A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

文字の大きさ
24 / 37

24話 決断

しおりを挟む

「――血湧き肉躍れ! 愚かな獣たちを蹂躙せよ! さあ、僕たちの力を合わせて新たな歴史を作り出すんだっ……!」

 吟遊詩人のラダンによって高揚の歌が響き渡り、いよいよカースフラワーとの戦いが幕を開けた。

「あんなの、ズタズタのボロ雑巾みたいにしちゃってえぇっ!」

 続いて、白魔導士メルルが高々と杖を掲げる。攻撃的な台詞から察するに、防御力低下のデバフだと思われる。

「いっくぜええええぇっ!」

 斧を振り上げた戦士バルダーが、勇猛果敢に敵の足元へと向かっていく。

『シュルルルルルッ……!』

 そうはさせじと、漆黒の花が鞭のようなつるを幾つも伸ばしてくるが、バルダーの闘気によって若干怯んだらしく、いずれも方向が微妙にズレているのが見て取れた。

「頼むぞ、バルダー!」

 その間にシーフのキールがナイフを複数投げて、バルダーのほうへ向かう蔓を刈り取っていく。

「うおおおぉっ! 俺に任せろおおおぉぉっ!」

『ウジャアアアアアァァッ!』

 バルダーが木の幹よりも太い茎に斬りかかり、カースフラワーの体が大きく揺れるとともに、傷口から透明な体液が勢いよく飛び散る。

「ぐぐっ!?」

 このまま一気に倒してしまいそうなくらいの迫力だと思ったが、無色の液体を左肩に食らったバルダーがその箇所を押さえながら後退した。

 なるほど、カースフラワーの血液自体が強酸のようになっているのか……。

「バ、バルダー、大丈夫!?」

 メルルが血相を変えてバルダーの元へ駆け寄り回復するものの、デバフに比べると極端に不得意なのか全然癒えてはいなかった。これじゃ俺がアドバイスしても厳しいレベルだな。

 一方で討伐対象は既に傷も癒えて全回復してるみたいだし、このままじゃ倒すのに非常に時間がかかりそうな相手だと感じる。

「それなら、俺がやってみせる……!」

 キールがまたしても幾つものナイフを同時に投擲し、今度は花びらの中央にある口に全部命中するも、効いている様子はまったく見られない。

「ちっ、ダメか……」

 ん-、こりゃ確かに彼の言う通りダメそうだな……。

 実は、植物系のモンスターには総じて明確な急所というものがない。それは冒険者にとって周知の事実であり、再生が追い付かなくなるほどの火力でどんどん攻めるしかないってわけだ。

 つまり、俺たちの中で最も攻撃力の大きいバルダーが接近戦を仕掛けるべきなんだが、あの致命傷にもなりうる強烈な体液が邪魔になるからどうしようもない。

『シュルルルルルルッ』

「み、みんな、危ないっ……!」

 その間にカースフラワーから多数の蔓が伸びてきたが、ラダンが注意喚起とともに小型ハープで放った弓矢により、ことごとく射抜かれて事なきを得た。

 それでも、今のままでは埒が明かないってことで俺たちは一旦その場を離れることに。

「――バ、バルダー、大丈夫かい……?」

「ぐぐっ……ぜ、全然大丈夫じゃねえよ、ラダン……。あの体液を食らったらよ、激痛が襲ってくるだけじゃなくて、肩がまともに上がらなくなるんだ……イテテッ……」

「そうか……痛むだろうが、耐えてほしい。メルル、頼む、バルダーの傷をなんとかしてやってくれ!」

「はぁ、はぁ……なんとかしてあげたいのは山々だけど、私の未熟すぎる回復魔法じゃ治すのは無理だよ……」

「……お、おいメルル、それならポーションがあるだろ……!?」

「ポーションはもうとっくになくなってるよ。バルダーが全部飲んじゃったんだよ? こんなことになるならもっと持ってくればよかったぁ……」

「ち……ちくしょおぉっ……ここまで来たっていうのに、俺たちは結局失敗してしまうというのか……」

 ラダン、バルダー、メルル、キールの表情は、いずれも陰鬱としたものだった。もうなすすべがないと意気消沈しているのが痛いほど伝わってくる。そりゃそうだろう。実際にはまだ俺がいるわけだが、戦力として数には入ってないだろうから。

「……」

 やっぱり俺がやるしかないのか。

 正直な話、カースフラワーに関しては倒すのが難しい相手ではないと感じた。ただ、B級のそれなりにタフなモンスターということで、これ以上犯人にバレないように力を隠して戦うのは無理だとも思える。

 俺が今まで本気を出さなかったのは、ただの無能の振りをして犯人を大いに油断させるためだ。

 そのことにより、犯人は無能の黒魔導士が側にいるから、こいつを襲うことでいつでも依頼を失敗に持ち込めると楽観視したはず。その結果、呪い――すなわち妨害行為は緩やかなものとなったわけで、俺の狙い通りここまで順調に来ていると見ていい。

 それでも、よくよく考えてみたらもうこれ以上爪を隠す必要性は薄いとわかった。

 何故なら、討伐対象さえ倒してしまえばあとは帰還するだけだし、ここからいくら妨害行為を強めようとしてもできることは限られてくるからだ。

 そうだな……よし、決めた。この際、俺の力をみんなに見せてやるとしよう。魔力が低くてもちゃんと黒魔導士としてやれるんだってところを……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜

里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」  魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。  実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。  追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。  魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。  途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。  一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。 ※ヒロインの登場は遅めです。

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

処理中です...