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第一章 リトア王国

賢者二リーナ様

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陛下に苦い顔を向けられても二リーナ様は我関せずとお茶を楽しんでいる。

「そうは言っても二リーナ。放っておくわけにもいくまい。」

「なんでさ?」

「放っておけば被害は広がるばかりだ。」

「そんなの私の知ったこっちゃないね。」

陛下は額に手をやりため息をつかれた。
二人のやりとりを楽しんでいたエライザ様とアリアドネ様が顔を見合わせている。

「そりゃ、二リーナ。今はいいかもしれないけど相手が図に乗ってきたら大変なことになるかもしれないわよ?」

「二リーナの名を語って大金を巻き上げるかもな。」

「二リーナの名前で浮名を流しちゃったり。」

「金を借りたり」「詐欺まがいの事件を起こしちゃったり」
「リド教にあることないこと吹き込んだり」

「大変ね~自分の名前をかたられるって。」

「本当にな。気の毒だが、表に姿をを見せないものの宿命かな。」

二リーナ様は再びカップを机の上に戻して嫌そうに立ち上がられた。

「やれやれ、紅茶が不味くなるよ。分かった分かった。私が出ればいいんだろ?
全くしちめんどくさい。
こんなことならいくら頼まれたってリド教の長なんて引き受けるんじゃなかったよ。
だいたいリド教の上の方の奴らならアタシの顔を知ってるやつも何人かいるはずだってのに、何やってんだか。」

「二リーナ、まさか今から行く気か?」

「ああ、何か文句あんのかい?アタシは気が変わりやすいんだ。明日になったらやっぱ面倒くさいってなるかもしれないだろ?」

「まぁ待て。まだ相手のことも何も知らないだろう?まずアランから話を聞いてだな…
別室に移るかここは防音と防御魔法が強くかけられていて魔法を使いづらい。別室で姿を映し出した方が早いだろう」

二リーナ様は渋々といった様子でうなずいた。
皆が立ち上がるので私も立とうとしたらアリアドネ様にやんわりと止められた。

「私とマリーちゃんはお茶をいただきながらここで仲良く待ってるわ。」

「なんだ、ずるいなアリア。」

「適材適所でしょう?」

「まぁ良いだろう。そう長くはかからぬ。
くつろいでいてくれ。マリーベル嬢。」

私は慌てて立ち上がり頭を下げた。
お父様とアロイスはちょっと心配そうにしつつ陛下について行ってしまった。

「うふふ、緊張しなくていいのよマリーちゃん。ほら、このお菓子も美味しいのよ~」

しばらくは勧められたお菓子を食べたり紅茶を飲んだりしていたのだけれどせっかく巡ってきたチャンス。
私は勇気を出してアリアドネ様に聞いてみた。

「あの…アリアドネ様」

「うん?なあに?」

「アリアドネ様はもしかして…その、この世界とは違う世界の記憶を持っていたりとか…」

言いながら恐る恐るアリアドネ様を見上げると目を見開いて固まっていらっしゃる?

え?やっちゃった?変な子だと思われた?

焦ったけどもう遅いよね?

ドキドキしながら待っているとギギギっと音がしそうなぎこちなさでアリアドネ様が私に視線をむけた。
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