救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し

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第二四話 一方的

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「え……?」

 俺は一瞬の隙を突いたつもりだったが、俺の右手は虚しく宙を空振りしていた。

 目前にいるはずのダーナはただの残像だったんだ。じゃあ、砲弾のスキルを使っている間、やつは一体どこにいるっていうんだ……?

「ぐあああぁぁっ!」

 その直後、俺の背中からボキッという鈍い音がするのがわかった。血を吐くほどの衝撃と苦痛、それに絶望感まで襲ってきてそれが何よりも辛く感じる。それからはもう、俺は一方的にダーナからやられっぱなしになっていた。

「――か、かはっ……」

「テ、テッドオォォッ!」

「ボスウウゥゥッ!」

「…………」

 アントンとスティングの声が小さく聞こえる。打つ手がなくなった俺は、ひたすらボコボコにされていた。

 けど、もうどうしようもないんだ。砲弾攻撃の連打ができないのはわかったが、俺が知ることができたのはそれだけだった。その間にダーナが反動で硬直状態になってるはずなのに、そうじゃなかった。

 やつは砲弾攻撃をする間、残像のみを残して本体を暗ましてるんだ。これじゃ反撃のしようがないじゃないか……。

「テッド、今から喧嘩をやめたいなんて言っても、もう遅いよっ!」

「がはあっ……!」

 とうとう、視界までぼんやりしてきた。

 俺はここで死ぬっていうのか。こんなところで……。

 シェリア、済まない。帰ってこられなくても、どうか俺のことを恨まないでくれ……。

『もし帰ってこなかったら……私、テッドのこと絶対に許さないから』

「…………」

 そうだよな、シェリア……。っていうか、俺は彼女やアスタルにもう逃げないことを誓ったっていうのに、バカだ。弱ったことで楽な方向へ行ってしまっていた。

 弱点がないやつなんていない。必ずどこかにチャンスが眠っているはずで、なんとしてもそれを見つけ出すんだ。

 ダーナが砲弾のスキルを使うときは無敵状態で、その間は彼女の残像しか見えないが、本体は絶対にどこかに存在している。

 それはどこにあるんだ――って、そうだ、灯台下暗しとはこのことだった。

 そもそも、本体がいないなら攻撃なんてできるわけがないし、連打できないということは反動、つまり隙が生じているということ。

 もし間違っていたらこっちが死ぬが、おそらく正解だろう。

 よし、今に見てろ……。俺は【鋼鉄の意思】を解除し、スピードを格段に上げた。相手も敏捷なのでリスクは高いが、当たらなければなんの問題もない。それに今まで遅かった分緩急にもなるし、これならダーナを捕まえられるはずだ……。



 ◆◆◆



「よーし、いいぞ、眼帯女、そこだっ! テッドのやつをさっさとぶっ殺してくれ!」

「素晴らしいショーだと思わんかね。ハハハッ……見ろ、テッドがゴミのようだ……! この調子ならテッドがただの肉塊になるのも時間の問題というものだろう!」

「今だ、やれっす! テッドをぶちのめせっす!」

 アセンドラの冒険者ギルド、そのギルド長室にて、ライル、ヘルゲン、フォーゼの三人が水晶玉の前で拳を振り上げていた。それもそのはずで、憎きテッドが眼帯女のダーナに一方的に叩きのめされるシーンが映し出されていたからだ。

「「「……」」」

 だが、それも長くは続かなかった。ダーナの物凄い速度の攻撃を、テッドが間一髪のところでかわした直後のことだった。

「あ、あれ? ダーナはどこへ消えた?」

「もう少しでテッドを倒せるというのに……」

「あ、いたっす……! あそこ!」

「「あっ……!」」

 フォーゼの指差した方向にダーナがいたが、その背後にはテッドがおり、羽交い絞めにされる格好になっていた。

『やっぱり、お前自身が砲弾と融合していたんだな。攻撃した直後は反動で隙が生じるから、砲弾攻撃しつつどこかに隠れてたんだろうが、砲弾そのものを捕えれば問題ない』

『ち、畜生……不覚を取っちまったよ……ぐぐっ……』

 ダーナは激しく抵抗するも、テッドに後ろから一方的に首を絞められ、まもなくぐったりとした様子で両腕を下ろした。

『只今の喧嘩、囚人番号121の勝ちだ!』

『『『『『ワーッ!』』』』』

「「「……」」」

 看守キルキルの声とともに囚人たちの歓声が上がる中、しばらくライルたちは放心した表情だったものの、まもなく一様に水晶玉を睨みつけた。

「テッド……運がいいのはわかったから、いい加減にしてくれ。君なんかが生きていい理由はないはず。これだけ僕が願っているのに、どうしてくたばってくれないんだ……」

「おのれ……テッド、貴様如き無能が何故あがくのだ。大人しく死んでいればいいものを……」

「はー、マジやべえ……いやー、最高にうざいっすね、テッドとかいうの。あのゴミムシ、ふざけやがって……」

 ライルとヘルゲンの顔色を窺いながら、温度差がありつつも調子を合わせるように話すフォーゼだった。
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