A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

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23話 討伐対象

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 二回目のキャンプも色んなことがあったが、なんだかんだ言いつつ無事に終わり、俺たちはバラモ森林の奥地を目指して歩き始めたところだった。

「「「「「……」」」」」

 着実に目的地へと迫っていることによる緊張からか、みんな揃って神妙な表情で黙り込んでいる。

 いつもなら、キール以外の誰かが冗談でも言って場を和ませるんだが。

 彼らが大きな依頼をやる際、今回ほど順調に来たことがないということの証左だろう。

 それと、昨日から薄々感じていた、徐々に右にズレていくあの不自然な感覚もない。

 となると、ここにきて犯人の妨害方法が変わったとみていいんじゃないか。

 俺たちを森の中で迷わせ、依頼達成を遅らせる作戦から、誰かに重傷を負わせることで依頼を失敗に持ち込むやり方に変更したと考えてよさそうだ。

 問題は、そのタイミングがどこになるのか。

 一番怪しいのは討伐対象と交戦中に仕掛けてくるパターンだが、絶対にそこだと決めつけてかかるのは危険かもしれない。どのタイミングもありうると構えるくらいでなければダメな気がする。

 ――お、このは……。

 これは、討伐予定のB級モンスター、カースフラワーのもので間違いない。いよいよ遭遇することになるわけだ。

「お、お前ら、もうすぐだから気をつけろ……」

 しばらく経って、先頭を歩くシーフのキールが注意を促してきた。今までと比べると気付くのに結構時間がかかったので、彼もかなり緊張しているのが上擦った声からも伝わってくる。

『フシュウウウゥゥッ……』

 やがて俺たちの前に姿を現したのは、見上げるほど巨大で黒々とした花だった。不気味に蠢く花びらの中心には、糸を引く赤黒い口が覗いている。やつが討伐対象のカースフラワーで間違いない。

 これでもかと禍々しい空気を放つこの巨大な黒い花は、どれだけ傷つけてもすぐに再生して元通りになるらしく、いかに素早く連続してダメージを与えられるかが鍵になるんだそうだ。

 防御面を考えると、植物型モンスターってことでその場から一切動かないため一見楽そうだが、決して油断はできない。蔓を素早く伸ばして獲物に絡みつくことで動きを封じ、口の中に放り込んで溶かしてしまうのだという。

 攻撃面における最大の特徴が、あの口から放たれるカースブレスというもので、追い詰められていると感じたときに使ってくるとか。もしそれを食らった場合、体が地面に根を張ったかのように重くなり、最低でも三日はまともに動けなくなるとか。

 さらにその状態になった者に触れると同じように体が重くなる呪いを受けるため、誰かの手を借りるということもできない。

 B級の依頼なので、昇格するにはそれなりのスピード、クオリティが要求されるということで、カースブレスを誰かが受けた時点で依頼は失敗に終わるといってもいい。

「だ、大丈夫だっ、き、君たち、ぜぜっ、絶対に大丈夫だから……!」

 ラダンが自分に言い聞かせるように興奮気味に話す。

「い、いよいよだぜえっ! お、俺たち【時の回廊】パーティーが成り上がるときが遂にやってきたぞおぉっ!」

 バルダーが巨体をガタガタと震わせているのがわかる。

「わ、私がやっつけてやるんだからあぁっ!」

 メルルが今にも泣きそうな顔で叫ぶ。

「の、望むところだ……」

 キールが声を絞り出すようにして低い声を出したが、明らかにビブラートしている。

 彼らがここまで浮き足立つところを見るのは初めてだ。それだけずっと呪いに阻まれてきて、討伐対象と戦う機会自体あまりなかった可能性もあるな。そうなると俺の出番も多くなるかもしれない。

「よーし、軽く捻り潰してやるか……」

「「「「えっ……?」」」」

「ん? あっ……」

 みんなの怪訝そうな視線を浴びて、ようやく俺は気付いた。討伐対象を前にして、ついつい普通の調子で言ってしまったことに。これじゃまるで強キャラじゃないか。

 大物を相手にしてるわけだから慌てないと、それまで演じていた無能な王子様キャラと合わない。

「モ、モンド君、やけに冷静だね……」

「お、おいおい、なんでそんなに落ち着いてやがるんだ。本当にお前、王子様のモンドなのかよ?」

「モンドおにーちゃん?」

「お前、怖くないのか……?」

「あ、いや、みんな、これはただの独り言なんだ……って、ひっ!? いつのまにあんな恐ろしいモンスターが……!? こ、怖い……」

 俺はたった今、カースフラワーの存在に気が付いた振りをして、メルルの後ろに素早く隠れつつしゃがみ込んでみせると、失笑が上がるとともに頭を撫でられるのがわかった。

「うふふっ、モンドおにーちゃん、大丈夫っ。怖くないよぉ。私が守ってあげるからねぇ……」

「……あ、ありがとう、メルル……」

 うーん、さすがにやりすぎたような気もするが、まあいいか……。
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