パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

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116.真剣な遊び

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「スピカ、俺が行くぞって言ったら、そっちに設置したワープゾーンから俺の投げた短剣が飛んでくる予定だから気を付けてくれ。ボスに当てるつもりだ」

「はぁい、セクトさんっ。ふんふんふーん♪」

「……」

 スピカ、まだまだ大丈夫そうだな。というかもう何か、大ボスとダンスでも楽しんでいるかのような軽やかなステップだ。

 俺は一旦、《ワープ》でバニルたちの元へ戻ると、まもなく短剣を投げる動作に入った。みんな周りで興味深そうに俺を見ているのが気配察知能力で読み取れる。

 少し経って《ワープ》が二つとも消えたので、再びスピカのほうとこっちに新しいワープゾーンを用意した。あっちこっちに動き回ってるボスに当てなきゃいけないわけで、投げるタイミングが重要だから慎重に動きを見極めないといけない。俺の予想が確かなら《反発》の影響は受けないはずだ。

 ……よし、ファーストガーディアンが向こうに置いた《ワープ》の延長線上に入ろうとしている。スピカが上手く誘導してくれたみたいだ。

 ――今だ。

「スピカ、行くぞ!」

「はーい!」

 短剣がフッと近くの《ワープ》に吸い込まれるようにして消えて向こうの《ワープ》に移動し、ボスのほうへと飛んでいく。もうそのときにはスピカが察して離れてくれていた。

 ……おおっ、ボスの大腿部分に命中して血が飛び散ったが、俺はなんともなかった。よーし、やっぱり予想が的中したな。俺の攻撃ではなく、あくまでも《ワープ》からの攻撃とみなされて《反発》の影響を受けなかったんだ。やつの攻撃に呼応したカウンターアタックが《反発》のダメージを相殺できるのも、あくまでもボス自身の攻撃、すなわち自傷だと判断されるからなんだろう。

 これを活用していけば、思ったより早く倒せそうだ……って、その前にやることがあった。この手を応用していけば、『ウェイカーズ』だってオモチャ扱いできるはずなんだ。俄然、体中が熱くなってくる。やはりボスの攻略がやつらへの復讐の近道だった。

 俺は二つの《ワープ》同士を行き来してその思いをより強くした。一度に二つしか出せないというデメリットはあるが、さらにワープを設置したい場合どちらかを《幻草》とか《幻花》に切り替えれば済むことだ。この方法ならワープゾーンをぱっぱと出せる上、周辺であればどこでも自由に瞬間移動することが可能になる。慣れれば回避の極みになるな。墓場の周りは雑草だらけだしまったく目立たないのもいい。まさか、こんなFランクスキルが役立つときが来ようとは。それも、『ウェイカーズ』への復讐という一大イベントに……。

「セクト、どうしたの?」

「どうしちゃったのよ、セクト!」

「どうしたのお? セクトお兄ちゃん……」

「……」

 気付けば俺はバニルたちに囲まれていた。どうやら一人で興奮しすぎていたらしい。そうだ、彼女たちに練習相手になってもらうか。『ウェイカーズ』がまた来るまでに、この《ワープ》戦法を完璧に習得しておきたい。

「みんな、今からゾンビごっこをやろう。俺が人間役になるから捕まえてみてくれ」

「「「ええっ?」」」

 バニルたちに唖然とした顔を向けられる。そりゃそうか。ゾンビごっこというのは一人だけ人間の役になり、あとはゾンビの役になって人間を追いかけ回し、最初に触れた者が今度は人間役になる、そんな子供の頃によくやっていた遊びだ。

「セ、セクト……こんなときにゾンビごっこはちょっと……」

「どうしちゃったのよセクト……。スピカが戦ってるときに遊んでる場合じゃないでしょ! ミルウじゃないんだから!」

「あふう。ミルウ、ゾンビごっこしたいかも……」

 ミルウは満更でもなさそうだが、バニルとルシアの反応は当然といえば当然だろう。

「これで『ウェイカーズ』を倒せる方法が見つかりそうなんだ。騙されたと思って協力してほしい」

「う、うん……」

「そういうことなら早く言いなさいよ! 絶対捕まえてやるんだからっ!」

「わーいわーい! ゾンビごっこー! グフフッ……」

「……」

 みんな気合充分だな。相手として不足はない。

「てかミルウ、足は大丈夫なのか?」

「ちょっと痛いけどお、ゾンビごっこくらいならへーきへーきだもん!」

「そーかそーか。ルシアも体調は問題なさそうか?」

「もう平気よ。あたし、もうちょっと休んだらスピカを手伝おうって思ってたくらいだし……」

「そりゃ心強い。バニルは?」

「ゾンビごっこなら大丈夫。体に力はあんまり入らないけど、手を伸ばして触れるだけだしね」

「それで充分だ。ありがとう、みんな」

 多分、ここまで真剣なゾンビごっこはこれから先、二度とやらないだろう……。
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