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第四二話 真っ直ぐ
しおりを挟む(大丈夫……きっと大丈夫だから……)
ミケは浮かない顔だったが、そう自分に言い聞かせながらダンジョンへと一人歩を進めていく。彼女自身、暗くて狭い場所は確かに好みではあったが、独りぼっちであることはそれ以上に嫌なのだった。
それでも彼女が囮役として名乗り出たのは、ケイスに対する一途な思いがあったからだ。
(……怖いけど、頑張ろう。この思いはきっとかなうから……いつかケイスさんに必ず伝わるから……)
ミケはダンジョンが見えてきたところで一度立ち止まり、しばらく祈るように手を合わせたあと、この件が片付いたときにケイスが自分を誇らしげに抱きしめてくれる姿を想像して笑顔に戻った。
(さあ、勇気を出して、私っ……。一度くらいなら死んでも大丈夫なんだし、恐怖心に負けないように頑張らないと。ケイスさんがいつ振り返ってきても笑顔で迎えられるようにっ……!)
ミケは両手に握り拳を作り、おもむろにダンジョンへと進み始めるのであった。
◇◇◇
「今、ミケからダンジョン内に入ったっていう連絡が来た。みんな、行こう!」
「はい、参りましょう」
「おうよ」
「わかったのだ!」
ダンジョンから遠く離れた路地裏にて、俺たちは互いにうなずき合った。
『サンクチュアリ』のやつらは、俺たちが近くにいないとわかればすぐにミケを追いかけていくはず。マガレットってやつのスキルで姿を隠せるとはいえ、あれには時間制限もあるからな。
ミケのことが心配なのでできればもっと近くから、あるいは転送ポイントから行きたかったが、見張りを雇われている場合罠だとバレる可能性もあるので距離を置くことにしたんだ。一応あの子は精神力を消耗して一度は確実に生き返ることができるし、作戦をどうしても成功させるために念には念を入れた格好だ。
さらに、ダンジョンに向かう間はなるべく無心になって気配を隠すようにメンバーに命じておいた。短期間気配を小さくすること自体は誰でもできるが、無に限りなく近くしたり長く維持したりするのは容易じゃないってことで、誰かに気付かれることなくここからすぐにダンジョンに行けるよう、本来の意味での【転送】を使うつもりだ。
既にルートはあらかじめ決めているからそれをなぞるだけでいい。【転送】が発動し、景色がどんどん移り変わる。素質が違うのかファルナスの体だといくら使っても疲れないから便利だ。魔法陣が出るスピードも移動距離も伸びている気さえする。
――よしっ……まもなく俺たちは予定通りスムーズにダンジョンの一階層へ入場することに成功した。誰かと鉢合わせするようなこともなくほぼ完璧だった。よっぽど目を凝らしてない限り他人に気付かれることはないだろう。ただ、これからが本番だから喜ぶのはまだ早い。
「すうぅぅぅ、はあぁぁぁ……」
俺は一度深呼吸を挟み、仲間たちとともに隅のほうに【転送】で移動すると、ミケから連絡が入るそのときを待つ。彼女がいる場所もあらかじめ予定していた場所なのでほぼ一瞬で行けるし、やつらに対して奇襲する格好になるからそれだけでも勝つ確率は格段に上がるというわけだ。
しかし、もう少しで決戦が始まるかと思うと高揚感が凄いな……。様々なボスといくら戦っても得られなかった緊張感がここにはある。
俺たちはしばらく【転送】でその辺を適当に飛び回りながらその瞬間を待った。一階層なだけあって出現するモンスターも疎らで弱い上、シルウたちが散々やってきた冒険者殺しのせいで人がまったくいないのも好都合だ。それでも最近はやつらが大人しくしてるためかぽつぽつと初心者の冒険者が姿を見せ始めているらしいが、大抵ギルド総出のお守りつきだそうだから手を出そうにも出せないのだろう。
そういうときだからこそ、ミケが囮として入るのは今がベストなタイミングなんだ。まさに待ちに待った恰好の獲物なわけだからな。やつらは必ずこの階層に来ているはず。
シルウ、ロン、マガレット、エルフィ……待ってろよ、『サンクチュアリ』の屑ども。必ずお前らを木っ端みじんにしてやるからな……あ、俺の大好きなシルウを除いて……。
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