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第一章 リトア王国

伯父様に会いに行きます

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「カイル・ランギャーはどうしました?」

お祖母様が心配そうにお父様に尋ねる。

「騎士団の施設に拘束しています。両国の陛下にも伝達済みですので、明日にも連絡が来るでしょう。」

「ランギャー家は終わりですね。」

ポツンとつぶやいたお祖母様の顔が一瞬悲しそうに見えて気になった。
口を開こうとした時にお父様に話しかけられてしまった。

「マリーベル。そなたの伯父にあたる人物だ。会ってみたいか?」

「な、危険です辺境伯様。」

焦ったようにアンディーブ様が言い、アロイス様を振り返るが、アロイス様はジッと私を見ている。公爵様も、お父様、お祖母様、ダミアンさんも皆静かに私の答えを待っている。

「私…私は…」

母のお兄さん。母をよく知る人物のはずだ。

「お会いして、みたいです。」

ご迷惑にならなければ、と付け加えたら公爵様に全然とにっこりされた。
お父様は何故お前が答えるんだと嫌そうになさっていたけれど、二人のやりとりを見ていて私の気持ちのモヤモヤは少し晴れた。

さっそく今からと私たちは動き始め、私はようやく防御魔法の外へ出ることができた。

騎士団の方々が侵入者の二人を連れて一番前を歩く。
部屋から出ると屋敷の中も荒らされた状態になっていて、何人かの騎士団の方や使用人の人達が他にもいた侵入者を捕まえて屋敷の外へ連れ出しているところだった。

こんなに大勢侵入者がいるにもかかわらず見た限りこちらの負傷者はいないようで安心すると同時にビックリした。

使用人の人達はこちらに気づくとすぐさま頭を下げてくれるが、皆手に手に物騒な物を持っていたり、真っ白いエプロンに返り血がついたりしているのが気になる。
私以外の人は皆普通に通り過ぎて行くので問いかけるのもおかしいかと思い黙って歩いていたのだが、少し前を歩いていたお祖母様が振り返り私の肩に手を置いた。

「恐ろしく思いますか?マリー。」

真剣に見つめられ、すぐには答えられなかった。
一緒に歩いていた皆んなも足を止め、周りにいる使用人達も息を詰めたように静かにしている。

「恐ろしい…です。」

答えた瞬間、お祖母様が悲しそうな目になって私はうつむいてしまった。

「私がいるせいでこんなにもたくさんの人が傷ついたかもしれないなんて…捕らえられた人達もこんなことがなければ捕まったり傷付かずにすんだのに…」

私の体にいったいどんな魔力があるというんだろう?自分で意識して使ったこともないそれを目当てにこんなにも争いを巻き起こすなんて。私にはそれがいいものであるとは到底思えない。

「自惚れないのよ、マリー」

お祖母様の突き刺さるような声が聞こえた。
先ほど戦いで使われていた扇子がアゴにあてがわれてグイッと上をむかされる。

真剣な目をしたお祖母様の顔と真っ直ぐに向き合う形になった。
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