幼馴染勇者パーティーに追放された鍛冶師、あらゆるものを精錬強化できる能力で無敵化する

名無し

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第十九話 解決方法

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「ほら、あのお方だ」

「ハワード様だ!」

「すげー……」

「ハワードさんは風の噂じゃ落ちぶれて追放されたって聞いたが、ぜんっぜん違ったぜ。群がってきたモンスターを一瞬で蹴散らしてたからなあ」

「「「おぉっ!」」」

「……」

 あれから灰色の町では明らかな変化が起きていて、住人たちがちらほらと姿を現わすようになっていた。彼らの会話の内容から察するに、俺がモンスターを蹴散らしたことが大きいのかもしれない。

「ハワード、挨拶しないですか? 人間嫌いだから?」

「いや、俺はそういうの苦手だし……」

「照れてるですね?」

「照れてるっていうか、コミュニケーション自体が苦手っていうか得意なほうじゃないんだよ。そういう意味じゃ不器用なのかもな……」

 鍛冶師なのに矛盾してるのかもしれないが、実際そうなんだから仕方ない。昔から要領が悪くて、伝説の鍛冶師である祖父にも鍛冶以外では苦労することになるぞって笑われたもんだ。

 それでも、だからこそ驕らずに一つのことに打ち込むことができるとも言われた。この生まれつきの気質のおかげで神精錬を会得できたようなものだから神に感謝しないとな。

「――うがっ……?」

「ハスナ?」

「争いです、向こうのほうで争いが起きてるのが見えますです」

「争い……人間同士で?」

「はいです」

「……」

 ただの喧嘩かもしれないし、スルーしようかとも思ったが妙に気になった。行ってみるか。





「――ひぐうぅっ、助けてぇっ!」

「こいつ、オークの癖に言葉を喋ってやがる!」

「コアに違いねえ、ボコボコにするぜ!」

「やっちまえっ!」

「痛めつけろ!」

「ぶち殺せ!」

 ハスナに導かれてやってきた大通りの一角、やたらと物騒な声が飛び交い、争いというよりは一方的なリンチが行われていた。

「あ、あれはオーク?」

「違うと思うです、あれは人間です」

「人間……?」

 囲んでいる者たちの隙間からちらっと見えたのは腫れ上がった醜いオークの顔だったが、ハスナの目は確かだし早く止めないとまずいな、これは。

「おい、やめるんだ!」

「「「「「えっ……?」」」」」

 ボコってるやつらから、いかにも意外そうな顔で見られた。自分たちがやってることが正義だと疑う余地は一寸もない、そんな表情だ。

「あ、あの神鍛冶師ハワードじゃないか!」

「マジだ、生のハワード=オルグレンだ!」

「確か、勇者パーティーで飛び抜けてつえーやつだろ! すげー!」

「あっしの嫁が大のファンだっていうぜ!」

「みんな落ち着け! てかよ、勇者パーティーにいたやつがなんで庇うんだ? こいつは見ての通りバケモンだぜ!?」

「いや、オークの姿をしてるだけでそいつは人間なんだ。こっちに渡してくれないか?」

「「「「「えぇっ……?」」」」」

 彼らはしばらく訝し気な面持ちでお互いの顔を見合っていたが、まもなく一人のガタイのいい坊主頭の男が不満そうに前に出てきた。

「いくら有名人でも譲れねえよ。どう考えたってこいつはバケモンでコアだし、俺が最初に見つけて捕まえたんだ。こいつさえ殺せばダンジョンにされたこの町から出られる。俺たちはヒーローになれるんだ!」

「「「「おおっ!」」」」

「……」

 まずいな、これは。みんなあのオーク頭を化け物というだけでなくコアだと決めつけてしまっているし、さらに俺に手柄を奪われることを恐れている。

「ひぐ……」

 気絶したのか、リンチされていたオーク頭が動かなくなった。

「やっぱり気絶しただけじゃ出られねえみてえだ。よおし……これでコアを潰すぜ!」

 男が両手でバカでかい石を運んできた。あれを頭上に落としてとどめを刺すつもりだ。

「おい、やめろ!」

「うるせえっ! 死ねええぇぇぇっ――え……?」

 俺が止めるまでもなかった。大きな石がオーク頭めがけて落とされた直後、ハスナが片手で軽々と止めてみせたのだ。

「な、なんだこいつ、チビの癖に片手で受け止めやがった……バ、バケモンか……?」

「うるせーです、バカ人間――うがっ?」

 ハスナの口を塞いでやる。わざわざ正義の鉾の的になる必要はない。

「小さいが俺の相棒だよ。それより、この子は化け物じゃないしコアでもないからやめとけ」

「い、いや、だからなんであんたにそれがわかるんだよ……? ま、まさか、このバケモンとグルなんじゃねえだろうな……!?」

「「「「ひっ……」」」」

 坊主頭を筆頭に青ざめる連中に対し、少しでも脅してやれば一目散に逃げ出すだろうが、俺はあえて苦手な話術で挑むことにした。見せたかったんだ、ハスナに。勇者パーティー相手ならともかく、暴力だけが解決方法ではないんだと。不器用だからこそ説得力もあるはず。

「町中がダンジョンになってるのにこの子がコアなのはいかにも不自然だ。わざわざこんな目立つ姿でうろつくわけがないだろ? 普通のモンスターでさえ人間に擬態していたのに」

「「「「「……」」」」」

 やつらは一様に不満げだったが、俺の言葉が割りと納得できるものだったのか反論もせず立ち去っていった。よし、とりあえず確保成功だ……。
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