没落貴族に転生した俺、外れ職【吟遊詩人】が規格外のジョブだったので無双しながら領地開拓を目指す

名無し

文字の大きさ
13 / 21

組み合わせ

しおりを挟む

 自分のジョブレベルが3になり、エリュネシアとともに屋敷へ戻る頃にはもう夕方になっていた。

 楽しいと思っていると時間があっという間に過ぎるというのは本当だな。現実世界じゃ仕事場での時間が異様に長く感じたもんだ。

 さらに、忠実なメイドが夕食まで当たり前のように作ってくれるからありがたい。以前は一人寂しくカップラーメンか弁当を買うか、あるいはたまに外食か自分で何か作って食べるだけだったから。

「すみません、シオン様、節約のためですけど、いつもこんな質素な食事で……」

「え、いや、美味しいよ」

「ふふっ。シオン様のそういうところは、本当にお変わりがなくて好きです!」

「……」

 へえ、旧シオンもいいところはあったんだな。

「お野菜とかは全部残されていましたけどね……」

「あっ……」

 俺が普通に野菜を食べているところを不審気に見られてしまった。

「おかしいですよねえ。以前は間違って口にしようものなら、苦い顔で吐き出すほどでしたのに……」

「あ、アレだよ、エリュたん」

「アレ……?」

「ほら、あれだけ運動したおかげなのか、いつの間にか野菜も美味しく感じちゃって、普通に食べちゃってたんだ……」

「あー、それででしたか! シオン様がジョブを授かってからというもの、良い連鎖が続いてますねえ……」

「う、うん……」

 なんとかごまかせたみたいだな。

 さて、食べ終わったし食器を洗うか。

「シオン様、それはメイドであるわたくしめの仕事ですっ!」

「あ……」

 ついつい、いつもの癖で普通にやってしまっていた。これじゃ彼女の立場がない。

 さあ、エリュネシアが家事をしてくれているその間に、俺は自室に戻って音を調和させる作業に入るか……。

「……」

 部屋に入ったあと、俺は重要なことに気が付いてしまった。

 どうすれば風の音と怒声を調和できるんだ?

《二つの音をイメージしながら同時に鳴らしてください》

 心の声が聞こえてくる。同時に、か。なるほど……。

 そういうわけで、風の音と怒声をイメージしつつ例の剣型楽器の弦を爪弾いてやった。

《咆哮の歌を習得しました》

 咆哮の歌だって? なんか本格的だな。どんな効果なのか見てみるか。

 名称:咆哮の歌
 習得可能レベル:3
 効果:演奏者自身、および味方だと思っている者を除く、この音を聞いた者に対し、自分よりレベルの低い相手を麻痺させる。
 副作用:体力と気力の消耗・小
 調和:不可

 これは……逃げ惑うゴブリン相手に使えるし、今の状況にはうってつけの技だな。明日が楽しみになってきた……。



『『『『『グギャアアアアッ!』』』』』

 あくる日のゴブリンエリアにて、やつらの断末魔の悲鳴が響き渡る。

 思った通り、フォレストゴブリンたちは俺を見て一斉に逃げようとしたが、咆哮の音によって身動きが取れなくなり、俺のソードギター(本日命名)により、同時に首が飛んだ。

 至高の瞬間だが、俺はゴブリン狩りを始めて早々、エリュネシアの元へと引き上げていった。

「あれれ、シオン様、もう帰られるのですか? もしかして、どこか具合でも悪いのでしょうか……」

「いや、違う、ほかに理由がある」

「あ、わかりました、おパンツの時間ですね!」

「いや、違う」

 そんな時間があってたまるか。

「そ、それでは、胸をお揉みなる時間……?」

「いや、それも違う!」

「で、では、一体……はっ、もしや、いかがわしい行為をなさる時間ではっ……で、ですが、わたくしめはまだ処女でして……そ、それでもよければ、屋敷内で真っ暗にして……」

「いや、だから勘違いするなって! レベルを上げさせようと思ってな」

「えぇ? レベルを上げさせるということは、まさか、わたくしめの……?」

「ああ、ヒールをするたびにきつそうだしな。エリュは俺よりずっと前にジョブを貰ったのにまだレベル3だし、今のままじゃ上がらないんじゃないか?」

「た、確かにそうですが……」

「とにかく来るんだ」

「シ、シオン様っ!? わたくしめは、まだ心の準備がっ……!」



 ◆ ◆ ◆



『グギャアアァッ!』

「「「「「……」」」」」

 動かなくなったゴブリンに対し、エリュネシアが杖で殴りつける場面を見つめるルチアードと、その配下たち。

「見たか、ゲラード。シオン殿は、獣の遠吠えのような演奏でゴブリンどもを動けなくしたのだ。これは凄いぞ……」

「ふわぁ……一応見ましたよ。しかし、領主様はなんでまたメイドなんかに殴らせてるんですかねえ」

「わからぬのか、ゲラード? あれはおそらく仲間を守るためでもある。エリュネシア殿は女中という身分ではあるが、先代様からシオン様の世話を任されてきたのだ。自分だけでなく、仲間のレベルを上げようとなさるとは、なんと思慮深い方なのだろうか……」

「いささか、大袈裟な解釈じゃないですかねえ?」

「ゲラード……」

「そ、そんなに睨まないでくださいよお。てか、もう領主様の力を認めちゃってもいいんですかい? ルチアード様が個人的に気に入ってるのはわかりますが、それなら尚更、力量が先代様クラスでなければ、領主という重荷を下ろしてやるべきですよ」

「そんなことは百も承知。それがしを舐めるな。その件に関しては私情を捨てて結論を出すつもりでいる。今日を入れてあと四日後にな……」

 シオンたちがいる前方を食い入るように見つめるルチアード。その鋭い眼差しが途絶える気配は一向になかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...