幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

文字の大きさ
13 / 36

13話 雲泥の差

しおりを挟む

「「「「「おおっ」」」」」

 俺たちの驚いた声が被るのも仕方ない話で、異次元ホール内に小人化して入った結果、そこが箱庭の世界とは到底思えないほどリアルな光景を目にすることとなった。

 漆黒の空から満月が覗く山の中、目の前にはサラのおばあちゃんの家が鎮座していたのだ。

 例の山小屋があった位置に設置したわけだが、思ったよりずっといい味を出してて、あたかも遠い故郷に帰ったかのようだった。もちろん異次元ホールに空なんてあるはずもなく、あれは特製の錯覚レンズによって作り出した幻で、時間が経てば青空や太陽が見えるように細工してある。

「――ちょっと、遅かったじゃないの、リューイ様、おかえりなさいっ!」

「あ、ああ、ルディ、ただいま……」

 勢いよく開かれた扉から俺の胸に飛び込んできたのはお嬢様ルディで、目元には薄らと涙すら浮かんでいた……って、この状況はなんだ?

「……」

 窓からメイドさんのクレアの目が怪しく光ってるし、後ろからも棘のある視線が突き刺さってきて、俺はしばらく冷や汗をかくことしかできなかった。これじゃ、なんか二人だけの世界を作り出してる痛い人みたいな扱いになっちゃうじゃないか。早く、早くこの空気を変えなければ……。

「ずっと、ずっと待ってたんだからねっ、ふん……!」

「あ、そ、そうだ、ルディ、俺の仲間たちも帰還したんだし、挨拶くらいしたほうが……」

「あら、そうだったわね」

 お、ルディが大人しく従って後ろにいるシグたちのほうに歩み寄っていく。わかってくれたか。

「あなたたち、リューイ様の護衛、お疲れ様だったわねっ! ま、褒めてあげるからありがたく思いなさい!」

「「「「えっ……」」」」

「ちょっ……」

 まるで火に油を注ぎにいったみたいだな、これじゃ。対応に落差がありすぎる……。みんな、さぞかし不快な思いをしてしまったことだろうと恐る恐る振り返ると、意外にもシグたちは笑顔だった。あれ……?

「いやー、どうもです、ルディ氏。リューイ氏の護衛、僕たちでもなんとかなりましたよ!」

「うんうん、サラもね、リューイさんの護衛頑張ったもん!」

「私も頑張りましたよぉ」

「お、おでも、なんとか……」

「……」

 おいおい、本当にこれでいいのかと突っ込みたくなるが、ほっとしたのも正直なところだ。シグたちはいい人すぎて元パーティーの連中とは雲泥の差だな。

「みんな、いい? どんどんマップを増やしてあたしたちを楽しませなさい!」

 うわ、またしてもルディの爆弾発言。こりゃさすがにシグたちも怒るかなと思ったら、みんな笑顔でうなずいていた。おいおい、どこまでお人よしなんだ。約二名、例の言葉を送ったら即ぶちぎれそうだが……。

「お、お嬢様、いくらなんでも失礼ですよ!」

 クレアが慌てた様子で駆け寄ってきた。そりゃそうだ。お、結構怒られててルディが凹んだのか涙ぐんでる。やるなあ。この剣幕なら筋金入りのお嬢様といえど反省するだろう。

「あ、あたしは悪くないわよ! リューイ様についていきたいのに、補欠で我慢してやってるんだからね! ふんっ!」

「お、お嬢様がそんなに我慢なさっていたなんて。わたくしめが悪うございました……」

「あはは……」

 ルディが逆ギレしてるだけに見えたが、結局力関係的にこうなっちゃうのか……。

「……と、こういうわけです。我慢させてしまったわたくしめが悪いということで、どうかお嬢様の無礼をお許しください……」

 ルディの代わりのようにみんなに頭を下げまくるクレアだったが、まもなくはっとした顔に変わった。

「そ、そうでした、ルディお嬢様があなた方のためにとお風呂を沸かしておりますので、お詫びの意味を込めて是非お入りください」

「おお、それはいいな――」

「――わーい、サラお風呂大好きー」

「あ、サラちゃんずるいですぅう」

「ちょっと、何よ!? あたしがリューイ様と入るためだけに沸かしておいたのにっ!」

「……」

 サラ、アシュリー、ルディの女性陣が怒号にも似た声を上げながら我先にと駆け込んでいった。最後に不穏な台詞が聞こえてきたし、もし俺が先に入ってたら危なかったかもな……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

結婚式の日に婚約者を勇者に奪われた間抜けな王太子です。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月10日「カクヨム」日間異世界ファンタジーランキング2位 2020年11月13日「カクヨム」週間異世界ファンタジーランキング3位 2020年11月20日「カクヨム」月間異世界ファンタジーランキング5位 2021年1月6日「カクヨム」年間異世界ファンタジーランキング87位

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

処理中です...