49 / 93
49話 理由付け
しおりを挟む「それっ、それそれえっ!」
「ぐっ、ぐぐぐぐうっ……!」
クアドロの目に怯えの色が顕著に見られたのは正直意外だった。あれだけ畜生魂を見せつけてきても、そこはやっぱり人間の血が混じってるってことなのか。
それでも僕にはわかる。こうして弱さを見せてる間にも、虎視眈々と反撃のチャンスを窺っているということを……。
「殺された村人たちの無念を晴らすためにもなるべく苦しめてやるよ。だからすぐには殺さない……」
「おごおおおおぉっ……!」
明らかな手加減をしてるわけを見抜かれないためにも、その理由付けをすることを忘れちゃいけない。
「あ、あと少しだあぁっ、もうあとほんの少しなんだああぁぁっ……」
クアドラはもう、焦りからか【進化】を使おうとしてるってことを隠さなくなった。
「――来たあああぁぁぁっ!」
クアドラが勝ち誇ったように叫び、足元に魔法陣が浮かび上がってくるのが見える。どうやら【進化】のクールタイムが終わったから使用するみたいだね。これで【寄生】が【調和】になったら終わったも同然だし、黙って見てるわけにはいかない。僕はそのタイミングで兄のジギルのほうに【瞬殺】を使った。
クアドラの魔法陣が一回転し終わり、そこで次に【削除&復元】を使用する。
名前:カイン
レベル:42
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:A級
能力値:
腕力S+
敏捷C
体力A
器用B
運勢C
知性S+
装備:
ルーズダガー
ヴァリアントメイル
怪力の腕輪
クイーンサークレット
スキル:
【削除&復元】B
【ストーンアロー】C
【殺意の波動】B
【偽装】C
【ウィンドブレイド】D
【鑑定士】B
【武闘家】B
【瞬殺】E
【亜人化】E
【難攻不落】E
【進化】F
テクニック:
《跳躍・大》
《盗み・中》
《裁縫・大》
ダストボックス:
アルウ(亡霊)
ファラン(亡霊)
おおっ、【進化】を自分のものにできてる。【寄生】を持ってるジギルが一瞬でも死んだら【進化】は空振りになって、僕を倒すために使ったっていう部分だけがクローズアップされるわけだから削除できるってわけだ。
ほかにはテクニックの《跳躍・大》の部分も光ってる。僕が移動だけじゃなく戦闘中にもよく使ってるものだからそりゃ上がるよね。
「な、な、なあああぁぁっ……!?」
クアドラは【調和】が完成しないことで、頭の中が真っ白になってるみたいだ。残されたのが【寄生】だけじゃ何も完成しないだろうしね。これは気味が悪いから別にいらないけど。
さて……あとは活力の帯を盗むだけでお役御免だ。っていうわけで何度か《盗み・中》を使ったらあっさり盗んでしまった。どうせならこれも沢山使うことで大まで上げたかったのに……。まあいっか。
「さあ、そろそろ終わりにしよっか?」
「ま、待ってくれええぇ。人間さあん……」
「……」
「もう、俺は何もしないしい、村人を沢山殺してしまったことも謝るうぅ。反省しているしぃ、実に申し訳なかったぁ。本当だあぁ。俺にも人の血が混じっているんだからあぁぁ……」
「大勢の村人を虐殺しておいて、今更そんなこと言われても……はっ――?」
「――ヒヒッ……」
なるほどね。いつの間にか【寄生】してるはずの兄のジギルが分離してて後ろに回ってたのか……。
◆◆◆
「カ、カインのバカ野郎が。これでもうあいつは終わりだ……」
頭を抱えるナセル。たった今、カインがクアドラから分離した猪人族の男に回り込まれ、羽交い絞めにされたのだ。
「はあ……。カインもいよいよ散っちゃうのね」
「オーマイゴッド! カインよ、永遠に……」
「カインさんがやられてる今のうちに、早くここから逃げちゃいましょうか――」
「――ククッ……お前たち、あれをよく見るがいい……」
「「「「へっ……?」」」」
仮面の男が指差した方向にナセルらの視線が集まる。そこでは、羽交い絞めにされていたはずのカインの姿が忽然と消えているところだった。
「なっ……!? じゃあカインの野郎はどこにいやがるんだ!?」
「上だ」
「「「「えっ……?」」」」
ナセルたちが見上げると信じられないほど高い位置にカインがいて、まもなく真下では矢の如き石つぶてと刃を思わせる鋭利な風が混ざり合い、赤茶色の粉塵が巻き起こるところだった。
「「ぎえええええええぇぇぇっ!」」
「「「「な、なんで……?」」」」
「よく聞け。カインは幻術のようなものを使って騙してみせたというわけだ。クアドラたちを天国から地獄に叩き落とすために、わざとな……」
「と、とんでもねえ……」
「ホント……」
「オーノー、レベルが違うっ……」
「ですねぇ……」
仮面の男の説明により、しばらく脱帽した様子のナセルたちだったが、まもなく苛立った表情で男の周りを取り囲んだ。
「てかおい、仮面野郎……お前、自分の立場わかってんのか……?」
「そうよ、今までよくも……」
「イエスッ、リベンジタイムだっ!」
「やっつけてあげます……」
「ククッ……クアドラがいなくなった影響もあるだろうが、吾輩が一人なことに気付いて強気に出たというわけか。ではやってみるがいい。やれるものなら、な……」
「「「「っ……!?」」」」
血を吐きながら倒れた仮面の男に対し、近寄ることすらできないので驚愕の表情を見せるナセルたち。
「ククッ……吾輩のこの【死んだ振り】スキルは、防御面に関しては無敵なのだよ。この状態でほかにやれることがあまりない分、な……」
仮面の男はそう呟くと、口元に薄らと笑みを浮かべつつ口笛を吹いた。
「「「「――あっ……」」」」
それからほどなくして、ナセルたちは屈強な男たちに囲まれることとなるのであった……。
34
あなたにおすすめの小説
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる