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第四三話 フライング
しおりを挟む「えいっ……やあぁっ!」
ダンジョン一階層の中央にある通路の突き当りにて、ドキドキしながらモンスターと交戦していたミケ。
(怪しい人が来たら連絡、すぐ連絡……)
彼女は気付けばタブレットに触れてしまうほど周りを気にしており、最早モンスターではなく緊張と戦っているといっても過言ではない状態だった。
「……」
ふと、ミケが周りを見渡す。気配を感じたような気がしたのだ。
(誰かいる……? あ……)
彼女は確かに見た。この通路の奥へ来るまでに道が二手に分かれているわけだが、その左側から誰かがこちらを覗いていたのを。それはケイスたちが待機している右側の通路とは逆であった。
「き、来たっ……あ、あれぇ……?」
それまで誰もいなかったこともあり、確信を持ったミケは急いでケイスたちに連絡したわけだが、再度確認するも誰の姿も気配もなかった。
(おっかしいなあ。確かに今、誰かいたのに。どうしよう。これじゃフライングになっちゃううぅ……)
ミケは明らかに動揺していた。いつ『サンクチュアリ』に襲われてもおかしくないというのもあったが、それ以上に自分のせいで計画が頓挫してしまうことのほうが今は恐ろしかったのだ。連絡をし直そうかとも思ったが、彼女は自分の連絡がまだケイスたちに気付かれてない可能性のほうに賭けることにした。
(お願い。可能性は低いかもだけど、何かの間違いで連絡に気付かないで。お願い……)
手を合わせるミケの願いが通じたのか、しばらく経っても自分の体が【回収】されることはなかった。
(よかった……。でもどうしたんだろう。本当にただ気付かなかっただけならいいけど……あれ?)
まもなく振動によってケイスからの連絡に気付いたミケ。取り出したタブレットにはこう表示されていた。
『こっちの手違いで計画が失敗に終わるかもしれない。なので今すぐそこから逃げてほしい』
「え……ええっ!?」
(どうして……? ケイスさんの計画は完璧だったはずなのに……)
「そこのお嬢ちゃん、一人かい?」
「……あ……」
髑髏の杖を持った怪しげな女が突如として現れ、ミケの目が大きく見開かれる。動揺する彼女の周りには、いつの間にか妖艶な女を筆頭に『サンクチュアリ』のメンバーが全員勢揃いしていたのであった。
◇◇◇
「――来たっ……」
タブレットにミケからの連絡が入って緊張が走る。
「ルザーク、頼んだ」
「おうよっ!」
これでルザークが例の箱を【回収】することでミケの入った箱がこっちに飛んでくることになり、一気にピンチがチャンスへと変わって【転送】によって畜生ギルドの『サンクチュアリ』に対し奇襲を仕掛けるという手筈だった。なので、ルザークを中心としてみんなで箱を持つような態勢になる。
「ん? ルザーク?」
「ルザークさん?」
「どうしたのだ、ルザーク?」
……だが、おかしい。いつまで経っても箱が俺たちの前に現れないのだ。
「そ、そんな目で見るんじゃねえよ、俺はさっきからずっとスキルを使ってるぞ!? なのにちっとも変化がねえんだ……」
「ええ……?」
ルザークが嘘を言ってるようには見えないし、そういう状況でもない。これはどういうことなんだ。この男のスキルは手元に違うものを持ったとしても、隠し効果によって遠方からでも手元に戻せる仕様のはずなのに、一体何故……。
「――あっ……」
急にエリンがはっとした顔になる。頭はあまりよくないが、勘が鋭いホムニ族なだけあって何かわかったのかもしれない。
「エリン、どうした?」
「どうされたんです、エリンさん?」
「おうエリン、理由がわかったのか?」
みんな縋るような顔だ。今はエリンだけが頼みだからな……。
「……んーと、多分アレなのだ……」
「「「アレ……?」」」
「箱はエリンがあまりにも憎たらしかったから、魔法で燃やしちゃったのだ。てへっ……」
「……」
それって、つまりもう箱はいくら待っても来ないってことかよ……。
「ご、ごめんなさいなのだっ。箱ならほかにもあるだろうし大丈夫だと思ったのだ……って、みんななんかすんごく怖いのだ。ひっ……あひいいぃぃぃっ!」
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