21 / 66
二十一話 道具屋のおっさん、色々知る。
しおりを挟むエレネと二人で道具屋のベッドに戻ってきた俺は、早速神様から貰った新カードを見てみることにする。
ん……なんだこのカード……眼鏡のマークが描かれている。二つ並んだ丸の中にはSという文字。これは一体何を意味してるんだ……?
「眼鏡だから、掛けちゃいましょうか」
「あ……」
横から興味深そうに覗き込んできたエレネに盗られてしまった。眼鏡のマークをこっちに向ける形で目に当てている。
「……あ」
「ん、どうした、エレネ」
「えっと……モルネトさんのレベル、3だそうです」
「……え。それで俺のレベルがわかるのか」
「はい。目の前に浮かんできました」
ってことは……ステータスが見られるカードなのか。Sはその頭文字だったわけだな。しかしただの道具屋のおっさんである俺が3もあるとは思わなかった。どうせ1だとばかり……。
いつの間にどこで上げたんだろう? 夜のフィールドじゃ全然モンスター倒せなかったし、多分見回り兵士を殺したことで経験値を稼いだんだろうな。
「ほかにも、色んなの見えますよ。モルネトさんの腕力とか身長とか、あと年齢とか……うわっ……」
エレネが声を上ずらせた。なんだ? まさかこいつ、俺の変な情報まで覗いてるんじゃないだろうな。
「お、おい、エレネ。勝手に人の情報を覗くな!」
「ご、ごめんなさい……」
エレネがステータスカードを返してきたが、頬を赤らめてる。一体何を見たんだか……。
「何を見たのか正直に言えば許してやる」
「……えっと、その……イツデモキノコの大きさ……」
「……」
そんなものまで見られるのか、このカードは……。
「エレネって本当にスケベなんだな……」
「……うぅ、意地悪。モルネトさんのせいですよ……」
「何か言ったか?」
「いえっ」
自分で自分のステータスを見るにはどうすりゃいいんだろ? 裏返しにして目に当ててみるか。
……お、出てきた出てきた。
名前:モルネト
レベル:3
身長:168
体重:75
……おいおい、身長や体重までわかるのか。
魔法攻撃力:2
魔法耐性:1
……魔法攻撃力2か。俺にはまだ迅雷剣を使いこなせそうにないな。まあレベル自体3なんだし仕方ない。しかし俺の電撃であそこまでダメージを受けるオルグやあの正義マンの兵士はどれだけ雑魚なんだ……。
イツデモキノコ:通常時7cm 覚醒時15cm
……念じるとこんな情報まで出てくるのか……。
あ、そうだ。いいことを思い付いた……と思ったときにはエレネがいなかった。俺と常に一緒にいるから危険察知能力も高まったようだな。
「おい、エレネ、いるんだろ!」
「……いますけど、お願いです。それを私に使わないでください……」
声だけ近くから聞こえてくる。ってことはもうあそこしかないな。
「――みーつけた……」
「……うぅ……」
俺の思った通り、エレネはベッドの下でうずくまっていた。
「お願いです……私の体重だけはそれで調べるのをやめてください……」
「……体重?」
「はい……」
「……」
あんなに軽いのに。
……さてはこいつ、ほかに隠したいものがあるからそれでごまかそうってか。狡賢いエレネの考えそうなことだ。だが、その手には乗らんぞ。
「エレネ、わかった。体重はやめとくよ」
「……えっ……」
何気にショックを受けてそうな反応だった。やっぱりなあ。
「その代わり、オラおめーのクォウモンの皺の数を調べてやっからよ……」
「ひいぃ……」
カードをひっくり返して青い顔のエレネのほうに向けると、14本と出た。
「14本だって。この数字、ホントかなあ? 試しに見せてくれ」
「……うぅ。絶対言うと思ってました……」
なるほど……。エレネ、これを恐れてたんだな。観念したのか、ベッドの下から出てくると大人しく脱ぎ始めた。実際に確認したところ、その通りだった。凄いな、このカード……。
「もう、なんでも調べちゃってください。私は全部モルネトさんのものです……」
エレネのやつうっとりしやがって。俺以上の変態だな。ついでにこいつのレベル等を見てみたんだが、5もあった。
「おいおい、エレネ……お前5レベルもあるぞ。どこで上げたんだ?」
「ええっ? レベルなんて上げてませんよ。でも、いつも馬車を使わずに歩くようにはしてます」
「……あれか。ダイエットのためか?」
「それと、足腰を鍛えるためです」
「……なるほどなあ。それであんなに体力があって打たれ強いのか……」
「……はい」
レベルが5になるくらいだから、相当な距離を毎日歩いてたんだろうな。オルグの武器屋からこの道具屋は結構距離があるし……。
てかなんだこいつ、もじもじしやがって……あ、そうか。いじめてほしいんだな。
「エレネ、殴ってほしいのか?」
「……す、少し……」
「なら、久しぶりにたっぷり甚振ってやる。歯ァ食い縛れ! オラオラオラオラオラオラロアラオラオラオラオラオラオラオララロオラロアララッ!」
「ぶええぇえええええええぇぇえぇぇえっ!」
エレネの断末魔の悲鳴が周囲にこだました。ループのスタート地点に戻ったばかりだし、死んでも安心だ。
1
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる