30 / 66
三十話 道具屋のおっさん、見せつける。
しおりを挟む
「ただいまー」
武器屋でエレネとお楽しみ中、オルグが帰ってきた。
手筈通り、俺はすぐに店内の展示ケースの後ろに隠れる。前回あっさりお別れしたときに気付いたが、こいつをいじめないと何か物足りなくなることに気付いたんだ。兄妹そろってそういう性質があるのかもな。
「おかえりなさい、オルグ兄さん……」
「……って、あれ? エレネ……なな、なんで全裸……!?」
「……実は……ぐすっ……」
エレネのやつ、顔に両手を当てて泣き崩れてる。演技が上手いなんてもんじゃないな。こいつもジーク・モルネトにまた一歩近付いている……。
「……ま、ま、ま……」
「……」
俺はオルグのあまりの動揺振りを見て、笑いを堪えるのに必死だった。
「ま、まさか……や、や、やられちゃった……?」
「……うん。ごめんね、兄さん……」
エレネがうなずくとオルグの顔が見る見る赤くなった。まあ察するよな……。
「……だ、誰が……こんなっ……許せない……許せないぃぃ……あああああぁぁぁぁっ! いだあぁぁ!」
あいつ、気が狂ったように暴れ始めたが、足の指が展示ケースの角に当たったのか転げ回っている。いちいち笑わせに来るやつだ……。
「だ、大丈夫? 兄さん……」
「いだだぁ……。だ、大丈夫だっ……。エレネ、とりあえず服を着てくれ……」
「うん……でも、もういいの。しばらくこのままでいさせて……」
「畜生……何も知らない純粋な妹を傷つけたのは一体誰なんだ……」
オルグ、すまんな。それは俺で、しかもエレネはもうただのウサビッチなんだ……。
「……は、はん……」
お、ビッチのやつ早速この状況に興奮したのか、自分の股に手を当てて恍惚とした顔になった。
「……エレネ……くっ。穢れてしまった体を無性に洗いたくなる気持ちはよくわかる。お前の仇は兄さんが必ず取る……」
オルグのやつ勝手に解釈してるし、しかも仇って……殺されたわけでもないのに。兄妹だが年齢が離れてるのも大きいのか、相当熱を上げてたみたいだな……。
「それが……兄さん……」
「ん?」
「相手はそこに……」
「な、なんだって!?」
さー、そろそろいいだろ。満を持してのジーク・モルネト降臨である……。
「よー、久々だな、オルグ」
「も、モルネト君……!? ……え、まさか君が……?」
「ああ、オラが頂いちまったぜ。おめぇのでぇじな妹の穴をよぉ。すんげぇ気持ちよさそうにしてたから、感謝してくれよな兄さん?」
俺は歯茎丸出しで大股開きになると、股間を触って挑発してみせた。
「お、おのれ……」
「おっと、わりーけどオラにはこれがあんだよ」
近寄ろうとしてきたオルグに自慢の看板娘を見せつけてやる。
「そ、それは……迅雷剣!? な、何故……」
「それが、兄さん……処女を奪われたくなきゃ、鍵を持ってこいって脅されて……それで……」
エレネのやつノリノリだな……。
「う、うぬぅぅー。で、でもエレネ、よく鍵を見つけたね……」
「え?」
「普通のと違って、迅雷剣のケースを開ける鍵は倉庫に入れてあるんだけど、暗号を解かないと開けられないのに……。偶然だろうけどまさかそれを解読してしまうなんて……」
……興味深い話だ。この先迅雷剣を紛失する可能性もあるし、聞いておいたほうがいいのかもしれない。じゃないとオルグが帰ってくるまで待たなきゃいけなくなるからな。
「……なんとかしようと思ってたら、自然と開いちゃって……」
「そうか……頑張ったね……はっ。もしかしてエレネ……兄さんの気持ち、知ってたのかい……?」
「……どういうこと?」
「オルグ兄さん大好き……それが暗号だったんだ……」
