66 / 246
第一章 リトア王国
キノコ布教が始まってます
しおりを挟む
お父様が手で押し留めてくれなければ私はふらふら前へ出てしまったかもしれない。
陛下が再び合図を出すと書類を抱えた男性が入室してきて陛下に紙の束を差し出した。
「書類には目を通した。署名もしてある。」
手元に運ばれてきた書類をお父様はジッと眺める。
「陛下、承認印が抜けているようです。」
「おや、そうだったかな?最近忘れっぽくなってな。年はとりたくないものだ。」
「ご冗談を、陛下の聡明さは歳を重ねるごとに高まるばかりです。」
「そうだろうか?」
今まで少し虚な眠そうだった陛下の目がキラッと輝いた。
「もちろんです。」
陛下は運ばれてきた印をしっかりと書類に押してくれた。
「そなたが辺境の地に行ってから王宮内も少し変わった。わたしはそれを良しとして進んできたが最近立ち止まり振り返る時間が必要なのではと思うのだ。」
「どこに身を置いていても私が陛下の忠臣であることに変わりはありません。」
「そうだな、こうして呼べば風のように駆けつけてくるのだからな。」
フムっと私たちを見回す陛下は入室してきた時よりしゃんとしているようだ。
「カイル・ランギャーに関する処分の軽減だが、本当に良いのか?当事者の中には釈放せねばならぬ者たちもいる。
侮られるぞ?」
「再び私たちに刃を向けると?」
「ないとは言えん。」
陛下と二リーナ様が顔色を変えたので不思議に思ってお父様に目を向けると、ニヤリと笑ったお父様は鋭い目は獲物を捕らえた肉食獣、小さく開かれた口元から見える歯は今にも食いつきそうな恐ろしい風貌をしていた。
特に二リーナ様を見つめながらお父様は再び口を開いた。
「来るならこいと言ってやります。
我が領の者たちの恐ろしさを嫌というほど教え込んでやりますゆえ。」
「そ、そうか…頼もしいかぎりだな。
そうだ、オーレル・イスト辺境伯も王宮に来ているぞ。弟の不始末を詫びにきたのだろう。甥や姪にも会いたいだろう。
今、マーガレット・ランギャーと話しておる。」
「カイル・ランギャーはどうなりますか?」
「ランギャーの名は剥奪する。領地は王国預かりとし、財産はそなたたちへの賠償金、王国への賠償金を差し引きオーレルとまぁ、功績を称えてマーガレット、ディルにも分けることとする。」
話を聞いて少しホッとした。
ディルは我が家に来るとしてマーガレット様が路頭に迷うのは困る。
お父様が陛下にお礼を申し上げ私たちは退出となった。二リーナ様がお父様の隣に来て何か話しかけているが、私はアロイスがサッと陛下の側により頭を下げたので心配になりそちらに残った。
アロイスは陛下に贈り物だとどこからか取り出した植木鉢を渡した。
植木鉢からはもはや見慣れた赤に白水玉のキノコがニョキッと生えている。
陛下は面食らって固まっていたが、しばらくして笑い始めた。
「わっははは。そなたにも可愛らしい部分が残っているのだな?なんとも愛らしい贈り物だ。」
陛下はそっと傘を撫でてからはめている指輪を眺める。
「毒はないようだ。ありがたくもらっておこう。」
「毒など、とんでもありません。むしろ毒を吸い取ってくれるものですので是非お側に置いてください。」
ペコッとお辞儀をするとアロイスは私の腕をとり意気揚々と歩き始めた。
のんちゃんはキノコ布教でも始めたいのかな?
私は呆れたジト目をアロイスに向けるのだった。
陛下が再び合図を出すと書類を抱えた男性が入室してきて陛下に紙の束を差し出した。
「書類には目を通した。署名もしてある。」
手元に運ばれてきた書類をお父様はジッと眺める。
「陛下、承認印が抜けているようです。」
「おや、そうだったかな?最近忘れっぽくなってな。年はとりたくないものだ。」
「ご冗談を、陛下の聡明さは歳を重ねるごとに高まるばかりです。」
「そうだろうか?」
今まで少し虚な眠そうだった陛下の目がキラッと輝いた。
「もちろんです。」
陛下は運ばれてきた印をしっかりと書類に押してくれた。
「そなたが辺境の地に行ってから王宮内も少し変わった。わたしはそれを良しとして進んできたが最近立ち止まり振り返る時間が必要なのではと思うのだ。」
「どこに身を置いていても私が陛下の忠臣であることに変わりはありません。」
「そうだな、こうして呼べば風のように駆けつけてくるのだからな。」
フムっと私たちを見回す陛下は入室してきた時よりしゃんとしているようだ。
「カイル・ランギャーに関する処分の軽減だが、本当に良いのか?当事者の中には釈放せねばならぬ者たちもいる。
侮られるぞ?」
「再び私たちに刃を向けると?」
「ないとは言えん。」
陛下と二リーナ様が顔色を変えたので不思議に思ってお父様に目を向けると、ニヤリと笑ったお父様は鋭い目は獲物を捕らえた肉食獣、小さく開かれた口元から見える歯は今にも食いつきそうな恐ろしい風貌をしていた。
特に二リーナ様を見つめながらお父様は再び口を開いた。
「来るならこいと言ってやります。
我が領の者たちの恐ろしさを嫌というほど教え込んでやりますゆえ。」
「そ、そうか…頼もしいかぎりだな。
そうだ、オーレル・イスト辺境伯も王宮に来ているぞ。弟の不始末を詫びにきたのだろう。甥や姪にも会いたいだろう。
今、マーガレット・ランギャーと話しておる。」
「カイル・ランギャーはどうなりますか?」
「ランギャーの名は剥奪する。領地は王国預かりとし、財産はそなたたちへの賠償金、王国への賠償金を差し引きオーレルとまぁ、功績を称えてマーガレット、ディルにも分けることとする。」
話を聞いて少しホッとした。
ディルは我が家に来るとしてマーガレット様が路頭に迷うのは困る。
お父様が陛下にお礼を申し上げ私たちは退出となった。二リーナ様がお父様の隣に来て何か話しかけているが、私はアロイスがサッと陛下の側により頭を下げたので心配になりそちらに残った。
アロイスは陛下に贈り物だとどこからか取り出した植木鉢を渡した。
植木鉢からはもはや見慣れた赤に白水玉のキノコがニョキッと生えている。
陛下は面食らって固まっていたが、しばらくして笑い始めた。
「わっははは。そなたにも可愛らしい部分が残っているのだな?なんとも愛らしい贈り物だ。」
陛下はそっと傘を撫でてからはめている指輪を眺める。
「毒はないようだ。ありがたくもらっておこう。」
「毒など、とんでもありません。むしろ毒を吸い取ってくれるものですので是非お側に置いてください。」
ペコッとお辞儀をするとアロイスは私の腕をとり意気揚々と歩き始めた。
のんちゃんはキノコ布教でも始めたいのかな?
私は呆れたジト目をアロイスに向けるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
106
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる