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第一章 リトア王国

伯父様にたどり着けません 2

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「まだ残党がいるようだ。」

苦々しく言い放つお父様にアロイス様がゆっくりと頭を振る。

「いえ。あれ以外の残党は今、捕らえ終わりました。」

アロイス様の指差す先に木の幹に蔓で縛りつけられた人が何人か見えた。

「そうか…ありがたい。礼を言う。」

全然有難がってなさそうなお父様は口をへの字にしたまま私の手を取り歩き始めた。

お父様と手を繋いで歩くの、引き取られたあの日以来だ!
ゴツゴツしているが温かいその手に自然と顔がほころんでしまう。
紳士的なお父様は短い足でポテポテ歩く私の歩調に合わせながら二台止まった馬車まで歩き抱き上げて馬車に乗せてくれた。

「いいな~僕もかわいい娘が欲しいな~
うちは可愛くない男の子ばかりでつまらな…そうか一人は女の子に…」

「父上、その流れは二度目です。いいかげんからかうのは辞めていただきたい。」

アロイス様にもう一台の馬車に押し込められた公爵様はとても楽しそうでウンザリした様子のアロイス様がわたしの隣に、アンディーブ様がお父様の隣に滑り込んできた。
二人とも少しの時間でも公爵様から離れられるのが嬉しいという顔をしている。

必然的に不服そうなお祖母様とニコニコしたダミアンさんが公爵様と同じ馬車に乗り、馬に乗った騎士の方たちに先導されながら辺境伯騎士団の施設へ向かった。

馬車に揺られながらお父様が教えてくれた話によると伯父様は辺境伯騎士団が捕らえた者を収容しておく要塞の地下にある牢獄に捕らえられているらしく。先ほど捕まえたグレーのマント集団と雇われたらしいゴロツキっぽい人たちも皆そこへ入れられるんだそうだ。

「彼らはこの後どうなるんですか?」

「首謀者たちは極刑は免れないだろうな。下っ端は命は助かるだろう。」
 
お父様は幼い私にも包み隠さず話してくれる。

「ランギャー伯爵夫人とご子息の処遇はどうなりますか?」

アロイス様が真剣な眼差しでお父様を見つめる。

「何とも言えぬな。彼らの告発があればこそ、今回の対応がとれた。
だが、ランギャー家当主の失態だ。咎は逃れられないだろう。」

ガタンッと馬車が止まり、お父様は立ち上がった。

「カイルの弁明によっても変わってくる可能性はあるがな。
とにかく続きは本人に会ってからだ。」

もう一台の馬車からも公爵様がヨロヨロと降りてきた。

「父上、セリーナ様に失礼なことを申し上げたりしなかったでしょうね?」

アンディーブ様が駆け寄り小声で尋ねている。

「言えるわけないじゃない。話しかけるなと無言の圧をかけられ続けてここまで来たんだから~」

後ろにひっそりと立つダミアンさんは困ったような笑顔を浮かべている。
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