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五十話 道具屋のおっさん、ピクピクする。

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「……」

 武器屋を出て、大通りを左に曲がって……さあ神様だ! って思ってたんだが出てこなかった。

「今日は神様のほうから出向いてこないのか?」

「みたいですねぇ」

「うむ……」

 両脇に従えた性奴隷のエレネとリュリアが即座に同意してくる。神様のやつ、何故だ? まさか、俺がハーレムを築いてることに対して拗ねたんじゃないだろうな。

 しばらくしてようやく例の光がぼんやりと見えてきた。いつもの場所で座ってるっぽい。

 灯りに照らされた三枚のカードの前、ツインテールの幼女――ロリジジイ――の神様が笑顔で手を振ってくる。

 あの様子を見てるといじけてる感じでもないな……。今日はただ単に歩くのが面倒で座ってただけなんだろうか? しかも、薄手の黒い服を纏っていて恥じらいを演出した気配もない。さすがに飽きちゃったか?

「――よう来たのー。モルネト、エレネ、リュリアッ」

「神様、今日は恥じらいを見せてくれないのか?」

「む? 恥じらいならもう既に用意しとるぞっ」

「「「えっ」」」

 俺と奴隷たちの声が被る。

 何も変わったところはないように見えるが……ん? 神様、なんかソワソワしてるな。おしっこでも我慢してるんだろうか。ただ、顔を見ても切迫感はまったく伝わってこないし、むしろ時折ほくそ笑むことから考えても違うっぽい。

「わからんかのー。モルネトよ、わしの体を近くでよく見ることじゃっ……」

 神様がニヤリと笑って立ち上がり、腰に両手を置いた。

「何かおかしいところがあるじゃろ? それを見つけることじゃ……」

「……」

 おかしいところ? 別にどこも……あっ……。

「ホッホッホ……」

 不自然な割れ目が股間にあると思ったら……そうか、そういうことか。

「ようやくわかったようじゃのっ」

「裸に服をペイントしてたんだな」

「「えええっ」」

 エレネとリュリアが飛び掛かるようにすぐ近くで凝視して、神様が体をくねらせている。

「いやあぁん、なのじゃっ……」

「……」

 確かに変態的だが……神様、見破られてすっごく嬉しそうだし、やっぱり恥じらいをわかってないな。

「むう……恥じらいというのは難しいのう……」

 神様、本気で理解する気はあるんだろうか……。でも、裸ペイント自体は割とツボだった。

「神様、ちょっとピクっときたよ」

「おおおっ! 本当かの!?」

 俺の股間に鼻を押し付けてくる神様。物理攻撃は止めろ。

「し、失礼しましたなのじゃっ。めんごぉ」

「今のはともかく、ちょびっとだけど来たよ」

「そりゃ嬉しいのじゃ! この調子なら覚醒フルボッキも近いの!」

「……」

 まさか、勃起するかどうかで神様を一喜一憂させる男になるとはな。まさにジーク・モルネトだ。

「う、自惚れるでない! モルネトのバカァ!」

「……」

 無理矢理ツンを入れてきた感じだな。っと、そろそろカードを引かないと……。

「うむ……あと三枚じゃが、どれにするかの?」

「……」

 俺は真ん中のカードを引きたいと思いつつ、占いカードを取り出した。こいつをおでこに当てて未来を暴いてやる。

「――あれ?」

「モルネトさん?」

「モルネトどの?」

「……見えない……」

「「ええっ?」」

「ホッホッホ。占いカードなんか通じんぞ」

 神様ドヤってるな。やはりこの手は通じないか……。

「うむ。ズル対策はきっちり講じておる」

 恥じらいとかはまったくわからないのに、こういうとこはしっかりしている。ある意味神様らしいな。

「ホッホッホ。時間がないぞ。早く引くがいい」

 神様の言う通りだ。急がねば……。

「リュリア、引きなさい」

「はっ……」

 やはり運の数値が一番の彼女に引かせるべきだ。でも、手が震えてるな。気合を入れてやるか。

「頼むぞ、リュリア!」

 おっぱいを揉みつつ、尻を優しく撫でてやる。

「……はい……んっ……も、モルネトどの……こ、こんなところ……で」

「気合を入れるためだ! 我慢しろ!」

「は、はい」

「モルネトよ、それは気合を入れてるようには見えんぞ」

「そうですよ、おかしいですよこんなの」

「……」

 神様とエレネからブーイングが上がる。

「もう私が引きますっ」

「「「あっ」」」

 勝手に真ん中のカードを引いたエレネの蛮行に対し、神様、俺、リュリアの声が被る。

「死ねウサビッチ!」

「ひゃう!」

 エレネをぶん殴ってカードを取り上げる。

「か、神様、これは無効ってことで……」

「ダメじゃ! とっとと見せい!」

「ちっ……」

 仕方ない。渋々見せると、神様がぎょっとした顔になった。うわ、やっちゃったか……?

「んー……大丈夫じゃ」

「じゃあなんでそんな顔したんだよ!」

「あれだ、ただの悪戯というやつじゃ……」

「おいおい……」

 俺の拳は震えていた。ぶん殴ろうかと思ったけど神様だからな。ジーク・モルネトとはいえ、まだ俺が本当の意味で神と同等になるまでは、我慢、我慢。

「ホッホッホ。それが賢明じゃよ」

「……」

 目を光らせる幼女。変態ペイントを施してるくせに、やっぱり神様だけあって滅茶苦茶威厳がある……って、視界が歪んでいく。また説明を聞けなかった……。
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