底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第二章

清掃師、侮辱される

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「ガ……ガーラント……」

 リーダーのロディの声は震えていた。

「おー、やっぱりロディだった。久しぶりじゃん」

 俺たちのいるテーブルに近付いてきたのは、まず大きな盾を背負った長髪の男で、次にローブを着た長身の眠そうな男、それに一見大人しそうな容姿だが目つきの鋭い軽装備の女が続いてやってきた。いずれも値踏みするかのようにジロジロと見てくるので嫌な感じだ。

「んん? リーダーの知り合いかぁ?」
「この人たち、誰なのです? ガーラントさん」
「あぁ、まあ一人だけだけど。紹介するよ、俺の地元でパシリをやってくれてたロディだ」
「「ププッ……」」
「……」

 なるほど、ロディはこのガーラントという男にいじめられてたってわけか。本当に嫌な知り合いに絡まれてしまったもんだな。同僚から嫌がらせを受けたとか言ってたけど、多分こいつのことなんだろう。

「くっ……確かに昔の私はそうだったが……今は違うっ!」
「お、弱虫ロディちゃん、大分言えるようになったじゃん? 前みたいに高い高いされたいのかな?」
「うぐっ……」

 高い高い? ロディを持ち上げて高いところから突き落とそうとしたってことだろうか? 彼は小柄だからできそうではあるが……。

「何よ、いきなり来て、うちのリーダーに対してパシリがどうのって、いくらなんでも失礼すぎるわよ……! あなたのその格好って、多分【聖騎士】なんでしょうけど、恥ずかしくないの!?」

 サーシャがロディを庇うように立ち、ガーラントという男を睨みつけてる。

「おぉ、怖いなー。お仲間さんかな? ごめんね、お嬢ちゃん。でも、ちょっと昔の知り合いをからかっただけだし……うっ……!?」

 お、薄笑いを浮かべたガーラントの顔をサーシャがビンタして静まり返った。いい気味だ。

「痛い? 痛いよね……? 言葉だって痛いんだよ。人を傷つけることができるの……」
「こ、こいつぅ、リーダーに対してよくもぉ……」
「覚悟、できてますか!?」
「まぁまぁ、ダグラス、メリル、よさないか。中々鋭い一撃だったよ。君の名は?」
「あなたに言う必要なんてない」
「ふふっ……意地張っちゃって可愛いね。こんな負け犬のパーティーより、俺のパーティー《ホーリーグレイル》に入ってくれれば歓迎するのに」
「だ、誰があんたなんかっ!」
「まぁまぁ、聞いてよ。ここにいるダグラスは【回復師】なんだけど、ロディより回復量もずっと多いはずだし、何より補助系のスキルもそこそここなせるんだよね」
「だからなんなの……?」
「いちいち怒らないのっ。それに、君の格好から察するにジョブは【剣士】でうちのメリルと同じなんだろうけど、この子の腕は天才的だしきっと切磋琢磨できるよ。そんな無能の元にいるより……おっと……」
「くぅ……」

 サーシャがまたビンタしようとしたが、予想してたのかガーラントが寸前のところで受け止めて白い歯を覗かせた。

「はっ、離して!」
「んー、どうしよっかなー」
「……」

 俺はこれ以上我慢できそうになかった。目立つのは嫌だが仕方ない。

「もうその辺にしたらどうだ」
「ん、なんだ、君は? 俺はこの子と話をしてるんだけど?」

 こういうやつに口で言うだけじゃ埒が明かないのはわかってるので、俺は手を伸ばして【一掃】でやつの手をバレないように自然に払いのけてやった。

「……えっ?」

 ガーラントが驚いた様子で自身の手を見つめている。そりゃそうか。【剣士】のサーシャが繰り出す鋭いビンタを押さえ込めるくらいだし、絶対的な自信があっただろうしな。

「あっ、あいつぅ、見たことあるぞぉ……」
「ん、どうした、ダグラス?」
「どうしました?」

 なんだ? ダグラスっていう長身の不気味な男が、ガーラントともう一人のメリルとかいう女に耳打ちしたかと思うと、一様に嫌らしい笑みを浮かべた。

「これはどうも。だそうで。確かあだ名はゴミ拾いのアルファ、だったかな?」
「「ププ……」」
「……」

 なるほど、俺のことを知ってるやつがいたか。

「あ、傷ついちゃった? それなら申し訳ないね。んー、でもそう呼ばれてるっていう事実を言っただけで、決して侮辱するつもりはなくてね……」
「「クププッ……!」」
「あ、あなたたち、いい加減に――」
「――このバカどもおぉぉっ!」

 意外なことに、サーシャを制して前に出てきたのはロディだった。

「わ、私の……私の仲間を侮辱するくらいなら、この私を侮辱しろおおぉっ!」
「ヒュー……かっこいいな、ロディちゃん」
「泣けるなぁ」
「無理しちゃってます?」

 ガーラントたちにコケにされても、ロディは怯む様子を見せなかった。

「いいかっ! よく聞くのだっ! 何度も言うが、私はかつての私ではない! れっきとした名前ありのパーティー……その名も《リファインズ》のリーダーなのだあっ!」
「……はぁ? その証拠はあるのか?」
「あるのかあ?」
「あるのですー?」
「これだっ!」

 ロディが勢いよくイメージングボードを取り出して、『アバランシェ・ブレード』が小さく聳え立つのを見せつけると、やつらはしばらく呆然としたような顔をしたのち、噴き出すように笑い始めた。

「なっ……何がおかしいというんだ!?」
「ククッ……でイキるなってことだよ、ロディちゃん」
「えっ……」

 ガーラントがドヤ顔でイメージングボードを取り出すと、そこには『アバランシェ・ブレード』のほかに、もう一つの迷宮山が聳え立っていた。これは……。
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