「そ、そうだったんだ……うん。兄さんのこと、好きだよ……」
「エレネ……!」
オルグの野郎が泣きながらエレネに抱き付いてる。胸糞だな。
「でも私ね、モルネトさんのほうがもっと好き……」
「……え、エレネ……?」
おー、いいぞいいぞ。オルグのショックを受けた顔、最高に受ける……ププッ……。
「こんな……なんの取り柄もない貧乏底辺道具屋のどこがいいんだ……」
お、本音が出たな。
「違うよ。モルネトさんはとても素敵な人なんだよ、兄さん……」
「エレネ……そうか。初めてを奪われたから……初めての相手だから、悪い人じゃないと思い込みたいんだね。でも、それは違う……」
「兄さん……?」
「体は汚れても……心は汚れてないんだ。だから、大丈夫だ。エレネ、君はまだ汚れていない……。こんな汚い底辺道具屋なんかじゃ決して君を穢せやしない……」
……かー、こいつ、放っておくとホントむかつくやつだな。そろそろ幕引きにすっか。
「おうおう、言ってくれるじゃねえか自慢野郎がよぉ。オラには迅雷剣があるの、忘れてねぇか?」
「……ちっちっち……」
「ん?」
「モルネト君、甘いよ。それは魔法攻撃力が高い人のためのものなんだ。君なんかが扱える代物じゃないんだよ……」
「俺のレベル、175なんだが……」
「……またまたぁ。そんな嘘を……」
「オルグ兄さん、大嫌い」
「……え、エレネ?」
はっはっは。空気を読んでくれたな、エレネ。
「ほら、こっち来い、エレネ、お前の大好きな俺の唇だよ」
「はい。嬉しいですっ……」
「「……ちゅー……」」
「そ、そんな……。やめろ……やめろおおおおぉぉぉ!」
やつが怒り狂って間近に迫ってきたところで、タイミングよく迅雷剣を振ってやった。
「えびゃああああああぁぁぁぁぁあああああっ!」
電撃の中で踊り狂うオルグ。予想以上に面白く死んでくれたな……。
武器屋でエレネとお楽しみ中、オルグが帰ってきた。
手筈通り、俺はすぐに店内の展示ケースの後ろに隠れる。前回あっさりお別れしたときに気付いたが、こいつをいじめないと何か物足りなくなることに気付いたんだ。兄妹そろってそういう性質があるのかもな。
「おかえりなさい、オルグ兄さん……」
「……って、あれ? エレネ……なな、なんで全裸……!?」
「……実は……ぐすっ……」
エレネのやつ、顔に両手を当てて泣き崩れてる。演技が上手いなんてもんじゃないな。こいつもジーク・モルネトにまた一歩近付いている……。
「……ま、ま、ま……」
「……」
俺はオルグのあまりの動揺振りを見て、笑いを堪えるのに必死だった。
「ま、まさか……や、や、やられちゃった……?」
「……うん。ごめんね、兄さん……」
エレネがうなずくとオルグの顔が見る見る赤くなった。まあ察するよな……。
「……だ、誰が……こんなっ……許せない……許せないぃぃ……あああああぁぁぁぁっ! いだあぁぁ!」
あいつ、気が狂ったように暴れ始めたが、足の指が展示ケースの角に当たったのか転げ回っている。いちいち笑わせに来るやつだ……。
「だ、大丈夫? 兄さん……」
「いだだぁ……。だ、大丈夫だっ……。エレネ、とりあえず服を着てくれ……」
「うん……でも、もういいの。しばらくこのままでいさせて……」
「畜生……何も知らない純粋な妹を傷つけたのは一体誰なんだ……」
オルグ、すまんな。それは俺で、しかもエレネはもうただのウサビッチなんだ……。
「……は、はん……」
お、ビッチのやつ早速この状況に興奮したのか、自分の股に手を当てて恍惚とした顔になった。
「……エレネ……くっ。穢れてしまった体を無性に洗いたくなる気持ちはよくわかる。お前の仇は兄さんが必ず取る……」
オルグのやつ勝手に解釈してるし、しかも仇って……殺されたわけでもないのに。兄妹だが年齢が離れてるのも大きいのか、相当熱を上げてたみたいだな……。
「それが……兄さん……」
「ん?」
「相手はそこに……」
「な、なんだって!?」
さー、そろそろいいだろ。満を持してのジーク・モルネト降臨である……。
「よー、久々だな、オルグ」
「も、モルネト君……!? ……え、まさか君が……?」
「ああ、オラが頂いちまったぜ。おめぇのでぇじな妹の穴をよぉ。すんげぇ気持ちよさそうにしてたから、感謝してくれよな兄さん?」
俺は歯茎丸出しで大股開きになると、股間を触って挑発してみせた。
「お、おのれ……」
「おっと、わりーけどオラにはこれがあんだよ」
近寄ろうとしてきたオルグに自慢の看板娘を見せつけてやる。
「そ、それは……迅雷剣!? な、何故……」
「それが、兄さん……処女を奪われたくなきゃ、鍵を持ってこいって脅されて……それで……」
エレネのやつノリノリだな……。
「う、うぬぅぅー。で、でもエレネ、よく鍵を見つけたね……」
「え?」
「普通のと違って、迅雷剣のケースを開ける鍵は倉庫に入れてあるんだけど、暗号を解かないと開けられないのに……。偶然だろうけどまさかそれを解読してしまうなんて……」
……興味深い話だ。この先迅雷剣を紛失する可能性もあるし、聞いておいたほうがいいのかもしれない。じゃないとオルグが帰ってくるまで待たなきゃいけなくなるからな。
「……なんとかしようと思ってたら、自然と開いちゃって……」
「そうか……頑張ったね……はっ。もしかしてエレネ……兄さんの気持ち、知ってたのかい……?」
「……どういうこと?」
「オルグ兄さん大好き……それが暗号だったんだ……」
「そ、そうだったんだ……うん。兄さんのこと、好きだよ……」
「エレネ……!」
オルグの野郎が泣きながらエレネに抱き付いてる。胸糞だな。
「でも私ね、モルネトさんのほうがもっと好き……」
「……え、エレネ……?」
おー、いいぞいいぞ。オルグのショックを受けた顔、最高に受ける……ププッ……。
「こんな……なんの取り柄もない貧乏底辺道具屋のどこがいいんだ……」
お、本音が出たな。
「違うよ。モルネトさんはとても素敵な人なんだよ、兄さん……」
「エレネ……そうか。初めてを奪われたから……初めての相手だから、悪い人じゃないと思い込みたいんだね。でも、それは違う……」
「兄さん……?」
「体は汚れても……心は汚れてないんだ。だから、大丈夫だ。エレネ、君はまだ汚れていない……。こんな汚い底辺道具屋なんかじゃ決して君を穢せやしない……」
……かー、こいつ、放っておくとホントむかつくやつだな。そろそろ幕引きにすっか。
「おうおう、言ってくれるじゃねえか自慢野郎がよぉ。オラには迅雷剣があるの、忘れてねぇか?」
「……ちっちっち……」
「ん?」
「モルネト君、甘いよ。それは魔法攻撃力が高い人のためのものなんだ。君なんかが扱える代物じゃないんだよ……」
「俺のレベル、175なんだが……」
「……またまたぁ。そんな嘘を……」
「オルグ兄さん、大嫌い」
「……え、エレネ?」
はっはっは。空気を読んでくれたな、エレネ。
「ほら、こっち来い、エレネ、お前の大好きな俺の唇だよ」
「はい。嬉しいですっ……」
「「……ちゅー……」」
「そ、そんな……。やめろ……やめろおおおおぉぉぉ!」
やつが怒り狂って間近に迫ってきたところで、タイミングよく迅雷剣を振ってやった。
「えびゃああああああぁぁぁぁぁあああああっ!」
電撃の中で踊り狂うオルグ。予想以上に面白く死んでくれたな……。
1
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる