27 / 50
27話 痛感
あれから俺とリリは、今までと同じように【歩き屋】スキルを駆使してほかの被害者宅を訪問して回ることになった。
元仲間のアッシュたちに対して、本当に余計なことをしてくれたなという思いはもちろんあるんだが、それは些細なことだ。
今回痛感したのは、パートナーであるリリの存在がいかに大事だったかということや、【鬼顔】【笑いのツボ】【大興奮】等、ゴミスキルもかなり厄介なデバフ系スキルになりうるということ。
つまり、それらを解体して新たなスキルとして構築できる【分解】は、無限の可能性を秘めていると改めて気付くことができた。いずれは俺とリリだけでダンジョンに潜ったり、危険な依頼をこなしたりできるようになるかもしれないな。
「――ふう……大体こんなもんか。疲れたな、リリ……」
「だねえ、お腹ペッコペコだよ……」
いつの間にか、空からは夕陽が射し込んでいた。もうそんなに経ってたんだな。夢中になってたせいか気付かなかった。留守の家もあったが、そこには宣伝の貼り紙だけを置き、ほとんどの被害者宅を回ったこともあって俺たちは帰路に就くことに。
金貨1枚、銀貨2枚、銅貨260枚まで貯まったこともあり、高級宿にでも泊まろうかとも思ったんだが、やっぱり今は落ち着きたいっていう気持ちが一番強いので、馴染みのおんぼろ宿『桃源郷』へと向かうことに。
「――あ、ポポンがポンッ、ポポンがポンッ……!」
「「あはは……」」
商店街に差し掛かり、ポポンガおじさんのダミ声を耳にして、俺たちはどこかホッとしたような苦い笑みを向け合う。彼の場合、最早安心感をメインに売っているといっても過言じゃないのかもしれない。
「……」
賑やかな商店街を抜け、薄暗い道をしばらく歩いていたときだった。背後から複数の人物につけられているとわかった。
「リリ、誰かにつけられてる。宿まで一気に走るぞ……!」
「あ、あいよっ……!」
よくよく考えてみれば、なんでも解決屋はアッシュたちのせいで相当な恨みを買っていたはずで、しかもそれは客だけの話じゃなくて、銅貨1枚という廉価によって商売敵にも大きなダメージを与えていたのは想像に難くない。
「「――はっ……!?」」
正面からも複数、誰かが来るのがわかって引き返し始めたら、後ろから来た連中と挟まれる格好になった。
「くっ……! こっちの動きを完全に読まれている……」
「や、厄介な相手だねえ……って、そうだ。フォード、あたしが囮になるよ。やつらが捕まえようとしてくるところで、【足掬い】を使えばいいんだっ……!」
「いや……いい考えだと思うが、じりじりと迫ってくる状態の相手にそれは効果が薄い。まず、引き付けるだけ引き付けて、それから【希薄】で存在感をお互いに消して一点突破したあと、追いかけて来る相手にそれを使ってくれ」
「あいよ……!」
俺たちは意思の疎通を済ませ、うなずき合う。多勢に無勢で、もし捕まったら死ぬまでボコられる可能性だってあるし、なんとか逃げ切るしかない……。
◆◆◆
「「「「はあ……」」」」
都の商店街から少し離れた場所にて、なんとも肩身が狭い様子でひっそりと歩く者たちがいた。
「あー、早く酒を浴びるほどがぶ飲みしてえなあぁ……」
「うー……パルルもお酒じゃんじゃん飲みたいしー、美味しいものもお腹いっぱい食べたいよおー……」
「アッシュさん、パルルさん……僕たちは釈放されたばかりなわけですから、ほとぼりが冷めるまでしばらくは大人しくしておいたほうが無難でしょう。かなりの苦情が入ったからこそ兵士が動いたのでしょうし……」
「ですわねえ。わたくしもハロウドの言う通り、今は我慢のときだと思いますわ。『桃源郷』に泊って節約しつつ、反攻の機会を窺いましょう……」
グレイシアによってハロウドの諫言が強調される格好となり、彼らはしばらく無言で歩いていたが、まもなく一様にはっとした顔で立ち止まることになる。
彼らの視線の先には、複数の者たちによって前後から挟まれる二人組――フォードと連れの少女――の姿があった。
「あ、あそこにいるの、フォードと連れのガキじゃねえか! あれってよ……もしかして、俺たちの仲間だと思われてやられかけてるってことじゃねえか……!?」
「シッ……! アッシュさん、ここは火中の栗をわざわざ拾おうとはせず、ただ見守るのが最善かと……」
「うんうんっ、パルルもそれがいいと思うのぉー」
「わたくしたちの身代わりになってくださるんですもの……。ありがたいお話ですわ。栗は拾いませんが、骨は……当然ばっちいので拾いませんですことよ……」
「「「ププッ……!」」」
グレイシアの毒舌に対し、声を押し殺すようにして愉快そうに笑うアッシュたち。
「さあさあっ、今度こそ公開処刑ショー頼むぜえぇっ……!」
「フッ……哀れな……」
「ボッコボコにしちゃってー……!」
「今すぐ逝きなさい、フォード、あなたの本来いるべきあの世にっ――!」
「「「「「――なんでも解決屋、万歳っ!」」」」」
「「「「へっ……?」」」」
アッシュたちの表情から、喜びの色が見る見る剥がれ落ちていく。フォードと傍らの少女を取り囲んだ者たちから、次々と称賛の声が上がり始めたからだ。しかもそれは一向に止む気配がなかった。
「……な、なんか、一気にどっと疲れちまったぜ……」
「フッ……僕もです……」
「はー、最悪ぅー……」
「バカヤローですわ……」
続々と野次馬たちが集まってくる中、肩を落として歩き始めたアッシュたちのほうに目をやる者は、誰一人として見当たらないのであった……。
あなたにおすすめの小説
外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
聖女だったけど魔王にジョブチェンジしました。魔獣たちとほっこり生活を満喫します。
棚から現ナマ
ファンタジー
聖女リーリアは婚約者である王太子リカルドにより、偽の聖女だと断罪される。
えん罪を着せられたリーリアは、あろうことか獣や魔獣が出没する”魔の森”へと捨てられるのだった。
攻撃や身を護る手段を持たないリーリアは…… なんだかんだあって、魔王になり、魔獣や魔物たちとワチャワチャ楽しく暮らしていくのでした。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな
・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー!
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。
だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。
なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!
《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。
そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!
ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!
一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!
彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。
アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。
アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。
カクヨムにも掲載
なろう
日間2位
月間6位
なろうブクマ6500
カクヨム3000
★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…