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第一章 リトア王国

二人の妃様に愛でられてます

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「あぁ、かわいいわ~マリーちゃん。」

「やはり女の子はいいな。見ているだけで癒される。」

お茶会が始まって早々に席替えが告げられ何故か私は王妃さまと妃様に挟まれて熱い視線を浴びている。

「そ、そんな。お二人とも麗しい王子殿下がいらっしゃるでは…」

「ダメダメ、あの子はわがままで生意気でちっとも可愛くないんだもの。」

「エディは可愛らしさや子供らしさを私の腹の中に置き忘れてきたらしい。今からキルに似た堅物すぎて心配している。」

「そ、そんなことは…」

「いや~このツルスベもちもち肌。気持ちいい~フニフニ柔らかい手ね~」

「頬もすべすべで上質な絹も負けるな。さぁ、その可愛らしい口でこれを食べてごらん気にいるといいのだが。」

お二人とも私の話なんて聞いちゃいないですね。
エライザ様が手ずからチョコレートを食べさせてくれて恐れ多いやら戸惑うやら。
でも口に入ってきたチョコレートはすべすべの表面が少しずつトロリと口の中で溶け始め中からミルクの柔らかい甘さが流れ出てくる。

「とっても美味しいです。ありがとうございます。」

思わず笑顔がこぼれるとアリアドネ様はハッと口元を手で覆い、エライザ様は眩しすぎる慈愛の笑みを浮かべて頭を優しく撫でてくださった。

「かわいい~~」
「愛らしいな」

両側からお二人に抱きつかれ硬直した私はお父様に助けを求める目を向けたけれど、お父様はキルライト陛下と向かい合って何か話していらっしゃるし、公爵様は横で二人に相槌をうっていらっしゃる。
のんちゃん助けて~と思って目を向けるとディルと二人、美味しそうにお菓子を頬張っている。
ちょっと、二人ともずるい!
私の視線に気づいて二人はちょっと気まずそうに肩をすくめる。

アロイスは誤魔化すように紅茶を一口飲んでからこちらに話しかけてきた。

「エライザ様、アリアドネ様。」

「あら、お母様でいいのよ?アロイス。いえ、リノアちゃんと名乗ることにしたんだっけ?」

「私も腹違いとはいえリーク王子の母親でもある。非公式の場ではエライザ母様と呼んでもらおうかな。」

アロイスは天使のような笑みを浮かべてうなずいた。

「大変恐れ多いですが、お二人が望まれるのでしたらそう呼ばせていただきます。」

お二人は満足そうにうなずいた。

「この度、私とマリーベル・スリジェ嬢は婚約することとなり、リトア王国の陛下には許可をいただきました。」

「あぁ、昨日知らせが届いたよ。キルライトも否とは言わぬだろう。私たちとしても…」

とエライザ様はアリアドネ様の顔を見る。
アリアドネ様も心得ているように深くうなずいた。

「後継の揉め事を起こそうという輩を黙らせた後にはエディにもリークにもある程度の自由を持って相手を選んでほしいと思っている。
そなたには苦労をかけるのだ。望む相手との結婚ぐらい認めねばな。」

「それにこんなに可愛らしいんだもの。
婚約を急ぐ気持ちは分かるわ~
でもね、婚約したからって安心しちゃダメよ。」

嬉しそうに意味ありげに微笑むアリアドネ様がなんだかちょっと怖かった。
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