだとてもじゃないが戦える状況じゃない。どうか違ってくれ。俺は藁にも縋る思いだった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...