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第一章 リトア王国
伯父様にたどり着けません
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お祖母様の射すくめるような視線に私の身体はガチガチに固まってしまった。
「世界はあなたを中心に回っているわけではないの。
スリジェ家に勤めるものは国の境を守る者。それが騎士であろうとメイドであろうと関係ない。
皆それぞれの武器を持ち日々鍛えあげ、辺境伯家にあだなす者が現れたならば全力で戦う。それがこのスリジェ家のやり方です。」
そしてお祖母様はパッと扇子を引き戻し自分の手にパシッパシッと当てながら捕らえられた人達を見回す。
「それに、捕らえられたこの者たちは他でも同様の騒ぎを起こした事があるものばかり。
今回はたまたまあなたが狙いだっただけです。だから…」
お祖母様の手が頭に置かれ、恐る恐るといった様子で撫でられた。
「今は恐れず守られていなさい。しかしいずれは貴女もスリジェ家の者らしく、自分らしい戦い方を見いだしてこの家を、国を背負い守っていくのですよ。」
「お祖母様…はい。分かりました。」
胸が熱くなって何度もうなずきながら答えた。頭を下げたままの使用人の人たちからも更に気合いが増した気配がしている。
しかし、感動的なこの場面に水を差すような声がはいる。
「あの~それは困るな~」
エシャルロット公爵様がポリポリと頬をかきながら声をあげたのだ。
「どういうことでしょう?エシャルロット公爵様。」
お祖母様の鋭い視線を向けられ公爵様は苦笑いしながら後ずさる。
「いや~あのですね。そんなに見つめられると照れちゃうな~なんて。」
公爵様の隣にいたアンディーブ様がジトっとした目を向けている。
「困るというのは…まぁ、カイルに会ってからゆっくりご説明しますから。」
行きましょ、行きましょっと公爵様はクルリと向きを変え歩き始めた。
お祖母様は眉間に深いしわを刻んだままそれに続き、私も歩き始める。
玄関ホールをぬけ屋敷の外へ踏み出すと更に惨状が見えてきた。
踏み荒らされた庭園、消火されているが焦げついた木々がかわいそうだ。
屋敷の窓ガラスも何枚も破られているし小道にはうずくまった人が何人も転がっていて今まさに回収されていくところだ。
辺りに気を取られ僅かに前を歩くお祖母様との距離が広がったその時、荒れた茂みから音もなく何かが飛び出してきて私の目の前に立ちはだかった。
グレーのマントを羽織ったその人が私に手を伸ばし逃げようと思うのに体が固まってしまう…が、その手は私に届かなかった。
その人の体に巻きついた今となっては少し見慣れてきた細い紐。いや、硬そうな質感からもはやワイヤーと呼んでいいだろう。
そしてその人の手首と首元に長い針のようなものが突き刺さっている。
ひぃっと後ずさる私と入れ違いにダミアンさんが進み出て針をスッスッと抜いて振り返りニコニコと笑顔を向けてくる。
「大丈夫です。急所は外してありますから少しの間意識を失うだけです。
この針も、大旦那様の治療に使うものと同じ刺してもあまり痛みは感じない針ですから。」
針治療みたいなものってこと?いや、それにしても…
「今回はあなたの方が早かったわね。」
「恐れ入ります。」
ダミアンさんは苛立たしげに近づいてきたお祖母様にもニコニコしている。
シュルルッと紐が収納されるとその人は崩れ落ちるように地面に倒れ駆けつけた騎士に引きずられていった。
「世界はあなたを中心に回っているわけではないの。
スリジェ家に勤めるものは国の境を守る者。それが騎士であろうとメイドであろうと関係ない。
皆それぞれの武器を持ち日々鍛えあげ、辺境伯家にあだなす者が現れたならば全力で戦う。それがこのスリジェ家のやり方です。」
そしてお祖母様はパッと扇子を引き戻し自分の手にパシッパシッと当てながら捕らえられた人達を見回す。
「それに、捕らえられたこの者たちは他でも同様の騒ぎを起こした事があるものばかり。
今回はたまたまあなたが狙いだっただけです。だから…」
お祖母様の手が頭に置かれ、恐る恐るといった様子で撫でられた。
「今は恐れず守られていなさい。しかしいずれは貴女もスリジェ家の者らしく、自分らしい戦い方を見いだしてこの家を、国を背負い守っていくのですよ。」
「お祖母様…はい。分かりました。」
胸が熱くなって何度もうなずきながら答えた。頭を下げたままの使用人の人たちからも更に気合いが増した気配がしている。
しかし、感動的なこの場面に水を差すような声がはいる。
「あの~それは困るな~」
エシャルロット公爵様がポリポリと頬をかきながら声をあげたのだ。
「どういうことでしょう?エシャルロット公爵様。」
お祖母様の鋭い視線を向けられ公爵様は苦笑いしながら後ずさる。
「いや~あのですね。そんなに見つめられると照れちゃうな~なんて。」
公爵様の隣にいたアンディーブ様がジトっとした目を向けている。
「困るというのは…まぁ、カイルに会ってからゆっくりご説明しますから。」
行きましょ、行きましょっと公爵様はクルリと向きを変え歩き始めた。
お祖母様は眉間に深いしわを刻んだままそれに続き、私も歩き始める。
玄関ホールをぬけ屋敷の外へ踏み出すと更に惨状が見えてきた。
踏み荒らされた庭園、消火されているが焦げついた木々がかわいそうだ。
屋敷の窓ガラスも何枚も破られているし小道にはうずくまった人が何人も転がっていて今まさに回収されていくところだ。
辺りに気を取られ僅かに前を歩くお祖母様との距離が広がったその時、荒れた茂みから音もなく何かが飛び出してきて私の目の前に立ちはだかった。
グレーのマントを羽織ったその人が私に手を伸ばし逃げようと思うのに体が固まってしまう…が、その手は私に届かなかった。
その人の体に巻きついた今となっては少し見慣れてきた細い紐。いや、硬そうな質感からもはやワイヤーと呼んでいいだろう。
そしてその人の手首と首元に長い針のようなものが突き刺さっている。
ひぃっと後ずさる私と入れ違いにダミアンさんが進み出て針をスッスッと抜いて振り返りニコニコと笑顔を向けてくる。
「大丈夫です。急所は外してありますから少しの間意識を失うだけです。
この針も、大旦那様の治療に使うものと同じ刺してもあまり痛みは感じない針ですから。」
針治療みたいなものってこと?いや、それにしても…
「今回はあなたの方が早かったわね。」
「恐れ入ります。」
ダミアンさんは苛立たしげに近づいてきたお祖母様にもニコニコしている。
シュルルッと紐が収納されるとその人は崩れ落ちるように地面に倒れ駆けつけた騎士に引きずられていった。
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