22 / 50
第二二話 偽り
しおりを挟む「凄い。感動したぞっ……」
パチパチパチ……冷たい刃が目睫の位置にある中、食事を終えたばかりの少女から場違いな拍手をされてしまった。俺がこれまでの経緯を話した直後のことだった。
「15年生きてきたが、こんなに面白い物語は初めて聞いたぞ。是非続きが読みたいのだ……」
「エリン、これは現実だぜ?」
「ふむ……」
ん? エリンっていうのかこの子。俺がいない間にルザークと仲良くなったみたいだな。記憶の一部をなくした彼女の第三者的な立ち位置が原因だろうけど……見た感じ、のんびりすぎる性格のせいもあるのかもしれない。
「ま、物語染みてて、妄想だと思ってもしょうがねえよな。こんな夢みてえな話……。けど、俺なら100%信じられるな」
「……100%だって? どういうことだ?」
「お前をリンチした『サンクチュアリ』のマスター、シルウとはな、かつてペアで組んでいたことがあるんだよ」
「……なっ……」
これは意外だ。まさか東区の不良とプリンセスのようなシルウに接点があったとは……。性格は似たようなものっていうかむしろシルウのほうが悪いとは思うけど。
「やつは……間違いなく屑だ。俺なんかより遥かにな……。出会ったのは、まだシルウが『アニュス・デイ』とかいうギルドの一員だった頃だ」
「『アニュス・デイ』……」
聞いたことがあるようなないような。以前掲示板を覗いたときに話題が出てたような気もする。
「今はもう存在しないが、かつては名声ポイントの獲得数で五位まで上り詰めていたギルドだからお前も聞いたことがあるかもしれないな」
「なんで今は存在しないんだ?」
「やつが潰したのさ。シルウのやつがな……」
「……そ、そうなのか……」
あいつなら大手ギルドを内部から崩壊させることもやりかねないな……。
「最初の印象は地味で大人しい少女。ギルドの溜まり場に一度だけ立ち寄ったことがあるが、本当に空気だった。そこのマスター、ファルナスと妹のユリスの談笑が始まるまでは……。俺は心底ぞっとしたよ。青い炎みたいに静かに揺らめいてやがったんだ、シルウの目は……」
「嫉妬してたっていうのか?」
「決まってんだろ。それだけなら可愛いもんだがよ、そのあと俺になんて言ったと思う? ユリスが邪魔だから殺してほしいって言ったんだぜ。それも一切濁りのない笑顔でな……」
「……」
ゾクゾクしてきた。さすが俺だけのシルウ……。
「ユリスに普段から酷い扱いを受けてるっていうから、まあそれなら仕方ないかって俺も腹を決めてよ」
「結局引き受けたのか」
「……あの頃は俺も惚れちまってたからなあ、シルウに……」
「へえ……」
男殺しのシルウらしい。
「んで、ユリスが単独行動してるときにダンジョンでモンスターに紛れて襲撃する計画だったが、モンスターの沸きが凄まじくて、そこで意識が途絶えてよ……。気が付いたら、俺はユリスに助けられてダンジョンから出るところだった。それでさ、笑いながらこう言うんだよ。私を殺すのに失敗しちゃいましたねって。そこでわかったんだが、シルウは俺ごとユリスを殺すつもりだったらしい」
「……ってことは、モンスターの沸きが酷かったのは……」
「そうだ。完全なトラップだった。しかも、普段からいじめられてるのはユリスのほうだった。少し見せてくれた背中の痣や、ズタズタに切られた袖口がいい証拠だ。これが本当にいい子でよ……。ギルドで波風立てないために、誰にも言わずに我慢してたんだとよ……」
「……そうか。気の毒だな」
シルウには一層きついお仕置きをしてやらないと気が済まないな……。
「最後に言われたんだ。今回のことは全部忘れてくださいって。本当に、自己犠牲の塊みたいな子だった。こんなの殺せねえよ。よっぽどの屑でなけりゃ……」
「……それで、屑のシルウはどうなったんだ?」
「ユリスに対する嫌がらせがバレたらしく、総スカン食らって追放されたって話だ。『アニュス・デイ』もそれからすぐ解散してる。理由はわからねえが、俺は確信してるぜ。やつが原因で潰れたとな……」
「……そうだろうな」
「やつは己の目的のためならなんでも利用するし、殺すことも一切ためらわない。持っているスキルも厄介だし、本当に恐ろしい女なんだ。その仲間にしても今は滅法強いのばかり集めてると聞いた。そんなのをお前は相手にしようってわけだろ。はっきり言って無謀すぎるぜ……」
「……」
「……これだけは言っておく。『サンクチュアリ』を潰したい気持ちはわかるし、俺も個人的に恨みはあるが協力はできない。やつらを確実に潰す方法が明確に提示されない限りはな」
ルザークに去られるのは痛いが、どうしようもない。あいつらを確実に潰す方法なんて、そんなのあるわけないだろ……。
「言えないなら俺はここから出ていくぜ。当然だが対価も受け取っていく」
「……対価?」
「おうよ。俺はお前に体を乗っ取られて散々利用されたんだ。だから今度は俺がお前の体を弄ぶ番だろ?」
「……ええ?」
声が震えた。俺が言うのもなんだが、なんで男ってやつはどいつもこいつも……。
「あ、そうだ。エリンを混ぜて3Pもいいなあ。なあエリン?」
「……む? ルザーク、3Pとはなんなのだ?」
「最高に気持ちいいことだぜ、エリン」
「おおっ。それは楽しみだ……わくわくするぞ!」
何も知らないエリンの目が輝く。忘れてたが、ルザークも充分屑だった。
「……さあどうするんだ? やつらを潰せる方法があるんだったら言えよ。それが納得できるものだったら協力してやる。もちろん、俺の体を乗っ取らないことが前提だが……。それができないなら、ここで体を貰ってお別れだ」
「くっ……」
ルザークは俺の力がどれほどのものか見極めようとしている。ここで舐められたら終わりだ。
「早く言え! それともないってのか!? ああ!?」
はったりでもいい。あると言うしかない。時間稼ぎだ。
「ある。とっておきの方法がな」
「……なるほど。で、その方法は?」
「……」
考えろ、今から考えるんだその方法を……。
1
あなたにおすすめの小説
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる