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第一章 リトア王国

お母様出奔の真相とは

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互いに自己紹介をすませ、改めて顔を合わせる。
ディルはマーガレット様の隣で嬉しそうにしていてなんだか可愛い。
オーレルさんはディルに目を向け、弟の幼い頃に似ている…と呟いた。

「カイルがあんな馬鹿げたことを企んだのは我がランギャー家、そして私が彼を追い詰めてしまったからです。本当に申し訳ありません。」

「カイル・ランギャーの処分は聞いているか?」

「はい。今は精神の治療を施しているようですが、退院後は引き取るつもりです。」

ディルはその言葉を聞いてホッとしたようだ。

「マーガレット殿にも我が領地へ来ていただこうかと思っていたのですが、どうしても首を縦に振ってはいただけず。」

私たちの視線が集まるとマーガレット様は静かにうなずき両手を膝の上に重ねた。

「私は教会へ参ります。」

ええ?教会?

「実家には戻らないのか?」

「父も母も今回の一件に心を痛めておいでです。私の決断にも賛成してくださいました。
それに、私は夫と離縁するつもりはないので教会で働きながら主人が元気になったあかつきには平民として共に生きて行ければと思っています。」

「教会ってもしかして…」

「はい。マリーベル様がいらしたあの教会です。」

ディルはすでに知っていたのか特に動じずに固まっている。

「では、教会の皆んなに会いにいけばマーガレット様ともお会いできますね。
ディルと一緒に行きます。」

色々聞きたいことはもちろんあったが私はあえてそう言った。

お父様たちも黙っている。

「ありがとうございます。是非、そうしてください。」

マーガレット殿が微笑んでうなずいた。笑顔を初めて見たけどやっぱり綺麗な人だ。

「やはりマリーベル様はお母様に似ていらっしゃいますね。」

綺麗な笑顔のままニコニコとそう言われる。

「確かに、顔立ちや色は隊長だが、物腰や雰囲気は妹によく似ている。」

オーレルさんもうなずいている。二人から母の話を聞きたかったが、お父様の反応が気になって詳しく聞き出しづらい。
そう思っていたけれどお父様は特に気にする様子もなく二人の言葉に相槌をうっている。

ジッと見る私を不思議そうに見返してくるので私は意を決して口を開いた。

「お父様はお母様のことを怒っていらっしゃいますか?」

「何故だ?」

「何故って…お母様が勝手に出て行ってしまったから?」

「いや。怒られこそすれ、怒るなどとんでもない。
あの頃、フロン公国との戦にかかりきりになってずっと側にいられなかった。
それにベルが出て行ったのは少しでも長くマリーベルと共にありたかったからだ。」

?どういうこと??

首をかしげる私にマーガレット様が話してくれる。

「お母様、ベルは生まれつき身体が弱かったの。子供を産むことはおろか結婚も難しいと思われていた。私はランギャー家に嫁入りした時にベルともずっと一緒に暮らすんだと思っていたくらい。」

「スリジェ家はベルを迎えるにあたり、彼女が早く邸に馴染めるよう武術に秀でている使用人たちもみな見せないようにしていた。ただでさえ辺境の地に移り住むのだから我が家が他家とあまりに違うことが知れてストレスになってはいけないと思ってな。
まぁ、見せておけばよかったと今なら思う。

ベルが皆を危険な目に合わせてしまうなどと思い急ぎ出て行くようなことにはならなかっただろうから。

教会に逃げ込まずとも保養のための家を作ってそこで過ごせただろうに。
だが、ベルは教会での暮らしを気に入っていたからな。だからこそ、あれほど長く命を繋げたのだろう。」

うん?今聞き捨てならない言葉を聞いたような…

「お父様はお母様の居場所を知っていらしたのですか?」

「もちろん。隊長を退いて戦地から戻りすぐに会いに行った。」

聞いてないんですけど?
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