外れスキル【転送】が最強だった件

名無し

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第二二話 偽り

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「凄い。感動したぞっ……」

 パチパチパチ……冷たい刃が目睫の位置にある中、食事を終えたばかりの少女から場違いな拍手をされてしまった。俺がこれまでの経緯を話した直後のことだった。

「15年生きてきたが、こんなに面白い物語は初めて聞いたぞ。是非続きが読みたいのだ……」
「エリン、これは現実だぜ?」
「ふむ……」

 ん? エリンっていうのかこの子。俺がいない間にルザークと仲良くなったみたいだな。記憶の一部をなくした彼女の第三者的な立ち位置が原因だろうけど……見た感じ、のんびりすぎる性格のせいもあるのかもしれない。

「ま、物語染みてて、妄想だと思ってもしょうがねえよな。こんな夢みてえな話……。けど、俺なら100%信じられるな」
「……100%だって? どういうことだ?」
「お前をリンチした『サンクチュアリ』のマスター、シルウとはな、かつてペアで組んでいたことがあるんだよ」
「……なっ……」

 これは意外だ。まさか東区の不良とプリンセスのようなシルウに接点があったとは……。性格は似たようなものっていうかむしろシルウのほうが悪いとは思うけど。

「やつは……間違いなく屑だ。俺なんかより遥かにな……。出会ったのは、まだシルウが『アニュス・デイ』とかいうギルドの一員だった頃だ」
「『アニュス・デイ』……」

 聞いたことがあるようなないような。以前掲示板を覗いたときに話題が出てたような気もする。

「今はもう存在しないが、かつては名声ポイントの獲得数で五位まで上り詰めていたギルドだからお前も聞いたことがあるかもしれないな」
「なんで今は存在しないんだ?」
「やつが潰したのさ。シルウのやつがな……」
「……そ、そうなのか……」

 あいつなら大手ギルドを内部から崩壊させることもやりかねないな……。

「最初の印象は地味で大人しい少女。ギルドの溜まり場に一度だけ立ち寄ったことがあるが、本当に空気だった。そこのマスター、ファルナスと妹のユリスの談笑が始まるまでは……。俺は心底ぞっとしたよ。青い炎みたいに静かに揺らめいてやがったんだ、シルウの目は……」
「嫉妬してたっていうのか?」
「決まってんだろ。それだけなら可愛いもんだがよ、そのあと俺になんて言ったと思う? ユリスが邪魔だから殺してほしいって言ったんだぜ。それも一切濁りのない笑顔でな……」
「……」

 ゾクゾクしてきた。さすが俺だけのシルウ……。

「ユリスに普段から酷い扱いを受けてるっていうから、まあそれなら仕方ないかって俺も腹を決めてよ」
「結局引き受けたのか」
「……あの頃は俺も惚れちまってたからなあ、シルウに……」
「へえ……」

 男殺しのシルウらしい。

「んで、ユリスが単独行動してるときにダンジョンでモンスターに紛れて襲撃する計画だったが、モンスターの沸きが凄まじくて、そこで意識が途絶えてよ……。気が付いたら、俺はユリスに助けられてダンジョンから出るところだった。それでさ、笑いながらこう言うんだよ。私を殺すのに失敗しちゃいましたねって。そこでわかったんだが、シルウは俺ごとユリスを殺すつもりだったらしい」
「……ってことは、モンスターの沸きが酷かったのは……」
「そうだ。完全なトラップだった。しかも、普段からいじめられてるのはユリスのほうだった。少し見せてくれた背中の痣や、ズタズタに切られた袖口がいい証拠だ。これが本当にいい子でよ……。ギルドで波風立てないために、誰にも言わずに我慢してたんだとよ……」
「……そうか。気の毒だな」

 シルウには一層きついお仕置きをしてやらないと気が済まないな……。

「最後に言われたんだ。今回のことは全部忘れてくださいって。本当に、自己犠牲の塊みたいな子だった。こんなの殺せねえよ。よっぽどの屑でなけりゃ……」
「……それで、屑のシルウはどうなったんだ?」
「ユリスに対する嫌がらせがバレたらしく、総スカン食らって追放されたって話だ。『アニュス・デイ』もそれからすぐ解散してる。理由はわからねえが、俺は確信してるぜ。やつが原因で潰れたとな……」
「……そうだろうな」
「やつは己の目的のためならなんでも利用するし、殺すことも一切ためらわない。持っているスキルも厄介だし、本当に恐ろしい女なんだ。その仲間にしても今は滅法強いのばかり集めてると聞いた。そんなのをお前は相手にしようってわけだろ。はっきり言って無謀すぎるぜ……」
「……」
「……これだけは言っておく。『サンクチュアリ』を潰したい気持ちはわかるし、俺も個人的に恨みはあるが協力はできない。やつらを確実に潰す方法が明確に提示されない限りはな」

 ルザークに去られるのは痛いが、どうしようもない。あいつらを確実に潰す方法なんて、そんなのあるわけないだろ……。

「言えないなら俺はここから出ていくぜ。当然だが対価も受け取っていく」
「……対価?」
「おうよ。俺はお前に体を乗っ取られて散々利用されたんだ。だから今度は俺がお前の体を弄ぶ番だろ?」
「……ええ?」

 声が震えた。俺が言うのもなんだが、なんで男ってやつはどいつもこいつも……。

「あ、そうだ。エリンを混ぜて3Pもいいなあ。なあエリン?」
「……む? ルザーク、3Pとはなんなのだ?」
「最高に気持ちいいことだぜ、エリン」
「おおっ。それは楽しみだ……わくわくするぞ!」

 何も知らないエリンの目が輝く。忘れてたが、ルザークも充分屑だった。

「……さあどうするんだ? やつらを潰せる方法があるんだったら言えよ。それが納得できるものだったら協力してやる。もちろん、俺の体を乗っ取らないことが前提だが……。それができないなら、ここで体を貰ってお別れだ」
「くっ……」

 ルザークは俺の力がどれほどのものか見極めようとしている。ここで舐められたら終わりだ。

「早く言え! それともないってのか!? ああ!?」

 はったりでもいい。あると言うしかない。時間稼ぎだ。

「ある。とっておきの方法がな」
「……なるほど。で、その方法は?」
「……」

 考えろ、今から考えるんだその方法を……。
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